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第一章
十話
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「最っ高に楽しいっ……! 今の気分は実に爽快だ!」
だって私のレベル、今回の討伐で20も上がった!
つまりトータルではLv27へと到達。
アレクのレベルにはまだまだ程遠いが、たった数時間でさっきまでとは比べ物にならないくらい私は強くなれた。
こんなのもう……最高の一言しか出てこない。
ここまで連れてきてくれたアレク様に感謝だ、感謝!
大げさに拝んでおこう。
ありがたや~神ぃー……。
「いや、拝むな。フォルの気持ちはよく分かった。分かったから、今日はもう村の宿に行ってすぐに風呂へ入ろうぜ? 俺たちの体はリザードマンの返り血で、今や最上級にドッロドロだ……」
「おぅ……そうだったな。確かにベトベトで気持ち悪い……」
寝衣などの着替えとかは村の人が用意して待ってくれているようだから、宿に入ったら今着ている服はすぐに洗ってしまおう。
早めに干しておけば、明日の朝にはきっと乾いてくれているに違いない。
「後半はフォルがほとんど倒してたな。リザードマンとのレベル差はおそらく15以上はあったはずだから、お前は本当に良くやったよ……たぶんフォルは、強い冒険者になれる素質が高いと思う」
「ふふ、ありがとな。でも、それもこれも全てはアレクのお陰だからな。もはや感謝しかないぜ」
(前世では、それなりにプレイヤースキルを学んでいるつもりだったけど……やはりゲームの中と実戦では、感覚の全てが大違いだった……)
リザードマンたちの亡骸は、棲家になっていた岩穴の辺りに集めて置いてきた。
後できっと、村の人たちがうまく処理してくれることだろう。
リザードマンの鱗には、それなりの利用価値もあるらしいし。
それに岩穴の奥まで残党がいないかを、アレクは入念に調べていた。
この世界のモンスターはそう簡単にまた湧くということはないようだから、村人がこの近辺まで来たとしても襲われることはないはずである。
私とアレクは、ここからそう遠くない山間の村まで戻った。
そして村民からの歓迎もあって、その晩は有意義な時間を過ごすことになる。
特にアレクの方は、やはりS級冒険者としても有名な経歴を持っているらしく……村の住人たちから手厚い歓待を受けていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、私は眠気もピークになった頃、自然とそのまま床についた。
というか宴の間に寝てしまっていたらしく、起きたら勝手にベッドの中へ入っていた感じだ。
(部屋に運んでくれたのはやっぱりアレクかなぁ……また面倒をかけさせちゃったみたいだ。反省反省……)
朝になると、昨日洗っておいた服はちゃんと乾いていたので、私はまたそれに着替えてアレクと一緒に朝食を食べた。
その後は村を通り過ぎる馬車をのんびりと待って、王都行きの商人を捕まえたら、また便乗させてもらう。
ヒッチハイクみたいでこれも楽しい時間だった。
◇ ◇ ◇
アレクとクエストの報告のためにクランへ戻ってくると、建物内が妙にザワザワとしていた。
(一体どうしたんだ?)
「あ、フォル様……お仕事ご苦労様です」
私たちの存在に気がついた受付嬢は、すぐに労いの言葉をかけてくれる。
「騒がしいが何かあったのか?」
「あ、アレクさんも……何でも数日前、公爵家の令嬢が王立学園の敷地内から突然消えてしまったようなのです。目撃者によると、歩いていたその方の足元に、いきなり転移サークルの魔法陣が発生して、令嬢の体を包み込んだとか……しかも、その令嬢は王太子の婚約者だったようで、国から捜索命令が出ていて、クランの方にも依頼が回って来ているのです」
「そりゃあ……穏やかじゃねえな。なんだって、貴族の嬢ちゃんがそんな目に……」
アレクはそう言うと、渡された令嬢探しの依頼書に目を通した。
私は彼の横で、ちらりと書類を盗み見る。
依頼書には令嬢の似顔絵などは描かれていなかったから、一先ずは安心だが……。
(この依頼、アレク受けるのかな……まずいな。やはり、このまま静かに悪役令嬢の責務からフェードアウトというわけにはいかないか……)
「アレクさん、この依頼受けますか?」
「いや……国が大々的に捜索しているなら、俺が出る幕でもねえよ。この令嬢というのは、特徴が黒髪の少女としか書かれてねーけど、一体どういう人物なんだ?」
アレクがそう尋ねると、受付の女性は少しだけ『うーん』と考える。
「私が聞いた情報では、なんでも……とても可憐な少女で見目は麗しく、いつも淑やかな様子でかなり慎ましい性格の令嬢だったとか……」
「ぶっ……」
「おいおい、フォル? 急に吹き出してどうした?」
「い、いや、別に……」
私はともかく、捜索依頼書にこれだけ特徴が何も書かれていないとなると、フォルティエナって家柄が一人歩きしているだけの、割と大人しいタイプの令嬢だったのかもな。
私が転生する少し前に王太子と婚約したばかりだったようだし、もしかすると悪役令嬢に急変したのは何かのキッカケでレイグラートと不仲になってから……なのかもしれない。
「その令嬢は間違ってもフォルみてーな喋り方はしねえんだろうなぁ……お前も少しはその令嬢の慎ましさを見習え? な?」
「ははは、違いないな」
私はそんな感じで笑って誤魔化した。
国が探しているのは自分だと、アレクたちにはバレずに済んだようだ。
やっぱり……喋り方や態度があまりにもイメージと違うと、たとえ髪色や年齢が一致していたとしても片鱗の疑いすら持たれないらしい。
(ステータスチェックされた時も、それなりに令嬢ぽい特徴が出てたんだけどな……人間ってやはり第一印象が全てなんだなー……)
私たちはリザードマン討伐の達成報告をした。
村からも連絡が来ているということで、これで無事にクエスト任務完了となる。
「アレク、この二日間色々と助けてくれてありがとうな。私もこれから頑張って冒険者としての力を磨くから、陰ながら応援してくれると嬉しい。貰ったこの布と選んでくれた剣は、アレクの代わりと思ってずっと大切に使うよ」
私はそう言って、彼の大きな手をぎゅっと両手で掴んだ。
もちろんそこには最大級の感謝を込めて。
「あぁ……そうだな。フォルは絶対にこれから強くなる。今度会う時は、ぜひ立派な冒険者となった姿を俺に見せてくれ」
「できる限り善処する。どこかでまた会ったらよろしくな」
「おぅ。じゃあ……またな」
私は名残惜しくもアレクとはクラン内部ですんなりと別れた。
きっとまたいつかは会えるから、寂しくはない。
それに……私にはこれから行かなきゃならないところが出来てしまったしな。
だって私のレベル、今回の討伐で20も上がった!
つまりトータルではLv27へと到達。
アレクのレベルにはまだまだ程遠いが、たった数時間でさっきまでとは比べ物にならないくらい私は強くなれた。
こんなのもう……最高の一言しか出てこない。
ここまで連れてきてくれたアレク様に感謝だ、感謝!
大げさに拝んでおこう。
ありがたや~神ぃー……。
「いや、拝むな。フォルの気持ちはよく分かった。分かったから、今日はもう村の宿に行ってすぐに風呂へ入ろうぜ? 俺たちの体はリザードマンの返り血で、今や最上級にドッロドロだ……」
「おぅ……そうだったな。確かにベトベトで気持ち悪い……」
寝衣などの着替えとかは村の人が用意して待ってくれているようだから、宿に入ったら今着ている服はすぐに洗ってしまおう。
早めに干しておけば、明日の朝にはきっと乾いてくれているに違いない。
「後半はフォルがほとんど倒してたな。リザードマンとのレベル差はおそらく15以上はあったはずだから、お前は本当に良くやったよ……たぶんフォルは、強い冒険者になれる素質が高いと思う」
「ふふ、ありがとな。でも、それもこれも全てはアレクのお陰だからな。もはや感謝しかないぜ」
(前世では、それなりにプレイヤースキルを学んでいるつもりだったけど……やはりゲームの中と実戦では、感覚の全てが大違いだった……)
リザードマンたちの亡骸は、棲家になっていた岩穴の辺りに集めて置いてきた。
後できっと、村の人たちがうまく処理してくれることだろう。
リザードマンの鱗には、それなりの利用価値もあるらしいし。
それに岩穴の奥まで残党がいないかを、アレクは入念に調べていた。
この世界のモンスターはそう簡単にまた湧くということはないようだから、村人がこの近辺まで来たとしても襲われることはないはずである。
私とアレクは、ここからそう遠くない山間の村まで戻った。
そして村民からの歓迎もあって、その晩は有意義な時間を過ごすことになる。
特にアレクの方は、やはりS級冒険者としても有名な経歴を持っているらしく……村の住人たちから手厚い歓待を受けていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、私は眠気もピークになった頃、自然とそのまま床についた。
というか宴の間に寝てしまっていたらしく、起きたら勝手にベッドの中へ入っていた感じだ。
(部屋に運んでくれたのはやっぱりアレクかなぁ……また面倒をかけさせちゃったみたいだ。反省反省……)
朝になると、昨日洗っておいた服はちゃんと乾いていたので、私はまたそれに着替えてアレクと一緒に朝食を食べた。
その後は村を通り過ぎる馬車をのんびりと待って、王都行きの商人を捕まえたら、また便乗させてもらう。
ヒッチハイクみたいでこれも楽しい時間だった。
◇ ◇ ◇
アレクとクエストの報告のためにクランへ戻ってくると、建物内が妙にザワザワとしていた。
(一体どうしたんだ?)
「あ、フォル様……お仕事ご苦労様です」
私たちの存在に気がついた受付嬢は、すぐに労いの言葉をかけてくれる。
「騒がしいが何かあったのか?」
「あ、アレクさんも……何でも数日前、公爵家の令嬢が王立学園の敷地内から突然消えてしまったようなのです。目撃者によると、歩いていたその方の足元に、いきなり転移サークルの魔法陣が発生して、令嬢の体を包み込んだとか……しかも、その令嬢は王太子の婚約者だったようで、国から捜索命令が出ていて、クランの方にも依頼が回って来ているのです」
「そりゃあ……穏やかじゃねえな。なんだって、貴族の嬢ちゃんがそんな目に……」
アレクはそう言うと、渡された令嬢探しの依頼書に目を通した。
私は彼の横で、ちらりと書類を盗み見る。
依頼書には令嬢の似顔絵などは描かれていなかったから、一先ずは安心だが……。
(この依頼、アレク受けるのかな……まずいな。やはり、このまま静かに悪役令嬢の責務からフェードアウトというわけにはいかないか……)
「アレクさん、この依頼受けますか?」
「いや……国が大々的に捜索しているなら、俺が出る幕でもねえよ。この令嬢というのは、特徴が黒髪の少女としか書かれてねーけど、一体どういう人物なんだ?」
アレクがそう尋ねると、受付の女性は少しだけ『うーん』と考える。
「私が聞いた情報では、なんでも……とても可憐な少女で見目は麗しく、いつも淑やかな様子でかなり慎ましい性格の令嬢だったとか……」
「ぶっ……」
「おいおい、フォル? 急に吹き出してどうした?」
「い、いや、別に……」
私はともかく、捜索依頼書にこれだけ特徴が何も書かれていないとなると、フォルティエナって家柄が一人歩きしているだけの、割と大人しいタイプの令嬢だったのかもな。
私が転生する少し前に王太子と婚約したばかりだったようだし、もしかすると悪役令嬢に急変したのは何かのキッカケでレイグラートと不仲になってから……なのかもしれない。
「その令嬢は間違ってもフォルみてーな喋り方はしねえんだろうなぁ……お前も少しはその令嬢の慎ましさを見習え? な?」
「ははは、違いないな」
私はそんな感じで笑って誤魔化した。
国が探しているのは自分だと、アレクたちにはバレずに済んだようだ。
やっぱり……喋り方や態度があまりにもイメージと違うと、たとえ髪色や年齢が一致していたとしても片鱗の疑いすら持たれないらしい。
(ステータスチェックされた時も、それなりに令嬢ぽい特徴が出てたんだけどな……人間ってやはり第一印象が全てなんだなー……)
私たちはリザードマン討伐の達成報告をした。
村からも連絡が来ているということで、これで無事にクエスト任務完了となる。
「アレク、この二日間色々と助けてくれてありがとうな。私もこれから頑張って冒険者としての力を磨くから、陰ながら応援してくれると嬉しい。貰ったこの布と選んでくれた剣は、アレクの代わりと思ってずっと大切に使うよ」
私はそう言って、彼の大きな手をぎゅっと両手で掴んだ。
もちろんそこには最大級の感謝を込めて。
「あぁ……そうだな。フォルは絶対にこれから強くなる。今度会う時は、ぜひ立派な冒険者となった姿を俺に見せてくれ」
「できる限り善処する。どこかでまた会ったらよろしくな」
「おぅ。じゃあ……またな」
私は名残惜しくもアレクとはクラン内部ですんなりと別れた。
きっとまたいつかは会えるから、寂しくはない。
それに……私にはこれから行かなきゃならないところが出来てしまったしな。
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