復讐の慰術師

紅蓮の焔

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3章 旅の始まり

25話 ラグブールでの初夜

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「それで…どこで食うの?」
「…探してるのよ!」
2人が町を彷徨さまよっている内に夜になった
「なあ…もう周りの店が閉じ始めてるぞ?」
「ぐっ…どうして! どうして全然見付けられないの!?」
「え? 今まで沢山あったよ? 気付いて無かっただけだったのか…てっきりただ選んでるだけかと…すまんな」
更に落ち込んで背中を曲げる
「うぅ…」
「またいつかな?」
「それじゃあ宿を探しましょ!」
シルビアが指を指して言う
「今度は見付けたら言えば良いのか?」
「ええ! バンバン言ってちょうだい!」
「それなら…あそこに」
レンゼが指を指した先には窓からあかりの漏れた建物を指差した
「あそこって家じゃないの?」
「入口の所を見てみろ。看板が掛かってるだろ? なんて書いてある?」
「え~と…INNイン?」
「あの文字は宿屋って意味だ」
シルビアは感心した様にその看板を見ている
「インは看板、インは看板…」
そう呟きながらその建物に入って行った
中に入るとすぐにカウンターがあり、そこに若い女性が立っている
「いらっしゃい…2名様ですね。お一人様100セシュルになります」
「ほら払ってこい」
「ひゃ!」
レンゼに背中を押されてカウンターの前に来た
「は、はい! 200セシュル!」
「はい! ありがとうございます! では部屋に案内するのでこちらへ…」
「レンゼ~行くわ…どこに行ったのよ…」
シルビアは案内された部屋に荷物を置いて宿屋の外に出た
「レンゼ!」
「五月蝿いなぁ…」
「うひゃ!」
横から聞こえてきた声に驚いて振り向くとレンゼが立っていた
「お、驚かさないでよ…」
「ははは、ごめんね。戻ろうか」
「うん! て言うかあんたが笑った所初めて見たかも…」

ドゴッ!

シルビアが笑って中に入ろうとすると突然隣のレンゼから鈍い音がして振り向いた
「え? レンゼ? でも…なんで?」
混乱しているシルビアは突き飛ばされレンゼとの間に誰かが入った
「いった~…あれ? レンゼ? でもさっき……ひっ…」
レンゼとシルビアの目の前には後頭部を潰されたレンゼの姿があった
「痛いじゃない…人をこんな簡単に殺して良いと思ってるの?」
そう言うと赤い光に包まれて別の姿を形成した
「…あの時の…」
「あら、覚えてくれてたのね。嬉しいわ」
それは7年前にレンゼの前に姿を現したあの女性だった
「レ、レンゼ…あ、あの人…何?」
「知らない…だが昔から色々厄介な事をしてくる奴だ」
「自己紹介はまだだったかしら? 私の名前はラスト…宜しくね」
ラストは不気味な微笑みを浮かべて見せた
「シルビア…ごめんな、ここで死ぬかもしれん」
「え!? 嘘! ここで!? やだ~!」
「チッ…少し静かにしてくれ…」

ドスッ

「うっ…」
レンゼがシルビアの鳩尾に肘をぶつけると呻き声を上げて気絶した
「あら、良いの?」
「ここでこいつを逃がしてもどうせ殺すだろ?」
「ふふっ…そうかもね…」
暫く風が髪を冷たくなぜる
「はあっ!」
「ふっ」
レンゼが走って剣をラストに振るうとそれを右腕で防御して足を引っ掻ける
「ぐわっ!」
レンゼは倒れるとすぐに剣を取って起き上がろうとすると突然首にを突き付けられた
「そんなに興奮しないで…私は戦いに来たんじゃないの。貴方がどこにいるか確かめたかっただけ…」
ラストは腕を元に戻すとニコッと微笑んだ
「な、なんで殺さないんだよ…」
「貴方はまだ殺さないでおくわ。それが私達の願いであり上様の願いでもある、それじゃあまたね。覚えておいて…貴方は生かされてる。つまり用が無くなればいつでも消せるって事を…」
そしてラストはレンゼに背を向けて去って行った
そしてひと風吹くと石で鋪装されている地面に落ちている砂が舞い上がり一瞬、ラストが見えなくなるとその先にラストはいなかった
「…なんなんだ一体…」
レンゼは剣を持ってシルビアを担ぐと宿屋の中に入った
「すみません、部屋ってどこでしたっけ」
「こちらです。どうぞ…」
女性に案内されて部屋に向かった
「こちらです」
「ありがとうございます」
ペコリとお辞儀をすると部屋の中に入った
「…まだ…足りないのか…」
レンゼは部屋にあったベッドにシルビアを放るとぐっと拳を握り締め、ギリッと唇を噛んだ
(くそ! くそ…)
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