ゴッドクエスト

紅蓮の焔

文字の大きさ
上 下
229 / 242
14章 終わりの序章

sidestoryレイン~永遠の別れ~2

しおりを挟む
「ミルお姉さん!」
息を切らして走ってきたレインを見てミルの姿をした何かは黒い手にレインを乗せて自分の近くまで持ってきた
「なんで…なんで私を捨てたの…」
「ごめんね…ミルお姉さん、でもね、もう貴女は死んでしまったんだよ……だから…だからもう、楽になって良いんだよ?」
レインが涙を目に溜めて言うとミルは俯いて何かを呟き始めた
レインがそれに耳を澄ますと…
「レインくんは私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物!なのにどうして貴方は私を捨てるの?一生懸命貴方に尽くすのに何が不満なの…」
そしてミルは涙を流して顔を上げた
「ねえ…どうして貴方は私を捨てるの?私は貴方の為ならどんな事だってする…だから…もう独りは…」
ミルの声は段々小さくなって行き、誰にも聞こえない音量に達した
「やだよぉ…」
その声は近くにいるレインですら聞き取れない音量だった
「捨てるんじゃないよ…少しの間離れるだけ、貴女の仇は絶対に取るから…もう、泣かないで…」
「お願い…私には貴方しか…レインくんしか…」
ミルが黒い手ではなく、己の手でレインを掴もうと手を伸ばすがレインはそれを掴むとゆっくりと下に下ろした
「ありがとう…でも、ミルお姉さん、貴女は独りじゃない、貴女には僕がいる、皆がいる」
「あ…あ…」
レインの言葉に次々と涙を流していくミル
「僕は貴女が好きだ…でもこれは女性のそれとは違ってお姉さんとして好きなんだ…」
その言葉にミルは絶望の表情を浮かべる
「でも、それでも貴女には甘えたい、昔に戻りたい…でもそれじゃあダメなんだ」
「どう…して?」
「時間はね?1秒1秒過ぎていく…そしてそれが積み重なって分となり日にちに変わり、年へ変わる
僕はもう15歳…もう、甘えるだけの歳じゃないんだ」
「それっ…でも!」
「ミルお姉さん、本当に貴女は素敵な女性だった
でもね?貴女はもう死んでいるんだ
それでも貴女が貴女でいられるのは魔王のお陰…でもそれは決して良いことではない…」
ミルは俯いて、赤く腫れ上がった目から再び涙が頬を伝う
「それでも、悪いことでもない…現にミルお姉さんにこうして会える事が出来た」
それを聞いてレインの方へ顔を上げる
「例えどんな事があったとしても過去は変えられない…どれだけ楽しくても、どれだけ嬉しくても、死んでしまえばそこで終わりなんだ」
ミルは再び俯く
「だけど…」
レインがミルに近付いて抱き着いた
「ありがとう…沢山の幸せを…愛情を…ありがとう…ミルお姉さん…」
「う、う、うわぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁあああぁぁあぁぁぁぁあぁぁああぁぁあぁぁぁああぁあぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁあぁあぁあぁぁああぁあぁあぁぁぁぁあぁ!」
ミルもレインに抱き着いて泣き始めた
「本当に…ありっ!…がとう!」
「ぁあぁぁぁあぁあぁあぁあぁぁああぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁあぁあぁあぁぁああぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁあぁあぁあぁぁああぁあぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁあぁあぁあぁぁああぁあぁあぁぁぁぁあ!」
レインは涙を流してミルから離れると手刀の形を作った
「そして…っ!さようっ!なら!」
(雷帝の閃光)

ブシュッ!

「ごめん…ごめん…ごめんね…ミルお姉さん…うっ…うっ…」
泣き崩れるレインの目の前には、涙を流したミルの頭があった
しかし、それと同時にミルの頭は微笑んでいた…
殺された時の様に…レインを宥めようとする様な笑顔でニコッと微笑んでいた
そして暫くすると黒い手がボロボロと崩れ出して、その上でレインは泣きじゃくっていた
「…」
無言で泣き崩れるレインを連れて戻ったメイトもまた、涙を流していた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

〖完結〗私が死ねばいいのですね。

藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。 両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。 それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。 冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。 クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。 そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全21話で完結になります。

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

処理中です...