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1章・箱庭
16.急展開
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「魔法において最も重要なことって何か分かります?」
「知らん。」
「私は『純度』だと思うのです。どんなに魔力量の多い魔導師でも魔法の純度が低ければ、威力を上げるのに1度により多くの魔力を必要とします。ですが逆に言えば、どんなに魔力量の少ない魔導師でも、魔法の純度が高ければそこまで多くの魔力を消費しなくとも、より強い攻撃魔法が成せるのです。」
「なるほどな、だからあんたはさっきから高い威力の魔法ぶっぱなしてんのにほとんど魔力が減ってねぇわけだ。」
「ふふふ。その通りです。ところでナツメさん、あなた随分と手を抜いていらっしゃるようにお見受けしますが……」
ファーレが顔の表情を変えた。
「そう見えるか?だったらあんたの目は節穴だぜ?」
ナツメはそう言って剣をファーレに向けた。
ナツメとファーレの闘いは一進一退の攻防で、ファーレが魔法を放てばナツメはそれを受けるか避ける。またナツメが魔法と同時に剣を振れば、ファーレはそれを全て複数の魔法で相殺する。
「そろそろ頃合いかな。」
ナツメはそう口にすると剣を鞘にしまった。
「どうしましたか?怖気付いた……わけではなさそうですね。」
ファーレは様子を伺っている。
ナツメは両手で件を構えるポーズをとると、ナツメの手からは黒い大きな刀身が伸び始めた。その刀身は電気をまとったように周囲に放電している。
「なるほど、魔剣を使えたのですね。」
魔剣、それは完全に魔力のみで練り上げられた剣である。普通は剣に魔法を付与したり魔力を通して闘うが、魔剣は元となる剣がなく、魔力のみで剣をその手に宿すという技術であり、それを使える者は数少なかった。
「本番といこうぜ。」
ナツメはそう笑ってファーレに斬りかかった。
「(まずい、魔法が間に合わない!)」
ファーレはまた複数の魔法で相殺しようとしたが、ナツメの速度に魔法の発動が追いつかず吹き飛ばされてしまった。
また、ナツメの魔剣、それは剣を実体化させるほど高密度で純度の高い魔力とそれを実現させる精密な魔力操作、それらから放たれる攻撃は、威力が桁違いに跳ね上がった。
「あなた……おかしいですよ……どうしてあなたは大隊長なのですか…?あなたは大隊長などという立場に収まっていい実力の人間ではありません……並の大隊長ではないとは思っていましたが…どうやらそんなあなたが大隊長であり続けるのは、、、察するに訳ありという所でしょうか?」
ファーレは瓦礫を押し退けてボロボロになりながら言った。
「あぁ、察しが良くて助かるよ。でもなぁ、俺んとこの団には俺より強い奴がまだ何人もいるんだよ。俺なんかまだまだだぜ?」
「そうですが、王国魔剣士団とは恐ろしいものですね。」
「そうだろ?じゃあまぁ、そろそろトドメといくか。」
そう言ってナツメが魔剣に電力を強く纏わせ、雷のように辺りに放電された。
その瞬間、放電された雷により瓦礫の木片に引火した。
そしてとてつもない大爆発が引き起こった。この爆発はナツメの放ったものではなかった。
「やってくれるじゃねぇか……」
ナツメは咄嗟に魔法で障壁を作ったが、左半身を大きく火傷していた。
「私は最初に複数魔法と言いましたよ。複数の魔法を使う、つまりあなたと闘っている時に使っていた魔法とは別で、周囲の水素と酸素の濃度を操ることも雑作なくできます。あなたが炎系の魔法を使ってくださることを期待しましたが…まさか放電による引火で爆発するとは予想外でしたね。」
「そういうあんたも大火傷なんじゃねぇのか?」
そう、長い戦闘の中で増幅した酸素と水素の濃度からの水素爆発は、ファーレも無事ではいられなかった。ナツメの言うように、ファーレも右手に大きな火傷を負っていた。
「そうですね……正直ここまで大きく爆発するとは私も思っておりませんでしたので。あなたの魔剣の魔力の密度が高すぎたんじゃないですか?」
「バカ言え…、あんたが水素と酸素の濃度上げすぎたんだろ」
ボロボロで満身創痍の2人の火傷を癒すように、水素爆発によって生じた水が雨のように降り注いでいた。
「そろそろ終わりにしましょうナツメさん。」
「あぁそうだな。」
2人は魔法の詠唱をした。
『多重・魔法展開』
『魔剣技・飛翔』
2人の最高火力がぶつかり合う。
かに思われた。
「?!?!?!近い…!!!ちょっと、////……降参降参降参んんんんんん!!///」
ナツメがとんでもない速さで迫ってきて、ファーレの顔に一瞬で近づいた時、ファーレは顔を赤らめて両手を前に出して叫んだ。
ナツメはファーレの首に剣がさしかかる寸前で停止し、よく分からないといった顔をしている。
「え、いや、あの、その、えっと、」
ファーレは目を泳がせて耳を赤くしている。
「降参ってなんだ?舐めてんのか」
ナツメは停止したまま睨んでいた。
「(目つき鋭い…かっこいい///)えっと、私………………幼少期から男性というものがあまり分からなくて、その、恋というものもあまり嗜んだことがありませんでして、こんなに男性の方と至近距離になったのは初めてで、その、つまり、その、えっと…………///」
「……???何だ急に」
ナツメはファーレの急激な態度の変化に困惑が隠せなかった。
「何だ、はっきり言え。」
ナツメは魔剣を下ろした。
「あの……私…………ナツメさんに……恋をしてしまったようです…///」
「…………」
ナツメは素っ頓狂な顔で黙り込んだ。
「ハァァ?!?!?!?!?!」
少しのラグの後、ナツメはようやく事態を理解し、驚いて声を上げた。
もはや2人とも魔力を放棄し、ナツメの魔剣は無くなり、ファーレの魔法陣は消滅。2人は丸腰で地上に降りていた。
「知らん。」
「私は『純度』だと思うのです。どんなに魔力量の多い魔導師でも魔法の純度が低ければ、威力を上げるのに1度により多くの魔力を必要とします。ですが逆に言えば、どんなに魔力量の少ない魔導師でも、魔法の純度が高ければそこまで多くの魔力を消費しなくとも、より強い攻撃魔法が成せるのです。」
「なるほどな、だからあんたはさっきから高い威力の魔法ぶっぱなしてんのにほとんど魔力が減ってねぇわけだ。」
「ふふふ。その通りです。ところでナツメさん、あなた随分と手を抜いていらっしゃるようにお見受けしますが……」
ファーレが顔の表情を変えた。
「そう見えるか?だったらあんたの目は節穴だぜ?」
ナツメはそう言って剣をファーレに向けた。
ナツメとファーレの闘いは一進一退の攻防で、ファーレが魔法を放てばナツメはそれを受けるか避ける。またナツメが魔法と同時に剣を振れば、ファーレはそれを全て複数の魔法で相殺する。
「そろそろ頃合いかな。」
ナツメはそう口にすると剣を鞘にしまった。
「どうしましたか?怖気付いた……わけではなさそうですね。」
ファーレは様子を伺っている。
ナツメは両手で件を構えるポーズをとると、ナツメの手からは黒い大きな刀身が伸び始めた。その刀身は電気をまとったように周囲に放電している。
「なるほど、魔剣を使えたのですね。」
魔剣、それは完全に魔力のみで練り上げられた剣である。普通は剣に魔法を付与したり魔力を通して闘うが、魔剣は元となる剣がなく、魔力のみで剣をその手に宿すという技術であり、それを使える者は数少なかった。
「本番といこうぜ。」
ナツメはそう笑ってファーレに斬りかかった。
「(まずい、魔法が間に合わない!)」
ファーレはまた複数の魔法で相殺しようとしたが、ナツメの速度に魔法の発動が追いつかず吹き飛ばされてしまった。
また、ナツメの魔剣、それは剣を実体化させるほど高密度で純度の高い魔力とそれを実現させる精密な魔力操作、それらから放たれる攻撃は、威力が桁違いに跳ね上がった。
「あなた……おかしいですよ……どうしてあなたは大隊長なのですか…?あなたは大隊長などという立場に収まっていい実力の人間ではありません……並の大隊長ではないとは思っていましたが…どうやらそんなあなたが大隊長であり続けるのは、、、察するに訳ありという所でしょうか?」
ファーレは瓦礫を押し退けてボロボロになりながら言った。
「あぁ、察しが良くて助かるよ。でもなぁ、俺んとこの団には俺より強い奴がまだ何人もいるんだよ。俺なんかまだまだだぜ?」
「そうですが、王国魔剣士団とは恐ろしいものですね。」
「そうだろ?じゃあまぁ、そろそろトドメといくか。」
そう言ってナツメが魔剣に電力を強く纏わせ、雷のように辺りに放電された。
その瞬間、放電された雷により瓦礫の木片に引火した。
そしてとてつもない大爆発が引き起こった。この爆発はナツメの放ったものではなかった。
「やってくれるじゃねぇか……」
ナツメは咄嗟に魔法で障壁を作ったが、左半身を大きく火傷していた。
「私は最初に複数魔法と言いましたよ。複数の魔法を使う、つまりあなたと闘っている時に使っていた魔法とは別で、周囲の水素と酸素の濃度を操ることも雑作なくできます。あなたが炎系の魔法を使ってくださることを期待しましたが…まさか放電による引火で爆発するとは予想外でしたね。」
「そういうあんたも大火傷なんじゃねぇのか?」
そう、長い戦闘の中で増幅した酸素と水素の濃度からの水素爆発は、ファーレも無事ではいられなかった。ナツメの言うように、ファーレも右手に大きな火傷を負っていた。
「そうですね……正直ここまで大きく爆発するとは私も思っておりませんでしたので。あなたの魔剣の魔力の密度が高すぎたんじゃないですか?」
「バカ言え…、あんたが水素と酸素の濃度上げすぎたんだろ」
ボロボロで満身創痍の2人の火傷を癒すように、水素爆発によって生じた水が雨のように降り注いでいた。
「そろそろ終わりにしましょうナツメさん。」
「あぁそうだな。」
2人は魔法の詠唱をした。
『多重・魔法展開』
『魔剣技・飛翔』
2人の最高火力がぶつかり合う。
かに思われた。
「?!?!?!近い…!!!ちょっと、////……降参降参降参んんんんんん!!///」
ナツメがとんでもない速さで迫ってきて、ファーレの顔に一瞬で近づいた時、ファーレは顔を赤らめて両手を前に出して叫んだ。
ナツメはファーレの首に剣がさしかかる寸前で停止し、よく分からないといった顔をしている。
「え、いや、あの、その、えっと、」
ファーレは目を泳がせて耳を赤くしている。
「降参ってなんだ?舐めてんのか」
ナツメは停止したまま睨んでいた。
「(目つき鋭い…かっこいい///)えっと、私………………幼少期から男性というものがあまり分からなくて、その、恋というものもあまり嗜んだことがありませんでして、こんなに男性の方と至近距離になったのは初めてで、その、つまり、その、えっと…………///」
「……???何だ急に」
ナツメはファーレの急激な態度の変化に困惑が隠せなかった。
「何だ、はっきり言え。」
ナツメは魔剣を下ろした。
「あの……私…………ナツメさんに……恋をしてしまったようです…///」
「…………」
ナツメは素っ頓狂な顔で黙り込んだ。
「ハァァ?!?!?!?!?!」
少しのラグの後、ナツメはようやく事態を理解し、驚いて声を上げた。
もはや2人とも魔力を放棄し、ナツメの魔剣は無くなり、ファーレの魔法陣は消滅。2人は丸腰で地上に降りていた。
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