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第三章

三十話

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「リオ、本当にいい加減にして!」 
 私はエロいことばかりするリオから距離を取ろうと階段を先に降りていく。
 そしてふと足を止めると、いつの間にかこの広い部屋の中心であるに着いていた。
(え、よく見たらここ、あの気持ち悪い台座とか石像があったそばじゃんか……)
 壊れかけている悪魔のような形の石像がズラリと並び、真ん中の台座の周りには古く錆びた鎖などがそばに落ちていて、過去にここで何が行われていたのか、現代人の私でも容易に想像できた。
(たぶん生贄とか……)
 そんなことを考えるだけで、気分が悪くなってくるのだが。
(うぇ、なんかここ、本気でやだ……)
 私はこの気味の悪い場所から離れようとゆっくりと後ろに後退る。
 すると、何か黒いものが体の周りを駆けたような気がした。
「リオ、今何か……」
 まだ階段の方にいたリオに、私がそう言いかけた時、すでに天井の方で渦巻いていた黒いの塊が、すごい速さでいきなりこちらへと飛び込んでくる。
「えっ……」
「な、ソア!」
 突然現れた黒く渦巻いたの塊から、人とは思えない歪んだ黒い腕が正面に現れると、私の喉元を強く掴んだ。
 そして勢いよく引き上げられた私の体は、高く高く宙を舞う。
「あ……う……」
 首を掴んでいる腕の先、自身のまなこに映っているはずのそこにはの姿もない。
 ただ黒くて、真の暗闇だけが見えている。
 今まで色んなところで見たとは全然違う。
 それはまるでブラックホールのような……見ているだけで本当に吸い込まれてしまいそうな、とても恐ろしいそのものだった。

「う……あ……あ……」
「ソア!」
『オカシイ……最深部に入れるのは同族の力を持った者だけのはずだが……そうか、コイツはナターリアの聖女……』
 酷いノイズとともに、威圧的で恐ろしい……人間とは確実にかけ離れた声が、私の頭の中へと響いてくる。
 この声は下にいるリオにも聞こえているのだろうか……。
「くそ! ソアを離せよ!」
 近くまで走ってきたリオが、風で作った刃を黒い闇へと放つが、端っこだけが一瞬霧散したあと、すぐさま元通りとなった。
 私の首元にある黒い腕の力は時間が経つごとに少しずつ増している。
 その度に自分の首が締まっていくのが分かった。
「ぐ……う……」
「やめろ!」
『オマエ……オマエは仲間だろう? コイツがコノ世界に来たせいで、お前の魔力は押さえつけられている……全ての元凶はコノ女……』
 黒い闇はノイズの酷い不快な声で、何かを言っている。
 首を絞められ少しずつ意識が朦朧としてきている私には、今やリオの声も闇から発せられるの声も、あまりよく聞こえないのだが……。

『コノ女を殺して、我が力を貸してやろう。時空の狭間に落としてやってもいい。元々コノ世界の人間じゃない。とても危険な女だ、殺せ』
「うるせー!! 俺は俺が死んでもソアを殺すもんか! ソアを殺すくらいなら、この世界ごと全てを壊してやる!!」
 そう叫んだリオが放った闇魔法。
 闇と闇同士がぶつかって融合し均等が崩れた途端、闇の塊だったものが天井いっぱいに弾け飛んだ。
 その反動で私の体は解放され、リオの腕の中へと落ちていく。
「ソア!」
「リ……オ……ゲホッゲホッ……うぅ」
 私は強く咳き込むと、荒い呼吸でリオの服をギュッと握った。
「ソア……俺が油断してたせいだ……ごめん……」
 リオはそう言って、私の体を優しく抱きしめてくる。
 あぁ、やっぱりこの腕の中はとても安心するんだ……。
 暖かくて、私の全てを愛してくれる人。
「リオ……大……好き……よ」
「!」

『ナゼナゼナゼナゼ……』
 天井に弾けた黒い闇が再形成すると、すぐにこちらへと突っ込んでくるが、リオが闇と火を混合させた強力な魔法を放ち、闇の塊を勢いよく吹き飛ばした。
『オカシイオカシイオカシイオカシイ……』
 壁や天井に弾け飛んで、集まってはまた弾け飛び……を繰り返し、少しずつ小さくなっていくは、リオの強烈な攻撃で今やあの不快な声すらも聞こえなくなってきている。
 リオの魔法は、本当にこのまま世界を壊してしまうんじゃないかと思ってしまうような、恐ろしい勢いだった。
 しばらく経って完全に沈黙したは、リオの放った黒い火の海の中へと消えていく。
 闇同士の魔法なんて、お互い不利なはずなのに、あんな恐ろしいそのものですら、こんな圧倒的な力で消してしまうなんて……。
 それには、リオのことをとかと言っていた。
 それは一体どういことなのだろうか……。
(リオたちは女神ナターリアの子孫ではないの……?)

 リオはを消し去ったあと、今度は水と風をかけ合わせた魔法を使い、そこら中に広がった火を消しながら、ついでによくわからない周りの石像や台座をも破壊していった。
 明らかに来た時とは様変わりしているというか……。
 それ以前に、戻るための通路まで消してしまうのはかなりヤバいのではないだろうか。
「リ、リオ……ちょっとやりすぎ……」
 私はそう言って、グイグイとリオの服を引っ張るも、どうやら彼の耳には届いていないようで……。
「あんの黒いのぉ! ソアの首を掴みやがって! クソが! こんなくされた所なんざ、俺が全て焼き払ってやらぁあ!!」
 やばい……リオ、キレすぎて壊れたのでは……。
 このままだと本気で遺跡ごと消してしまう勢いだ。
 えぇ、私たち生きて帰れるのかしらー!

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