復讐の慰術師

紅蓮の焔

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10章 入院生活

119話 後悔

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【あの雨が降り終わった頃に俺も退院出来ればまだ我慢できるのに…】
大きく溜め息を吐くと不貞寝した


その時、アリサはレンゼを見詰めてグッと唇を噛んだ
(なんで何も出来ないんだろ…レンゼがこんなになってるのに…私が止められなかったから…止めてればこんな事にならなかったのに…)
「アリサさん? 俯いてどうしたんですか?」
「なんでも無いなんでも無い…! それよりアベルくん良かったね。明日で退院なんでしょ? 戻ったらちゃんとお母さんに謝るのよ? 『心配掛けてごめんなさい』って…ちゃんと親孝行出来る内にしないといけないよ?」
「分かりましたよ。今回、俺も学習しましたから。帰ったら母さんの仕事を手伝います。レンゼには内緒ですけど実は軍も抜けるつもりなんですよ」
アベルが悪戯に笑うとアリサも少し頬を緩ませた
「どれだけ謝っても流石に許されない気はするけど…許されなくても母さんは護ってみせます。そこで寝てるチビみたいに…」
「そう…でも怪我はなるべくしちゃ駄目よ? レンゼの保護者の目から見た忠告。例え自分が無事でも自分の子供が、家族が傷だらけになるのなんて見たくないから…」
「分かりました。今後気を付けますよ」
優しく微笑むとアベルは窓の外を眺めた
(母さん…)
「そう言えば骨折は治ったの?」
「治ったらしいんですけど…まだ腹は痛いし左足は動かし辛いし右足は痺れてて…後は左腕がまだ痛む位で、当分は車椅子無しじゃ生活出来ないらしいんですけど。まあこれが治れば母さんの仕事を手伝えるので頑張って治しますよ。無理言ってここまで入院期間短くして貰ったんですから。後は帰って少しリハビリしたらすぐに手伝えます」
アベルが苦笑するとアリサはそう…と返した
(言わない方が良いよね…)
「頑張ってね!」
「はい!」
その後も暫く他愛のない話に花を咲かせていると雨が止み、鼠色の空の間から光が差し込み始めていた
「あっ…長い事話しててすみません」
「良いの良いの。レンゼには話しても通じないから話せるのアベルくん位だったし」
「それじゃあ少しトイレに行ってきます」
ベッドの隣に携帯していた車椅子を広げて座るとタイヤを回して部屋を出て行ってしまった


アベルがドアを閉めると同時にレンゼが目を覚ました
(おはよ~アリサ…)
欠伸を掻いて言うと、アリサは微笑んでおはようと口にすると、紙に『おはよう』と書き綴ってレンゼの顔の前へ持っていく
(あ…雨止んでる…)
アリサは窓の外を眺めるレンゼがどこか寂しそうに見えた
『どうしたの?』
(いいや、なんでも無い。所でアベルは? まさかもう退院したとか!?)
レンゼの残念そうな顔にクスッと笑い、紙に書き綴りレンゼに見せた
『安心して。今、トイレに行ってるだけよ』
(そうか…)
レンゼは黙り込むと再び窓の外を眺めた
暫くの間、無言の時間が出来、アリサもレンゼと同じ様に窓の外を眺める
(俺の耳だけどさ…)
突然話し出したレンゼに一瞬だけ、驚きながらレンゼの顔を見る
(本当に治らないのかなぁ…治ればアリサとも普通に会話出来るし、皆の話してる内容も誰かに書いて貰わなくても分かるのに…誰か…誰か…誰か治してくれる人いないかなぁ~! …魔術、慰術、錬金術! 全部同じならいっそ全て纏めて欲しい! 暇暇暇! 話し相手欲しい~! 耳聞こえろ~! そして早く動きたい~!)
『五月蝿い!』
(すみません…)
怒りの形相で睨むアリサにゴクリと息を呑む
するとアリサの後ろのドアが開いた
(…嘘!?)
ドアを閉めて近付いてくる。アリサはまだ気付かずにレンゼを睨み付けている
(アリサ! 後ろ! 後ろ!)
慌ててアリサの後ろを見て言うと、アリサは溜め息を吐いて振り向いた
アリサの後ろに居たのはレインだった
【何話してんの…?】
2人が会話している事は分かるが、何を話しているのか内容は分からない
【2人して何を話してるんだか…】
2人が会話している間にレンゼは窓の外を眺める鼠色の空から射し込む赤い斜光が時刻を大雑把に示している
【もう夕方…それに何もする事無いし…耳聞こえないし…本当に何かする事無いかなぁ…前世では出来なかったゲームもやってみたいし…勉強も何も出来ないし…耳の代わり…とか無いのかなぁ…アリサみたいな伝え方だと一語一句分かるって訳じゃ無いし聞いてから書く時間があるから遅いし…補聴器あっても意味無さそうだし…】
大きく溜め息を吐くと目を瞑り、眠りに着いた
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