復讐の慰術師

紅蓮の焔

文字の大きさ
上 下
33 / 315
3章 旅の始まり

31話 ハンス家での初夜

しおりを挟む

カチャカチャカチャ…

「これ…美味いな…」
「そりゃハンス家専属シェフが作ってるからね…それより早くここから出してくれよ!」
「「嫌だ」」
2人が声を合わせて言うとライズリックは半泣きになりながら肩を落としていた
(これじゃあただの拷問じゃないか…)
「あ! そう言えば創造属性はいつになったら教えてくれるの?」
シルビアが唐突してきた質問にレンゼは手を止めた
「なんの事だか…」
レンゼは誤魔化して再び食事を始めた
「創造属性? レンゼくん、君、創造属性が使えるのかい?」
レンゼは食事を中断してシルビアを引っ張ると突然銃口を向けられたがシルビアを盾にしながらライズリックの所まで行き、食堂を出た
「さて、色々と話したい事がある」
「なんだい?」
「何よ」
レンゼは大きく息を吸った
「まずはシルビア、俺は目的を果たせたら言ってやると言った。そしてライズリック、俺は創造属性とは何かを知らない。分かったか?」
レンゼがそう言うとシルビアは溜め息を吐いた
「なんで嘘をくのよ! 私見たんだから! 貴方が土で剣を創造している所を!」
「え? そうなのかい?」
2人がジーっとレンゼを見詰めるとレンゼは舌打ちをした
「あれは創造属性じゃない」
「じゃあ何よ!」
「…破壊属性だ」
「「…はい?」」
2人が首を傾げるとレンゼは嘆息した
「土の破壊属性だ。勿論この拘束するための石で出来た鉄格子に似たような石格子だってそうだ」
再び2人は首を傾げる
「土の破壊属性? それってあの地割れや地震を起こす?」
「そうそ…って…もしかして種類ってそれだけ?」
「そうだけど? それがどうかしたの?」
「いや、だってもっと無いの!? 例えば壁を建てるとか!」
「「ないない、それが創造属性だよ」」
2人に突っ込まれてレンゼは初めて創造属性の認識を改めた
(創造属性っててっきり剣や防具を造り出す事と思ってたのに…まさかそれまでもが創造属性だったなんて…)
そして隠す事が出来ない事に気が付いた
「それじゃあ質問だライズリック」
「な、なんだい?」
「あんたはさっき俺に創造属性が使えるかと聞いたな? それはなんでだ?」
ライズリックを指差して言うとライズリックはフッフッフッと笑った
「そりゃあ、創造属性が使える人が稀にいるけどその人は大体道具にその魔力を込めて使い捨ての道具として民衆に売り付ける者が殆どだ。そっちの方がよっぽど収入が良いんだろうね」
「観念しなさい! もうネタはバレてるの!」
シルビアが苛立ち気味に言うとレンゼは嘆息した
「ああ、そうだよ、創造だよ! だからなんだって言うんだよ!」
開き直って叫ぶとシルビアは驚いた顔をした
「それじゃあ1つ聞きたい事があるんだ」
「なんだ?」
「君、軍に入る気は無いかい?」
ニヤッと悪どい笑みを浮かべながらレンゼを見る
「なんで?」
「そうすれば君は軍の資料を読み漁る事が可能だ。つまりそれまでの事件の事も調べられ、更にはその人物像を見る事が出来る。つまり君が言っていた4人もすぐに見付かるかも知れないよ。私経由で伝えるよりよっぽど確実だと思うがね。さあ、どうする?」
「…本当か? 軍に入ればそれが可能になるんだな?」
「ああ、しかし1つ条件がある」
「なんだ?」
「私の推薦状を持っていって欲しい」
ライズリックの言葉に首を傾げた
「推薦状? 何のために?」
「まず軍に入るには就職試験を受けなければならない。魔術師、慰術師、錬金術師の場合は就職試験ではなく順に戦闘試験、治癒試験、そして調合試験がある。君は戦闘試験で間違いなく合格するだろう」
「…多分全部出来ますよ」
「へ? …いやいやそんな冗談は…」
「俺、錬金術も活力剤程度までなら簡単に作れますし治癒も自分の体を治せるし」
「そうかい、なら1度見せてくれ…錬金術は素材がここに無い以上出来ないが慰術なら可能だろ?」
レンゼはコクりと頷いて魔術式を画き、金槌の暗示で魔力を通した
「いきますよ…」
レンゼはそれを大きく振り上げて、勢いよく降り下ろした

ゴギャッ!

鈍い音が鳴り響き、下唇を噛んで痛みを堪える
レンゼの腕は手首と肘の中間辺りで曲がっていて、一瞬で折れていると確信できる
そして魔術式の暗示を金槌から治癒に書き直し、その上に叩いた箇所を置いて、右腕に左腕の分の魔力を流し込んで左腕に壮絶な痛みが迸る
「っ~! いきますよ…!」
レンゼは痛みから早く解放されたい一心で魔術式に手を置いて魔力を通した
青く魔術式が光り、レンゼの腕は光に包まれてたちまち元の感覚に戻っていくのを実感して元に戻ったのを感じ取ると魔力を通すのを止めた
「ほら」
「おお、これなら試験は軽々合格だろう。錬金術は知らないが一応受けてみるのかい?」
「ああ、受ける」
「活力剤が作れるのなら心配はいらない…それとここから出して貰えるかい?」
「シルビア、そろそろ夜遅いし寝るか」
「そうね」
2人はライズリックの言葉を無視してそれを引き摺りながらすたすたと歩いて行った
「それじゃあ私の部屋はここだからじゃあね」
「ああ、じゃあな」
2人が手を振り合って別れるとレンゼはライズリックの石格子を解除した
「俺の寝室はどこだ?」
「それならこっちだよ」
ライズリックに案内され、次の曲がり角を左へ、次も左、右、左、左、右と曲がり、曲がり角に再び当たる直前で止まった
「ここだよ」
「ありがとうな」
「それじゃあ楽しんで…」
悪戯な笑みを浮かべてライズリックは去っていった

ガチャ

中には着替え中のシルビアがいて、目が合った

バタンッ

(気のせいだな…)

コンコン

一応ノックをしてみる事にしたレンゼ
「ひゃ、ひゃいぃ!」
聞こえてきた声は紛れもないシルビアの声だった
「入っていいか?」
「ちょ! ちょっと待って!」
中でガサゴソと音が聞こえて数分後…漸くドアが開いた
「どうぞ!」
シルビアは膨らんだ胸のラインが分かる純白の寝間着を着ていた
「それで…なんでここに来たの?」
「ライズリックにここで寝ろと言われたからだ」
シルビアは途端にレンゼに背を向けて窓から天を見上げた

そして数十秒後…
「そ、そうなの、なら仕方無いわね。同じベッドで寝ることを許してあげるわ」
「そうか、ならお休み」
シルビアが少し止めたがそれを聞かずにベッドに顔をうずめて余りの心地よさにすぐに眠りに着いた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...