復讐の慰術師

紅蓮の焔

文字の大きさ
上 下
168 / 315
12章 放浪

163話 余所者

しおりを挟む
「あぁ…いてぇ…」
頭を押さえて上体を起こすと石ころが目に映った
「やっぱり…風邪かぁ…」
ヨロヨロと立ち上がるとコツっと後頭部に何かをぶつけられた
「あ?」
振り返るとそこには涙目になってレンゼを睨み付ける十数人の子供達がいた
「お、お前のせいで村が危険になったじゃないか!」
「そうよ! 余所者の貴女があの男の言う通りにしておけば私達は安全だったのに!」
その子供たちに大人が駆け寄り拳骨を喰らわせたり説教したりしている
「やめなさいお前たち!」
「あの子は何も知らないで必死だったんだ!」
「余所者だからって相手にしなかった私達が悪いんだから!」
大人達が子供達の動きを牽制すると諦めた様な目でレンゼの方に歩いて来た
(なんか気不味くない…? でも大体は読めた…村の人達は賊に搾取されてる訳か…そこに俺が来て賊の男を追い払ったから自分達に被害が及ぶ。そう言いたいんだな…)
「ナ~…」
「そうだな…風邪も俺の不注意。この事も俺の…せいなんだよな…」
フードを深く被ると唇を噛み締めた
「我が村の子供たちがすみません。して、この様な離れの村に何用で?」
白髪の老人が杖を着いてレンゼに近寄って来る
「実は旅をしていまして」
「旅…と言うと?」
老人が目を細めて聞くとレンゼは微笑んで見せた
「まあ、少し事情があって家に帰れないんですよ…」
(本当は心の準備の問題だけど…)
心でそんな事を思いながら言葉を紡ぐ
「それで、あるモノを探してるんですけど…知ってますか? ジェネット商会を…」
老人はジッとレンゼを見詰め、少しだけ黙り込んだ
「しかし、こちらとしても少々被害が出ておりまして…」
そう言うと老人はチラッと自身の後ろで子供を宥めている大人達に目配りした
「…分かりました。よ「そうですか! ありがとうございます!」」
(このジジィ…飽く迄俺から申し出た事にする気か…!)
その事に無性に腹が立つがそれよりも頭痛の方が酷く、一瞬よろめいた
「大丈夫ですかな? 良ければ一度お休みに「良い。とにかく賊の根城まで案内してくれ…後は戦える奴を一人…」」
「分かりました。では暫しお待ちくだされ…」
老人はレンゼに背を向けると後ろにいた村の者と相談し始めた
(この人達が怒るのも分かる。今までの偽り安寧が崩されるんだから。だが何かを起こさないと搾取され続けるだけの奴隷、もしくは家畜と同じだ。それだけやられても行動を起こさない奴は勇気の無い愚者だ。仮に勇気があろうが力無き愚勇もまた然り…)
相談し合っている村人達を見詰めてレンゼは鼻で笑った
「なぁ、ヒールゥ…なんで世の中こんなに人間愚者は居るのに勇者は少ないんだろうな?」
「ナ~?」
「オウム返しかよ…」
大きく溜め息を吐くと再びくしゃみが出た
「ズズッ…風邪ってこの状況が悪化すればマズいやつだし…何より賊って言うしさっきのは男だった所から予想しても男だけの集団だろうな。せめて誰か一人…そうすれば熱弁のお陰で培った…少ししか聞いてないけど…それで培った情報に寄れば勝てるかも知れねぇ…村人次第だけど…」


数十分後…
「お待たせ致しました。こちらが村人代表のマルクです」
レンゼは慌てて立ち上がるとペコリとお辞儀をした
「よろしくお願いします。早速ですが…私を背負ってくださいますか? 少々風邪気味でして」
マルクは老人にチラッと視線を向けて嘆息するとしゃがんでレンゼに背を向けた
「ありがとうございます」
そう言うとマルクの背中に凭れた
「では行ってきます」
マルクは老人にお辞儀をするとレンゼを背負って水車小屋と対称位置にある家を通り過ぎて更に進んで行った





[作者のコメント]
愚勇と言う単語……中国語だったみたいです
知ってる人は多いと思いますけど知らない人の為に書いておきます
愚勇ぐゆうとはそのままの意味で愚か向こう見ずな勇気の事を指します。日本語では蛮勇でしょうか?
日本語と思い込んで小さい頃に覚えた言葉なので蛮勇よりもこっちの方が作者にとってはしっくりくるのでこっちを選びました。これが中国語と言うのも本当につい最近、友人から聞いて知ったものなので一応ここに書いておきました。思い込みって凄いですね……
次からも気付いたらこうやって書いていきます。本当に……幼稚な頭ですみませんでした……もう少し字の事を考えて書いていきます……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...