復讐の慰術師

12章 放浪

１８４話 厨二病？ 変態？

「あれ？　もうすぐお昼だ」
レンゼは半ば放心状態で話すら耳に入ってなかった
「良かったら家でご飯食べていく？」
目の前で手を振られて漸く焦点が女性の顔に向いた
「あ～……え～と……はい？」
話を聞いていなかったレンゼは何故、女性がレンゼを起こしたのかもハッキリしないままワークスとレンゼを担いで村の中に入って行った


「ただいま～！」
「もう仕事終わったのかい？」
「終わったんだけどそれよりも母さん！　こいつがまた訳の分からない事に言ってこの子に変な事しようとしてたんだよ！？」
女性が自分の母にワークスの所業を訴えるとワークスはフッと鼻で笑った
「フッ……我を貴様ら人間と一緒にするな。我は地獄を統べる業火の法皇ワークス！　余り嘗めていると痛い目を見る事になるぞ……？」
「ほらまた言ってる！」
「ほらほら、ワークスも席に着きなさい。喧嘩してると……本当に痛い目見るわよ？」
女性の母の殺気を感じ取ると黙り込んでテーブルの周りに並べられた椅子に座った
（流石ＰＴＡ……アリサ並に家庭を掌握してるな……）
椅子に座らされているレンゼは自己紹介を受けていた
「私の名前はミラ！　宜しくね」
「リ、リゼです……あっ」
その時、漸く思い出した。ミラと言う名は物凄く前に聞いていたのだ。セントラルで……
「クックック……遂に我と永劫たる制約を結ぶ気になったか」
「ハァ……こいつね、いっつもこうやって女の子に話し掛けてるのよ。何言ってるか分かんないわよね？　終いにはエロい事言うし」
ミラがワークスについて再三注意をした
「ククク……何を言っている。我が白き焔の原液に侵されその身を我に捧げよ」
「そもそも炎は液体じゃ無いからどれだけ温度上げても液体にはならないよ？　逆に下げても炎は小さくなるだけだから」
「フッ……これだから人間は……我が直々に相手をしてやろうと言うのだ謝礼せよ」
首を傾げて不敵に笑うワークスを横目に顎に手を置いて考え始めた
（一体なんなんだ？　白き焔の原液、侵され、身を我に捧げよ……直々に相手……ハッ！）
その意味を漸く捉えられたレンゼは顔を赤くして黙り込んだ
「え？　え？　意味分かったの！？　どう言う意味！？」
まだ意味が分かっていないミラに手招きして耳を貸してもらうと小声で答えた
「へ、へえぇ～、でも確かにそう聞こえるわねぇ～？」
ミラは影のある笑みを浮かべて指を鳴らし、殺気を飛ばした
「どうするのだ？　五分だけ時間をやろう」
「誰があんたみたいなのとしないといけないのよ！　誰もしたくな「ご飯……出来たわよ？」」
テーブルに次々と料理を置いていく母の前でミラは全くの無言になった
「じゃあ食べましょうか！」
ミラの母親はレンゼの目の前の席に座った
「戴きま～す！」
「「い、戴きます……」」
家庭の光と影を垣間見た瞬間だった
「戴きます」


「「「「御馳走様でした」」」」
ミラの母親がキッチンへ皿を持って行くとワークスは鼻で笑った
「ハッ、人間共の餌にしては美味であったぞ。精進せい」
「あんたも人間でしょうが！」
ミラがペチッと少し強めにワークスの頭を叩くとワークスは涙を目に浮かべた
「ク、ククク……や、やるでは、ないか……我がここまで悶絶する程の、痛みは久々であるぞ……？」
「意味分かんない事ばっかり言ってんじゃない！」
今度は拳骨を喰らわせようとした所で殺気が飛んで来て拳を収めた
「あらあら、喧嘩はダメでしょう？」
「は、はい！」
ふふふ……と笑うミラの母親は再び皿洗いに戻った
「そ、それでは……御馳走様でした！」
慌てて逃げようとするレンゼの髪をワークスが掴んだ
「ま、待て！　我が白き焔の原液を受けるかく「覚悟はありません！　ではありがとうございました！」」

プツッ

ワークスの手を振り解いて走って逃げて行った
「……」
唇を噛んで俯いていると指を何かが擽った
「こ、これは……！」





「ふぅ……まさか女に見られるのがこんなに苦労する事だったなんて……まあ名前は聞かれたけど村で俺の事知ってるのはあそこだけだし大丈夫だろう」
額を拭うと村を迂回して西へ、地図を広げて次の村へ向かった
「あ、地図濡れてる！　乾かさないと……」
慌てて魔術式を画いてその上に地図を置く
暗示は乾燥
地図の含んでいる水気を周りに移動させて乾かした
「良かったぁ……今度こそ次の村に行くぞ……！」