年下幼馴染みは加減しない

みなみ抄花

文字の大きさ
上 下
7 / 21
第一章

七話

しおりを挟む
 私と真宵くんはみなとみらい地区にある、よこはまコスモワールドまでやってきた。
 入口にある赤い門の下をくぐると、乗り物が水の中を走っていくアトラクションがすぐに目の端へと入ってくる。
「真宵くんはまず何に乗りたい?」
「俺はあそこにあるジェットコースターかな? あの床に激突していくみたいなのが、個人的にすげー気になってる」
「あぁ、バニッシュね、オーケー」
(あれは床じゃなくて、水が入ってるプールの穴みたいなところを猛スピードで進んで行く感じなんだけどね)
 でも外側からだとそうも見えるから、私も実際に乗る前はこのジェットコースターはいつもどこに落ちていくんだろうとずっと疑問に思ってた。
 ちなみに真宵くんも私も、絶叫系は全然平気だ。
 過去に彼と私の家族同士でディズ◯ーランドへ行ったことがあるけれど、普通に二人で絶叫系のコースターをかなり楽しんだ記憶がある。
 今日は土曜日なので、バニッシュもそれなりにお客さんが並んではいるが……このくらいならまぁ待てる範囲だろう。

 私と真宵くんはセットになってる回数券を買って、アトラクションの列に並んだ。
 そしてバニッシュに向かう階段のところで待っていると、ふと目の前の観覧車が目に入る。
「栞里、あれ乗りたい?」
「えっ? どれに?」
「観覧車。見てたでしょ?」
「あ、うん……」
 見てたというか、目の前にあるから見えたというか……。
 この観覧車って夜になると、色鮮やかなライトアップがされて、とても綺麗なんだよね。
 今はまだ外が明るいから光ってはないけれど。
 でも、なんか観覧車に二人で乗るってちょっとあからさまというか、幼馴染み的にはどうなんだろう。
 真宵くんは優しいしずっと紳士だし、変なことはしないだろうけどさ……。
 
 私たちはバニッシュを楽しんだあと、他の乗り物も何個か堪能して、最後に観覧車の方まで向かった。
 私は乗ることに対して少し疑問に思いながらも、二人で人の列の最後尾へと並ぶ。
「わっと……」
 私が足元不注意でついよろけると、真宵くんはすぐに肩を支えてくれた。
 いやー優しいね。
「ありがとう」
「いや?」
(うーん、あの可愛かった男の子も、こうやって女子の体を支えてくれるなんて、随分と成長したもんだなぁ……)
 なんてことをしみじみと思っていたら、前に並んでいた人たちがすでに先へと進んでいたので、私たちもすぐに歩き出した。
「意外と回ってくるの早そうだね」
「あぁ」
 観覧車の前に来てから、少し口数が少なくなってきた真宵くん。
 色々と回って疲れちゃったのかもしれない。
 私も昨日からの寝不足もあって、今日は帰ったらよく眠れそうだ。
 それにしても……。
 真宵くん、さっき私がよろけてからずっと肩を支えたままだな。
 もう足元は大丈夫なんだけど……?
(ま、まぁいいか……)

 しばらくして順番が回ってきたので、係員の人に案内されて、私たちはゆっくりと動いている観覧車のゴンドラの中へと乗り込む。
 ドアが外からしっかりと施錠されたのを確認し、私は窓からの景色を見た。
(まだ明るいけど、海が見えて綺麗……)
 私はこの時、外の風景ばかりに気を取られて、真宵くんの方を全然見ていなかった気がする。
 彼も私と同じようにてっきり窓の外を見てるんだと思っていたんだけど……。
「栞里……」
「ん?」
 観覧車が少し進んでから、真宵くんに声をかけられて、そちらへ顔を向けると彼と目が合った。
 名前を呼ばれたけど、真宵くんはこれといって何かを話すわけでもない。
 んー……どうしたんだろう?
 なぜか真面目な顔でこちらをじっと見つめてくるけど……。
 何も言わない彼に対して少し不安な気持ちで見返していたら、真宵くんの手が私の頬に伸びてきた。
 そして……気がつくと彼の唇が私の唇に触れた。
(えっ……)
 わけが分からなく呆然としていると、真宵くんは「こういう時は目を閉じなきゃ……」とか言ってくる。
 いやいやいやいや!
 そういうことじゃないでしょ!
「な、なななんで……」
 私は乱心して、かなり口吃ってしまう。
「ちゃんと家まで送ってくとは言ったけど、手を出さないとは言ってない」
「だって……私たち……」
 ただの幼馴染み……なんだよね?
 え、これ幼馴染みだったら、普通キスとかは絶対にしない……よね?
「栞里の口、柔らかかったー……ごちそうさま?」
 そう言って、顔を赤らめながらニヤけて笑う真宵くんだ。
(や、やられた……)
 ずっと紳士的だった彼がまさか二人きりになった途端、いきなり唇を奪ってくるとは……!
 最近の子って手が早いな! 
 完全に油断したわ!

 でも……。
 キス優しかったな……。
 それに……。

(つーか上手くね? キス慣れてね?)
 私はちょっと不機嫌な顔になった。
 なんとなく面白くない。
 って……あれ?
 おかしいな。
 これだとまるで自分がやきもち焼いてるみたいじゃないか。
 私は慌てて首を勢いよく横に振る。
 そして、キッと強気な顔で真宵くんを睨みつけた。
「なんか表情がころころ変わって可愛い」
「な、ななな……」
「そういうとこも全部好きだから……栞里、俺と付き合って」
「す、好き……付きあ……?!」
 どうやら私は色々とキャパオーバーとなり、頭がパニックと化したようです。
 えぇ、どうしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜

葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在 一緒にいるのに 言えない言葉 すれ違い、通り過ぎる二人の想いは いつか重なるのだろうか… 心に秘めた想いを いつか伝えてもいいのだろうか… 遠回りする幼馴染二人の恋の行方は? 幼い頃からいつも一緒にいた 幼馴染の朱里と瑛。 瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、 朱里を遠ざけようとする。 そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて… ・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・ 栗田 朱里(21歳)… 大学生 桐生 瑛(21歳)… 大学生 桐生ホールディングス 御曹司

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

予知姫と年下婚約者

チャーコ
恋愛
未来予知の夢、予知夢を視る女の子のお話です。下がってしまった未来予知の的中率を上げる為、五歳年下の美少年と婚約します。 本編と特別編の間に、番外編の別視点を入れました。また「予知姫と年下婚約者 小話集」も閑話として投稿しました。そちらをお読みいただきますと、他の視点からお話がわかると思いますので、どうぞよろしくお願いします。 ※他サイトにも掲載しています。 ※表紙絵はあっきコタロウさんに描いていただきました。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

世界くんの想うツボ〜年下御曹司との甘い恋の攻防戦〜

遊野煌
恋愛
衛生陶器を扱うTONTON株式会社で見積課課長として勤務している今年35歳の源梅子(みなもとうめこ)は、五年前のトラウマから恋愛に臆病になっていた。そんなある日、梅子は新入社員として見積課に配属されたTONTON株式会社の御曹司、御堂世界(みどうせかい)と出会い、ひょんなことから三ヶ月間の契約交際をすることに。 キラキラネームにキラキラとした見た目で更に会社の御曹司である世界は、自由奔放な性格と振る舞いで完璧主義の梅子のペースを乱していく。 ──あ、それツボっすね。 甘くて、ちょっぴり意地悪な年下男子に振り回されて噛みつかれて恋に落ちちゃう物語。 恋に臆病なバリキャリvsキラキラ年下御曹司 恋の軍配はどちらに? ※画像はフリー素材です。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

処理中です...