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第一章
二話
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リオは私がナターリアに別の世界から遣わされたことも、ナターリアが直接私に語りかけてくることも未だ知らない。
「お前、俺がいない間、絶対に指輪は外すんじゃねぇぞ? 浮気したら、まじ許さねぇからな」
「別に外さないわよ」
結婚指輪は指につけてるし、前にもらった婚約指輪はペンダントにしてある。
どちらにもリオの魔法の加護が入ってるから、お守りとしてとても重宝しているし。
「帰ってきたら、お前……」
「ねぇ、もう行ったら?」
そんな会話の後、リオは王都にある魔法省へと渋々出かけて行った。
もちろん愛馬のアナと一緒である。
今回の出張は、最低でも帰るのに二、三日はかかるのだとか。
(さっきは今夜犯すとか犯罪じみたことを言っていたけど……なんだ、しばらくリオは帰ってこないのか……)
この短期間の間、あいつは国の執務でも軍でもかなり優秀な成績を残していて、どこもかしこでも引っ張りだこだ。
この世界で50年ぶりに誓いが成就した私とリオは、体が結ばれたことで、女神の恩恵というギフトが発動し、互いの一族に大きな繁栄をもたらした。
その効果はとても強く、状態異常完全無効の効果と基本能力の底上げUPという、リオとソアの家族を含めた親戚は今でもほぼチート状態なのだとか。
私の胸元には、女神に認められた証としてリオの名が……リオの左の後ろ肩には私の日本名が、聖痕として刻まれている。
まぁ、これらは全て、リオを暴走させないがための、女神ナターリアの策略なのだが。
この世界の人間は決して知ることがない事実だ。
(女神の恩恵による状態異常完全無効の効果で、私の馬車酔いや船酔いがなくなったのは、かなり助かってるけどね)
今回、ナターリアが私に干渉してきたのは、おそらく一年ぶりである。
そう、また世界の危機なのだとか言って。
乙女ゲームの攻略用キャラの一人だった、セグレット・サフマン。
柔らかな面持ちでクルクルとした金髪に碧眼を持つ彼は、まるで壁画に描かれている天使のように美しい見た目だ。
そのセグレット様だが、彼はサフマン一族の反対を押し切り、なんとこの三年の間に、街のギルドマスターとなっていた。
貴族が実力でギルド冒険者の長に……って、実はこれ、とてもすごいことだったりする。
さすが、ナターリアにゲームの攻略用キャラとして、設定に使われただけのことはあるなと。(セグレット様、超優秀!)
そして近々、セグレット様率いるギルドの冒険者総出で、あるドラゴンの退治に行くらしいのだ。
しかし、そのドラゴン……実はこの世界にとってとても重要な聖獣で、そのドラゴンが倒されてしまうと、世界の均衡が崩れてしまうかもしれないのだとか。
そこに先回りして、私に警鐘を鳴らしたのが、女神ナターリアだった。
(ここで動物と話せる私が抜擢されたわけだけども、会話の相手がドラゴンっていうのはちょっと怖いなぁ。でも、セグレット様に直接会うのは、たぶん私の心が保たんし……※前作参照)
そう、私の能力は動物との意思疎通に長けている。
この場合、ナターリアが私に頼るのも理解はできた。
そしてセグレット様は、乙女ゲーム内で私のNo. 2推しだったキャラ。
その上、彼のストーリーは濃厚なラブ要素が多くて、リアルにセグレット様の姿を見ようものなら、私はヒロイン側だったプレイ時を思い出し、心臓バクバクの過呼吸になってしまうのだ。
(女神様……リオを攻略する上で、ゲームの弊害がこんなところに出てきましたよ)
ちなみにNo.1推しはソアの実兄である。
あぁ、兄も好き!(落ち着け)
前回、セグレット様のことでリオと険悪になったし、その時のリオの異常さが急に怖くなった私は、夜の森に逃げちゃって、危うく死にかけたわけで……。
(助けてくれたのもリオだけど)
今の状態のリオに、私がセグレット様と直接会ったなんて事実を知られたら、ヤツはどう暴れるのか……もう分かったもんじゃない。
たぶん、ドラゴンに直談判かけた方がマシなや~つ。
それだけ、リオの心の異変による暴走は恐ろしいのだ。
(あれ誰も何も言わないけど、おそらく魔王候補なのは間違いないから)
「……クラーク」
「はい、奥様」
私はそばに待機していた、この家の執事であるクラークさんの名前を呼んだ。
彼はリオに長年仕えている、年配でベテランのスタッフである。
一応リオの妻となった時に、立場上は彼を呼び捨てに変えたけれど、やっぱりちょっと慣れないね。
「今日は用事がありまして、馬の準備をお願いします」
「用事……ですか?」
うんうん、そこ気になるよねぇ。
さて、なんて答えようかな。
彼に言った言葉は全てリオに筒抜けだから、伝え方には気をつけないと……。
「えっと、実はかなり重要な用事が発生しました。その女神関係の……もしかしたら最悪、長期になるかもしれなくて……」
「な、なんと女神関連……! かしこまりました。すぐに馬と外出の支度を用意させます!」
クラークさんはそう言うと、バタバタと屋敷内を走って行った。
「お前、俺がいない間、絶対に指輪は外すんじゃねぇぞ? 浮気したら、まじ許さねぇからな」
「別に外さないわよ」
結婚指輪は指につけてるし、前にもらった婚約指輪はペンダントにしてある。
どちらにもリオの魔法の加護が入ってるから、お守りとしてとても重宝しているし。
「帰ってきたら、お前……」
「ねぇ、もう行ったら?」
そんな会話の後、リオは王都にある魔法省へと渋々出かけて行った。
もちろん愛馬のアナと一緒である。
今回の出張は、最低でも帰るのに二、三日はかかるのだとか。
(さっきは今夜犯すとか犯罪じみたことを言っていたけど……なんだ、しばらくリオは帰ってこないのか……)
この短期間の間、あいつは国の執務でも軍でもかなり優秀な成績を残していて、どこもかしこでも引っ張りだこだ。
この世界で50年ぶりに誓いが成就した私とリオは、体が結ばれたことで、女神の恩恵というギフトが発動し、互いの一族に大きな繁栄をもたらした。
その効果はとても強く、状態異常完全無効の効果と基本能力の底上げUPという、リオとソアの家族を含めた親戚は今でもほぼチート状態なのだとか。
私の胸元には、女神に認められた証としてリオの名が……リオの左の後ろ肩には私の日本名が、聖痕として刻まれている。
まぁ、これらは全て、リオを暴走させないがための、女神ナターリアの策略なのだが。
この世界の人間は決して知ることがない事実だ。
(女神の恩恵による状態異常完全無効の効果で、私の馬車酔いや船酔いがなくなったのは、かなり助かってるけどね)
今回、ナターリアが私に干渉してきたのは、おそらく一年ぶりである。
そう、また世界の危機なのだとか言って。
乙女ゲームの攻略用キャラの一人だった、セグレット・サフマン。
柔らかな面持ちでクルクルとした金髪に碧眼を持つ彼は、まるで壁画に描かれている天使のように美しい見た目だ。
そのセグレット様だが、彼はサフマン一族の反対を押し切り、なんとこの三年の間に、街のギルドマスターとなっていた。
貴族が実力でギルド冒険者の長に……って、実はこれ、とてもすごいことだったりする。
さすが、ナターリアにゲームの攻略用キャラとして、設定に使われただけのことはあるなと。(セグレット様、超優秀!)
そして近々、セグレット様率いるギルドの冒険者総出で、あるドラゴンの退治に行くらしいのだ。
しかし、そのドラゴン……実はこの世界にとってとても重要な聖獣で、そのドラゴンが倒されてしまうと、世界の均衡が崩れてしまうかもしれないのだとか。
そこに先回りして、私に警鐘を鳴らしたのが、女神ナターリアだった。
(ここで動物と話せる私が抜擢されたわけだけども、会話の相手がドラゴンっていうのはちょっと怖いなぁ。でも、セグレット様に直接会うのは、たぶん私の心が保たんし……※前作参照)
そう、私の能力は動物との意思疎通に長けている。
この場合、ナターリアが私に頼るのも理解はできた。
そしてセグレット様は、乙女ゲーム内で私のNo. 2推しだったキャラ。
その上、彼のストーリーは濃厚なラブ要素が多くて、リアルにセグレット様の姿を見ようものなら、私はヒロイン側だったプレイ時を思い出し、心臓バクバクの過呼吸になってしまうのだ。
(女神様……リオを攻略する上で、ゲームの弊害がこんなところに出てきましたよ)
ちなみにNo.1推しはソアの実兄である。
あぁ、兄も好き!(落ち着け)
前回、セグレット様のことでリオと険悪になったし、その時のリオの異常さが急に怖くなった私は、夜の森に逃げちゃって、危うく死にかけたわけで……。
(助けてくれたのもリオだけど)
今の状態のリオに、私がセグレット様と直接会ったなんて事実を知られたら、ヤツはどう暴れるのか……もう分かったもんじゃない。
たぶん、ドラゴンに直談判かけた方がマシなや~つ。
それだけ、リオの心の異変による暴走は恐ろしいのだ。
(あれ誰も何も言わないけど、おそらく魔王候補なのは間違いないから)
「……クラーク」
「はい、奥様」
私はそばに待機していた、この家の執事であるクラークさんの名前を呼んだ。
彼はリオに長年仕えている、年配でベテランのスタッフである。
一応リオの妻となった時に、立場上は彼を呼び捨てに変えたけれど、やっぱりちょっと慣れないね。
「今日は用事がありまして、馬の準備をお願いします」
「用事……ですか?」
うんうん、そこ気になるよねぇ。
さて、なんて答えようかな。
彼に言った言葉は全てリオに筒抜けだから、伝え方には気をつけないと……。
「えっと、実はかなり重要な用事が発生しました。その女神関係の……もしかしたら最悪、長期になるかもしれなくて……」
「な、なんと女神関連……! かしこまりました。すぐに馬と外出の支度を用意させます!」
クラークさんはそう言うと、バタバタと屋敷内を走って行った。
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