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3章 旅の始まり
31話 ハンス家での初夜
しおりを挟むカチャカチャカチャ…
「これ…美味いな…」
「そりゃハンス家専属シェフが作ってるからね…それより早くここから出してくれよ!」
「「嫌だ」」
2人が声を合わせて言うとライズリックは半泣きになりながら肩を落としていた
(これじゃあただの拷問じゃないか…)
「あ! そう言えば創造属性はいつになったら教えてくれるの?」
シルビアが唐突してきた質問にレンゼは手を止めた
「なんの事だか…」
レンゼは誤魔化して再び食事を始めた
「創造属性? レンゼくん、君、創造属性が使えるのかい?」
レンゼは食事を中断してシルビアを引っ張ると突然銃口を向けられたがシルビアを盾にしながらライズリックの所まで行き、食堂を出た
「さて、色々と話したい事がある」
「なんだい?」
「何よ」
レンゼは大きく息を吸った
「まずはシルビア、俺は目的を果たせたら言ってやると言った。そしてライズリック、俺は創造属性とは何かを知らない。分かったか?」
レンゼがそう言うとシルビアは溜め息を吐いた
「なんで嘘を吐くのよ! 私見たんだから! 貴方が土で剣を創造している所を!」
「え? そうなのかい?」
2人がジーっとレンゼを見詰めるとレンゼは舌打ちをした
「あれは創造属性じゃない」
「じゃあ何よ!」
「…破壊属性だ」
「「…はい?」」
2人が首を傾げるとレンゼは嘆息した
「土の破壊属性だ。勿論この拘束するための石で出来た鉄格子に似たような石格子だってそうだ」
再び2人は首を傾げる
「土の破壊属性? それってあの地割れや地震を起こす?」
「そうそ…って…もしかして種類ってそれだけ?」
「そうだけど? それがどうかしたの?」
「いや、だってもっと無いの!? 例えば壁を建てるとか!」
「「ないない、それが創造属性だよ」」
2人に突っ込まれてレンゼは初めて創造属性の認識を改めた
(創造属性っててっきり剣や防具を造り出す事と思ってたのに…まさかそれまでもが創造属性だったなんて…)
そして隠す事が出来ない事に気が付いた
「それじゃあ質問だライズリック」
「な、なんだい?」
「あんたはさっき俺に創造属性が使えるかと聞いたな? それはなんでだ?」
ライズリックを指差して言うとライズリックはフッフッフッと笑った
「そりゃあ、創造属性が使える人が稀にいるけどその人は大体道具にその魔力を込めて使い捨ての道具として民衆に売り付ける者が殆どだ。そっちの方がよっぽど収入が良いんだろうね」
「観念しなさい! もうネタはバレてるの!」
シルビアが苛立ち気味に言うとレンゼは嘆息した
「ああ、そうだよ、創造だよ! だからなんだって言うんだよ!」
開き直って叫ぶとシルビアは驚いた顔をした
「それじゃあ1つ聞きたい事があるんだ」
「なんだ?」
「君、軍に入る気は無いかい?」
ニヤッと悪どい笑みを浮かべながらレンゼを見る
「なんで?」
「そうすれば君は軍の資料を読み漁る事が可能だ。つまりそれまでの事件の事も調べられ、更にはその人物像を見る事が出来る。つまり君が言っていた4人もすぐに見付かるかも知れないよ。私経由で伝えるよりよっぽど確実だと思うがね。さあ、どうする?」
「…本当か? 軍に入ればそれが可能になるんだな?」
「ああ、しかし1つ条件がある」
「なんだ?」
「私の推薦状を持っていって欲しい」
ライズリックの言葉に首を傾げた
「推薦状? 何のために?」
「まず軍に入るには就職試験を受けなければならない。魔術師、慰術師、錬金術師の場合は就職試験ではなく順に戦闘試験、治癒試験、そして調合試験がある。君は戦闘試験で間違いなく合格するだろう」
「…多分全部出来ますよ」
「へ? …いやいやそんな冗談は…」
「俺、錬金術も活力剤程度までなら簡単に作れますし治癒も自分の体を治せるし」
「そうかい、なら1度見せてくれ…錬金術は素材がここに無い以上出来ないが慰術なら可能だろ?」
レンゼはコクりと頷いて魔術式を画き、金槌の暗示で魔力を通した
「いきますよ…」
レンゼはそれを大きく振り上げて、勢いよく降り下ろした
ゴギャッ!
鈍い音が鳴り響き、下唇を噛んで痛みを堪える
レンゼの腕は手首と肘の中間辺りで曲がっていて、一瞬で折れていると確信できる
そして魔術式の暗示を金槌から治癒に書き直し、その上に叩いた箇所を置いて、右腕に左腕の分の魔力を流し込んで左腕に壮絶な痛みが迸る
「っ~! いきますよ…!」
レンゼは痛みから早く解放されたい一心で魔術式に手を置いて魔力を通した
青く魔術式が光り、レンゼの腕は光に包まれてたちまち元の感覚に戻っていくのを実感して元に戻ったのを感じ取ると魔力を通すのを止めた
「ほら」
「おお、これなら試験は軽々合格だろう。錬金術は知らないが一応受けてみるのかい?」
「ああ、受ける」
「活力剤が作れるのなら心配はいらない…それとここから出して貰えるかい?」
「シルビア、そろそろ夜遅いし寝るか」
「そうね」
2人はライズリックの言葉を無視してそれを引き摺りながらすたすたと歩いて行った
「それじゃあ私の部屋はここだからじゃあね」
「ああ、じゃあな」
2人が手を振り合って別れるとレンゼはライズリックの石格子を解除した
「俺の寝室はどこだ?」
「それならこっちだよ」
ライズリックに案内され、次の曲がり角を左へ、次も左、右、左、左、右と曲がり、曲がり角に再び当たる直前で止まった
「ここだよ」
「ありがとうな」
「それじゃあ楽しんで…」
悪戯な笑みを浮かべてライズリックは去っていった
ガチャ
中には着替え中のシルビアがいて、目が合った
バタンッ
(気のせいだな…)
コンコン
一応ノックをしてみる事にしたレンゼ
「ひゃ、ひゃいぃ!」
聞こえてきた声は紛れもないシルビアの声だった
「入っていいか?」
「ちょ! ちょっと待って!」
中でガサゴソと音が聞こえて数分後…漸くドアが開いた
「どうぞ!」
シルビアは膨らんだ胸のラインが分かる純白の寝間着を着ていた
「それで…なんでここに来たの?」
「ライズリックにここで寝ろと言われたからだ」
シルビアは途端にレンゼに背を向けて窓から天を見上げた
そして数十秒後…
「そ、そうなの、なら仕方無いわね。同じベッドで寝ることを許してあげるわ」
「そうか、ならお休み」
シルビアが少し止めたがそれを聞かずにベッドに顔を埋めて余りの心地よさにすぐに眠りに着いた
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