復讐の慰術師

紅蓮の焔

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5章 友人達の大騒動

51話 レンゼとの遭遇

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『…して!』
「2号?」
アベルは声のした方に走って行くが道に迷ってしまい、どの方向から聞こえてきたかも分からなくなってしまった
(…あ、そうだ! 上に登れば良いんだよ!)
子猫を見て考え付いた回答通りに近くのパイプを掴んで、壁を足場に登って行く
『誰か助けて!』
「っ! やっぱり2号だ! あっちか!」
アベルは出来るだけ早くパイプを登り詰めて、その建物の屋上に登ると、声のした方向を思い出しながらその方向に走って、跳んで行った
そして2回程建物を飛び越えた時に2号と男達の姿が見えた
(…マジかよ…)
溜め息を吐いて、子猫と目を合わせた
「声出すなよ?」
「にゃー」
内容は分からなかったが返事をされたので一応通じただろうと思い、再び頭に乗せると飛び降りた
(足の指の腹から着地する感じで…)

スタッ…

アベルは見事、大きな音を立てずに着地に成功した
「なあ、取り込み中悪いけどさ、それ俺の妹な訳よ。とっとと返してくれる?」
金髪の男に話し掛けると男は突然ニコニコと笑いだし、手を揉みながらアベルを見た
「いや~…実はですね? お宅の妹さんと遊んでるだけなんですよ…だから放っておいてください」
「嘘! ヤろうぜとか色々言ってきた!」
「お前らに1つだけ忠告しておく。俺の家族に手を出す奴には容赦しないぞ?」
アベルは拳を構えた。すると子猫が頭から滑り落ちて肩の所で止まった
「へぇ~…それじゃあ俺も容赦なく行きますよ? お兄さん…」
金髪男はアベルに拳を突き出す

ドゴッ!

「うぐっ!」
鳩尾を殴られたアベルは腹を押さえて踞った
「ぎゃはははは! なんだこいつ! 口ほどにもねぇ!」
金髪男が笑い声を上げると男の金的に思いっきり頭突きを食らわした
「後さ…俺、魔術師兼慰術師なんだよね…俺は口から血を吐いた…分かる? もうお前らに勝ち目はねぇよ」
アベルは吐いた血で魔術式を画くと両手で魔力を通した
すると男の口の周りに水が集まり、あっという間に水の球が出来上がり、呼吸が出来ない状態となった
「ガボボ(止めろ)! ガガボガボボ(早く止めろ)!」
「もう抵抗しないな?」
身長の高い男の方も睨むと苦笑してアベルの前に2号を置いて、少しだけ後ずさりすると慌てて走って行った
その間に金髪男は白目を向いて失神していた
「もう大丈夫かな…」
魔力を通すのを止めると男の口元の水は形を成さなくなり、ビチャッと音を立ててそこら中に広がった
「ふぅ…痛かった~…」
「なーう」
アベルの頬をペロペロ舐められる感触にビクッと体を震わせたが、すぐに子猫の喉を掻いた
するとゴロゴロと唸って、肩から落ちたので慌てて受け止めると頭の上に乗せた
「大丈夫か2号? 危なかったな…まさかレンゼ探しにここまで苦労するなんて思わなかった…」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああ! 怖かった…怖かったです! ありがとうございますアベル様! う、う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!」

ヒュッ! グシャア…

「「え?」」
身長の高い男が走り去って行った方向から突然何かが飛んできて振り向く
「レンゼ!?」
「あ? ああ…アベルか、少し悪いけどさ…着任式、出れないかも…」
「なんで!?」
「チッ…話は生きて帰れたらな!」
レンゼが飛んできた方向に走って行くと同時に誰かが上から降ってきて金髪男が潰された
「だ、誰だ?」
アベル達の目の前には黒髪灼眼の妙に色気のある女が返り血を浴びて立っていた
「? あの子じゃ無いのね。まあ良いわ…殺すだけだも!」
女が話している途中で跳躍して突然左から伸びてきた柱を躱すと女はその柱を切り刻みレンゼの方へ走って行った
「おいレンゼ!」
アベルがレンゼを追い掛けようとすると目の前をレンゼが飛んできた
「まだいたのか! 早く逃げろ!」
レンゼが叫ぶとレンゼに何かが伸びてきて、それを横に跳躍して躱した
「剣?」
そして目の前に伸びてきた手はスルスルと戻っていきその方向を見ると先程の女が立っていた
「レンゼ…これでも俺も魔術師の1人なんだぜ?」
「バカっ! こいつはに「さっきから五月蝿いのよ!」」
突然、地面に写った影に驚いて上を見上げるとそこには無数の刃がアベル達に迫っていた
「くそが!」
レンゼはいつの間にか画いていた魔術式に魔力を通して自分とアベル達の上に壁を造り上げ、それに刃が次々と突き刺さる音が聞こえてきた
「おいレンゼ! 一体なんなんだよ!」
「ちいっ! 2号! アベルを連れて逃げろ!」
「へ…は、はいぃぃぃ!」
やっと言葉を理解できたかの様に少し経ってから、アベルの腕を掴んで走ろうとするがアベルの力に勝てず振り払われ、アベルはレンゼの方へ走って行った
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