復讐の慰術師

紅蓮の焔

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5章 友人達の大騒動

47話 レンゼ2号

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「ここだ。ほら行け!」
レンゼはドアを開けて女を中に入れた
「あれぇ…だ…あれ? なんで来たんでしゅかぁ?」
「今日はこいつがって言うもんだから連れてきたんですよ」
「そうでしゅか…しゅこしまっててくだしゃい…」
いつも元気そうなあの女性が眠たそうにしている姿を見てレンゼは少し驚いていた
(やっぱ誰にしても休憩は肝心だな)

数分後…
女性は男を連れて戻ってきた
「紹介しましょう! この人が今回の試験官です!」
「どもー」
女性が連れてきた男は少し前に会ったばかりのあの先輩さんだった。しかしレンゼは気絶していたので先輩の事は知らない
「それじゃあ頑張ってください!」
試験場にいた女性が手を振ると同時にレンゼはポケットからチョークケースを取り出して一緒に来た女に1本投げ渡す
「おい」
「はい!」
「これ持っていけ。術式画くのにいるからな」
「わ、分かりました!」
「それと転機チャンスは朝陽が昇るまでだ。分かったな?」
「は、はいぃぃぃ!」
そして先輩と女性は『魔』と書かれたドアを開けてその中に入っていった
「そう言えば聞いてなかったけどなんて名前なんですか?」
「私ですか?」
「うん」
「私はミラです」
「へぇ~…そうだったんだ。俺はレンゼ」
「あ、俺はアベル」
「そうですか…」
少しウトウトしながらミラは壁に凭れ掛かり眠りそうになっている





「それじゃあ試験…始め…る…よ…」
先輩は立ったまま寝息を立てて眠り始めた
(殺れば良いのか? いや、でも試験だし……倒すだけにするか)
女が先輩に近付いて思いっきり鳩尾を蹴り上げると先輩は呻き声を上げて踞った
そこへ更に踏みつけて血が出て気絶するまで蹴り続けた
(これで…良いんだよな?)
女は先輩を引っ張ってレンゼ達の元へ戻って行った





「意外と遅いんだな…」
「俺もなんだか眠くなって来た…」
アベルがウトウトし出すとレンゼはアベルの頬を摘まんで伸ばした
「一体お前何歳だよ! もう少し我慢しろよ!」
「俺は13歳だ! 我慢はしたくない!」
「13…」
レンゼは椅子に座っているアベルの隣に座った
「どうした?」
(お、俺より身長が高いだと…)
「くそっ! くそっくそぉ!」
「おいおい、落ち着けよ…」
アベルはポンポンとレンゼの肩を叩いて慰めた
「これが落ち着いていられるか! 年下に身長で負けたんだぞ! 同い年ならまだしも…年下だぞ!? 年下!」
「え? マジで? 年上だったの?」
「あぁ! 俺は14だ!」
「ま、まあ…なんか…ごめんな?」
「あやまんじゃねぇ!」
レンゼが怒鳴るとアベルの隣で気持ち良さそうに寝ていたミラが目を覚ました
「五月蝿いですね~…何がいきなりあやまんじゃねぇ! ですか? 五月蝿いですよ。近所迷惑って言葉知りませんか?」
「「すみません…」」
「しかもですね…なんで貴方はそんなに異性に好かれるんですか! 私なんか20代だって言うのに未だに付き合った事すら無いんですよ!」
ミラがグルルルと唸りながらレンゼを睨むとアベルはその仲裁役に回った
「は? 俺だったらそっちの方がマシだ。分かるか? いつもいつもガキガキ言われる側に回ってみろよ。くっそ腹立つから…あぁ、話してたら余計にイライラしてきた…」
壁を睨みながら青筋を浮かばせるレンゼとミラは同時に溜め息を吐いて俯いた
「「身長(色気)があればなぁ…はあ…」」

ガチャ

「あ! 戻ってき…たぞ…」
一瞬言葉を止めたアベルについアベルの顔を見上げ、その視線の方向を向く
「「っ!?」」
そこにいた返り血を浴びた女が先輩を引き摺ってこちらに向かっていた
「ちょ! ストップ! 止まれ! 来るなぁ!」
「?」
首を傾げながら引き摺って来る女にミラの後ろに隠れた
「ミラさん! ほら! 愛しの人があいつに殺られてますよ!」
「え? 先輩ですか?」
「そうそう! 先輩!」
「いやいや、無いですよ~…だってあの人腰抜けだし、そこまで賢い訳でも無いし、おっちょこちょいだし、支えてあげないとすぐに知らない人に付いて行っちゃう様な人なんですよ? 絶対にありえません!」
「ちゃんと倒して来ました!」
「あ…うん、合格ですか?」
「まあ一応試験官を『倒す』事が合格条件ですし大丈夫じゃ無いですか? 少し待っててください」
ミラはレンゼから離れて写真を受け取ったカウンターの後ろに向かった
その間ずっとジーっと見られていてササッとアベルの後ろに隠れた
(なあ、アベル)
(何?)
(俺さっきあの性奴隷になるってやつ、良いよって言ったじゃん? なんか気不味くない?)
(大丈夫だって! …多分…まあなんとかなる! 気にするな!)
(じゃ、じゃあ出てみるよ…)
レンゼがアベルから離れると女はレンゼの方に首を向ける
そしてレンゼがアベルの後ろに隠れるとアベルに向けた
(やっぱり! あれは危ない目だ! 絶対に何かある!)
(気にしすぎだって…今でもお前を見詰めてるだけだろ?)
「はーい! こっち向いて~!」
「ほ、ほら! あの映写機向かって笑え!」
レンゼがカメラ一眼レフを指差すと女はニコッとそれに向かって微笑んだ
「それじゃあ撮るよ…」

カシャ

「それじゃあ明日取りに来てね。それまでに写真にしとくから。それじゃ」
ミラは3人を押して建物の外に出した
「…今日どこで泊まる?」
「もうさっきの所で良いんじゃないか?」
「そうだな…おい女、名前は? 呼び名が無いと呼び辛い」
「わ、私の名前は…」
女は俯いて困り果てた顔をした
「…無いのか?」
「は、はい…」
「だったらお前の名前は今日から『変態』だ。良いな?」
「お、おい、流石にそれはダメだろ…」
アベルから止められたレンゼは再び考え込んだ
「じゃあ……ア「アホとか言わねぇよな?」…」
そして2人は再び考え込んだ

数分後…
「もうなんでもいい気がしてきた…」
考えるのに疲れたレンゼは呟いた
「じゃあもうレンゼ2号で良いんじゃないか?」
「もうそれで良いや」
疲れてきたレンゼはそれで納得して先程の宿に向かって足を動かし始めた
「おい2号、行くぞ~」
「2号…」
2号は少しガッカリしながらレンゼ達に付いて行った
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