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第一章
七話
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私と真宵くんはみなとみらい地区にある、よこはまコスモワールドまでやってきた。
入口にある赤い門の下をくぐると、乗り物が水の中を走っていくアトラクションがすぐに目の端へと入ってくる。
「真宵くんはまず何に乗りたい?」
「俺はあそこにあるジェットコースターかな? あの床に激突していくみたいなのが、個人的にすげー気になってる」
「あぁ、バニッシュね、オーケー」
(あれは床じゃなくて、水が入ってるプールの穴みたいなところを猛スピードで進んで行く感じなんだけどね)
でも外側からだとそうも見えるから、私も実際に乗る前はこのジェットコースターはいつもどこに落ちていくんだろうとずっと疑問に思ってた。
ちなみに真宵くんも私も、絶叫系は全然平気だ。
過去に彼と私の家族同士でディズ◯ーランドへ行ったことがあるけれど、普通に二人で絶叫系のコースターをかなり楽しんだ記憶がある。
今日は土曜日なので、バニッシュもそれなりにお客さんが並んではいるが……このくらいならまぁ待てる範囲だろう。
私と真宵くんはセットになってる回数券を買って、アトラクションの列に並んだ。
そしてバニッシュに向かう階段のところで待っていると、ふと目の前の観覧車が目に入る。
「栞里、あれ乗りたい?」
「えっ? どれに?」
「観覧車。見てたでしょ?」
「あ、うん……」
見てたというか、目の前にあるから見えたというか……。
この観覧車って夜になると、色鮮やかなライトアップがされて、とても綺麗なんだよね。
今はまだ外が明るいから光ってはないけれど。
でも、なんか観覧車に二人で乗るってちょっとあからさまというか、幼馴染み的にはどうなんだろう。
真宵くんは優しいしずっと紳士だし、変なことはしないだろうけどさ……。
私たちはバニッシュを楽しんだあと、他の乗り物も何個か堪能して、最後に観覧車の方まで向かった。
私は乗ることに対して少し疑問に思いながらも、二人で人の列の最後尾へと並ぶ。
「わっと……」
私が足元不注意でついよろけると、真宵くんはすぐに肩を支えてくれた。
いやー優しいね。
「ありがとう」
「いや?」
(うーん、あの可愛かった男の子も、こうやって女子の体を支えてくれるなんて、随分と成長したもんだなぁ……)
なんてことをしみじみと思っていたら、前に並んでいた人たちがすでに先へと進んでいたので、私たちもすぐに歩き出した。
「意外と回ってくるの早そうだね」
「あぁ」
観覧車の前に来てから、少し口数が少なくなってきた真宵くん。
色々と回って疲れちゃったのかもしれない。
私も昨日からの寝不足もあって、今日は帰ったらよく眠れそうだ。
それにしても……。
真宵くん、さっき私がよろけてからずっと肩を支えたままだな。
もう足元は大丈夫なんだけど……?
(ま、まぁいいか……)
しばらくして順番が回ってきたので、係員の人に案内されて、私たちはゆっくりと動いている観覧車のゴンドラの中へと乗り込む。
ドアが外からしっかりと施錠されたのを確認し、私は窓からの景色を見た。
(まだ明るいけど、海が見えて綺麗……)
私はこの時、外の風景ばかりに気を取られて、真宵くんの方を全然見ていなかった気がする。
彼も私と同じようにてっきり窓の外を見てるんだと思っていたんだけど……。
「栞里……」
「ん?」
観覧車が少し進んでから、真宵くんに声をかけられて、そちらへ顔を向けると彼と目が合った。
名前を呼ばれたけど、真宵くんはこれといって何かを話すわけでもない。
んー……どうしたんだろう?
なぜか真面目な顔でこちらをじっと見つめてくるけど……。
何も言わない彼に対して少し不安な気持ちで見返していたら、真宵くんの手が私の頬に伸びてきた。
そして……気がつくと彼の唇が私の唇に触れた。
(えっ……)
わけが分からなく呆然としていると、真宵くんは「こういう時は目を閉じなきゃ……」とか言ってくる。
いやいやいやいや!
そういうことじゃないでしょ!
「な、なななんで……」
私は乱心して、かなり口吃ってしまう。
「ちゃんと家まで送ってくとは言ったけど、手を出さないとは言ってない」
「だって……私たち……」
ただの幼馴染み……なんだよね?
え、これただの幼馴染みだったら、普通キスとかは絶対にしない……よね?
「栞里の口、柔らかかったー……ごちそうさま?」
そう言って、顔を赤らめながらニヤけて笑う真宵くんだ。
(や、やられた……)
ずっと紳士的だった彼がまさか二人きりになった途端、いきなり唇を奪ってくるとは……!
最近の子って手が早いな!
完全に油断したわ!
でも……。
キス優しかったな……。
それに……。
(つーか上手くね? キス慣れてね?)
私はちょっと不機嫌な顔になった。
なんとなく面白くない。
って……あれ?
おかしいな。
これだとまるで自分がやきもち焼いてるみたいじゃないか。
私は慌てて首を勢いよく横に振る。
そして、キッと強気な顔で真宵くんを睨みつけた。
「なんか表情がころころ変わって可愛い」
「な、ななな……」
「そういうとこも全部好きだから……栞里、俺と付き合って」
「す、好き……付きあ……?!」
どうやら私は色々とキャパオーバーとなり、頭がパニックと化したようです。
えぇ、どうしよう。
入口にある赤い門の下をくぐると、乗り物が水の中を走っていくアトラクションがすぐに目の端へと入ってくる。
「真宵くんはまず何に乗りたい?」
「俺はあそこにあるジェットコースターかな? あの床に激突していくみたいなのが、個人的にすげー気になってる」
「あぁ、バニッシュね、オーケー」
(あれは床じゃなくて、水が入ってるプールの穴みたいなところを猛スピードで進んで行く感じなんだけどね)
でも外側からだとそうも見えるから、私も実際に乗る前はこのジェットコースターはいつもどこに落ちていくんだろうとずっと疑問に思ってた。
ちなみに真宵くんも私も、絶叫系は全然平気だ。
過去に彼と私の家族同士でディズ◯ーランドへ行ったことがあるけれど、普通に二人で絶叫系のコースターをかなり楽しんだ記憶がある。
今日は土曜日なので、バニッシュもそれなりにお客さんが並んではいるが……このくらいならまぁ待てる範囲だろう。
私と真宵くんはセットになってる回数券を買って、アトラクションの列に並んだ。
そしてバニッシュに向かう階段のところで待っていると、ふと目の前の観覧車が目に入る。
「栞里、あれ乗りたい?」
「えっ? どれに?」
「観覧車。見てたでしょ?」
「あ、うん……」
見てたというか、目の前にあるから見えたというか……。
この観覧車って夜になると、色鮮やかなライトアップがされて、とても綺麗なんだよね。
今はまだ外が明るいから光ってはないけれど。
でも、なんか観覧車に二人で乗るってちょっとあからさまというか、幼馴染み的にはどうなんだろう。
真宵くんは優しいしずっと紳士だし、変なことはしないだろうけどさ……。
私たちはバニッシュを楽しんだあと、他の乗り物も何個か堪能して、最後に観覧車の方まで向かった。
私は乗ることに対して少し疑問に思いながらも、二人で人の列の最後尾へと並ぶ。
「わっと……」
私が足元不注意でついよろけると、真宵くんはすぐに肩を支えてくれた。
いやー優しいね。
「ありがとう」
「いや?」
(うーん、あの可愛かった男の子も、こうやって女子の体を支えてくれるなんて、随分と成長したもんだなぁ……)
なんてことをしみじみと思っていたら、前に並んでいた人たちがすでに先へと進んでいたので、私たちもすぐに歩き出した。
「意外と回ってくるの早そうだね」
「あぁ」
観覧車の前に来てから、少し口数が少なくなってきた真宵くん。
色々と回って疲れちゃったのかもしれない。
私も昨日からの寝不足もあって、今日は帰ったらよく眠れそうだ。
それにしても……。
真宵くん、さっき私がよろけてからずっと肩を支えたままだな。
もう足元は大丈夫なんだけど……?
(ま、まぁいいか……)
しばらくして順番が回ってきたので、係員の人に案内されて、私たちはゆっくりと動いている観覧車のゴンドラの中へと乗り込む。
ドアが外からしっかりと施錠されたのを確認し、私は窓からの景色を見た。
(まだ明るいけど、海が見えて綺麗……)
私はこの時、外の風景ばかりに気を取られて、真宵くんの方を全然見ていなかった気がする。
彼も私と同じようにてっきり窓の外を見てるんだと思っていたんだけど……。
「栞里……」
「ん?」
観覧車が少し進んでから、真宵くんに声をかけられて、そちらへ顔を向けると彼と目が合った。
名前を呼ばれたけど、真宵くんはこれといって何かを話すわけでもない。
んー……どうしたんだろう?
なぜか真面目な顔でこちらをじっと見つめてくるけど……。
何も言わない彼に対して少し不安な気持ちで見返していたら、真宵くんの手が私の頬に伸びてきた。
そして……気がつくと彼の唇が私の唇に触れた。
(えっ……)
わけが分からなく呆然としていると、真宵くんは「こういう時は目を閉じなきゃ……」とか言ってくる。
いやいやいやいや!
そういうことじゃないでしょ!
「な、なななんで……」
私は乱心して、かなり口吃ってしまう。
「ちゃんと家まで送ってくとは言ったけど、手を出さないとは言ってない」
「だって……私たち……」
ただの幼馴染み……なんだよね?
え、これただの幼馴染みだったら、普通キスとかは絶対にしない……よね?
「栞里の口、柔らかかったー……ごちそうさま?」
そう言って、顔を赤らめながらニヤけて笑う真宵くんだ。
(や、やられた……)
ずっと紳士的だった彼がまさか二人きりになった途端、いきなり唇を奪ってくるとは……!
最近の子って手が早いな!
完全に油断したわ!
でも……。
キス優しかったな……。
それに……。
(つーか上手くね? キス慣れてね?)
私はちょっと不機嫌な顔になった。
なんとなく面白くない。
って……あれ?
おかしいな。
これだとまるで自分がやきもち焼いてるみたいじゃないか。
私は慌てて首を勢いよく横に振る。
そして、キッと強気な顔で真宵くんを睨みつけた。
「なんか表情がころころ変わって可愛い」
「な、ななな……」
「そういうとこも全部好きだから……栞里、俺と付き合って」
「す、好き……付きあ……?!」
どうやら私は色々とキャパオーバーとなり、頭がパニックと化したようです。
えぇ、どうしよう。
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