30 / 35
第三章
三十話
しおりを挟む
「リオ、本当にいい加減にして!」
私はエロいことばかりするリオから距離を取ろうと階段を先に降りていく。
そしてふと足を止めると、いつの間にかこの広い部屋の中心である例の場所に着いていた。
(え、よく見たらここ、あの気持ち悪い台座とか石像があったそばじゃんか……)
壊れかけている悪魔のような形の石像がズラリと並び、真ん中の台座の周りには古く錆びた鎖などがそばに落ちていて、過去にここで何が行われていたのか、現代人の私でも容易に想像できた。
(たぶん生贄とか……)
そんなことを考えるだけで、気分が悪くなってくるのだが。
(うぇ、なんかここ、本気でやだ……)
私はこの気味の悪い場所から離れようとゆっくりと後ろに後退る。
すると、何か黒いものが体の周りを駆けたような気がした。
「リオ、今何か……」
まだ階段の方にいたリオに、私がそう言いかけた時、すでに天井の方で渦巻いていた黒い何かの塊が、すごい速さでいきなりこちらへと飛び込んでくる。
「えっ……」
「な、ソア!」
突然現れた黒く渦巻いた何かの塊から、人とは思えない歪んだ黒い腕が正面に現れると、私の喉元を強く掴んだ。
そして勢いよく引き上げられた私の体は、高く高く宙を舞う。
「あ……う……」
首を掴んでいる腕の先、自身の眼に映っているはずのそこには何者の姿もない。
ただ黒くて、真の暗闇だけが見えている。
今まで色んなところで見た黒いモヤとは全然違う。
それはまるでブラックホールのような……見ているだけで本当に吸い込まれてしまいそうな、とても恐ろしい闇そのものだった。
「う……あ……あ……」
「ソア!」
『オカシイ……最深部に入れるのは同族の力を持った者だけのはずだが……そうか、コイツはナターリアの聖女……』
酷いノイズとともに、威圧的で恐ろしい……人間とは確実にかけ離れた声が、私の頭の中へと響いてくる。
この声は下にいるリオにも聞こえているのだろうか……。
「くそ! ソアを離せよ!」
近くまで走ってきたリオが、風で作った刃を黒い闇へと放つが、端っこだけが一瞬霧散したあと、すぐさま元通りとなった。
私の首元にある黒い腕の力は時間が経つごとに少しずつ増している。
その度に自分の首が締まっていくのが分かった。
「ぐ……う……」
「やめろ!」
『オマエ……オマエは仲間だろう? コイツがコノ世界に来たせいで、お前の魔力は押さえつけられている……全ての元凶はコノ女……』
黒い闇はノイズの酷い不快な声で、何かを言っている。
首を絞められ少しずつ意識が朦朧としてきている私には、今やリオの声も闇から発せられる何かの声も、あまりよく聞こえないのだが……。
『コノ女を殺して、我が力を貸してやろう。時空の狭間に落としてやってもいい。元々コノ世界の人間じゃない。とても危険な女だ、殺せ』
「うるせー!! 俺は俺が死んでもソアを殺すもんか! ソアを殺すくらいなら、この世界ごと全てを壊してやる!!」
そう叫んだリオが放った闇魔法。
闇と闇同士がぶつかって融合し均等が崩れた途端、闇の塊だったものが天井いっぱいに弾け飛んだ。
その反動で私の体は解放され、リオの腕の中へと落ちていく。
「ソア!」
「リ……オ……ゲホッゲホッ……うぅ」
私は強く咳き込むと、荒い呼吸でリオの服をギュッと握った。
「ソア……俺が油断してたせいだ……ごめん……」
リオはそう言って、私の体を優しく抱きしめてくる。
あぁ、やっぱりこの腕の中はとても安心するんだ……。
暖かくて、私の全てを愛してくれる人。
「リオ……大……好き……よ」
「!」
『ナゼナゼナゼナゼ……』
天井に弾けた黒い闇が再形成すると、すぐにこちらへと突っ込んでくるが、リオが闇と火を混合させた強力な魔法を放ち、闇の塊を勢いよく吹き飛ばした。
『オカシイオカシイオカシイオカシイ……』
壁や天井に弾け飛んで、集まってはまた弾け飛び……を繰り返し、少しずつ小さくなっていくソレは、リオの強烈な攻撃で今やあの不快な声すらも聞こえなくなってきている。
リオの魔法は、本当にこのまま世界を壊してしまうんじゃないかと思ってしまうような、恐ろしい勢いだった。
しばらく経って完全に沈黙したソレは、リオの放った黒い火の海の中へと消えていく。
闇同士の魔法なんて、お互い不利なはずなのに、あんな恐ろしい闇そのものですら、こんな圧倒的な力で消してしまうなんて……。
それにアレは、リオのことを同族とか仲間と言っていた。
それは一体どういことなのだろうか……。
(リオたちは女神ナターリアの子孫ではないの……?)
リオは闇を消し去ったあと、今度は水と風をかけ合わせた魔法を使い、そこら中に広がった火を消しながら、ついでによくわからない周りの石像や台座をも破壊していった。
明らかに来た時とは様変わりしているというか……。
それ以前に、戻るための通路まで消してしまうのはかなりヤバいのではないだろうか。
「リ、リオ……ちょっとやりすぎ……」
私はそう言って、グイグイとリオの服を引っ張るも、どうやら彼の耳には届いていないようで……。
「あんの黒いのぉ! ソアの首を掴みやがって! クソが! こんな腐れた所なんざ、俺が全て焼き払ってやらぁあ!!」
やばい……リオ、キレすぎて壊れたのでは……。
このままだと本気で遺跡ごと消してしまう勢いだ。
えぇ、私たち生きて帰れるのかしらー!
私はエロいことばかりするリオから距離を取ろうと階段を先に降りていく。
そしてふと足を止めると、いつの間にかこの広い部屋の中心である例の場所に着いていた。
(え、よく見たらここ、あの気持ち悪い台座とか石像があったそばじゃんか……)
壊れかけている悪魔のような形の石像がズラリと並び、真ん中の台座の周りには古く錆びた鎖などがそばに落ちていて、過去にここで何が行われていたのか、現代人の私でも容易に想像できた。
(たぶん生贄とか……)
そんなことを考えるだけで、気分が悪くなってくるのだが。
(うぇ、なんかここ、本気でやだ……)
私はこの気味の悪い場所から離れようとゆっくりと後ろに後退る。
すると、何か黒いものが体の周りを駆けたような気がした。
「リオ、今何か……」
まだ階段の方にいたリオに、私がそう言いかけた時、すでに天井の方で渦巻いていた黒い何かの塊が、すごい速さでいきなりこちらへと飛び込んでくる。
「えっ……」
「な、ソア!」
突然現れた黒く渦巻いた何かの塊から、人とは思えない歪んだ黒い腕が正面に現れると、私の喉元を強く掴んだ。
そして勢いよく引き上げられた私の体は、高く高く宙を舞う。
「あ……う……」
首を掴んでいる腕の先、自身の眼に映っているはずのそこには何者の姿もない。
ただ黒くて、真の暗闇だけが見えている。
今まで色んなところで見た黒いモヤとは全然違う。
それはまるでブラックホールのような……見ているだけで本当に吸い込まれてしまいそうな、とても恐ろしい闇そのものだった。
「う……あ……あ……」
「ソア!」
『オカシイ……最深部に入れるのは同族の力を持った者だけのはずだが……そうか、コイツはナターリアの聖女……』
酷いノイズとともに、威圧的で恐ろしい……人間とは確実にかけ離れた声が、私の頭の中へと響いてくる。
この声は下にいるリオにも聞こえているのだろうか……。
「くそ! ソアを離せよ!」
近くまで走ってきたリオが、風で作った刃を黒い闇へと放つが、端っこだけが一瞬霧散したあと、すぐさま元通りとなった。
私の首元にある黒い腕の力は時間が経つごとに少しずつ増している。
その度に自分の首が締まっていくのが分かった。
「ぐ……う……」
「やめろ!」
『オマエ……オマエは仲間だろう? コイツがコノ世界に来たせいで、お前の魔力は押さえつけられている……全ての元凶はコノ女……』
黒い闇はノイズの酷い不快な声で、何かを言っている。
首を絞められ少しずつ意識が朦朧としてきている私には、今やリオの声も闇から発せられる何かの声も、あまりよく聞こえないのだが……。
『コノ女を殺して、我が力を貸してやろう。時空の狭間に落としてやってもいい。元々コノ世界の人間じゃない。とても危険な女だ、殺せ』
「うるせー!! 俺は俺が死んでもソアを殺すもんか! ソアを殺すくらいなら、この世界ごと全てを壊してやる!!」
そう叫んだリオが放った闇魔法。
闇と闇同士がぶつかって融合し均等が崩れた途端、闇の塊だったものが天井いっぱいに弾け飛んだ。
その反動で私の体は解放され、リオの腕の中へと落ちていく。
「ソア!」
「リ……オ……ゲホッゲホッ……うぅ」
私は強く咳き込むと、荒い呼吸でリオの服をギュッと握った。
「ソア……俺が油断してたせいだ……ごめん……」
リオはそう言って、私の体を優しく抱きしめてくる。
あぁ、やっぱりこの腕の中はとても安心するんだ……。
暖かくて、私の全てを愛してくれる人。
「リオ……大……好き……よ」
「!」
『ナゼナゼナゼナゼ……』
天井に弾けた黒い闇が再形成すると、すぐにこちらへと突っ込んでくるが、リオが闇と火を混合させた強力な魔法を放ち、闇の塊を勢いよく吹き飛ばした。
『オカシイオカシイオカシイオカシイ……』
壁や天井に弾け飛んで、集まってはまた弾け飛び……を繰り返し、少しずつ小さくなっていくソレは、リオの強烈な攻撃で今やあの不快な声すらも聞こえなくなってきている。
リオの魔法は、本当にこのまま世界を壊してしまうんじゃないかと思ってしまうような、恐ろしい勢いだった。
しばらく経って完全に沈黙したソレは、リオの放った黒い火の海の中へと消えていく。
闇同士の魔法なんて、お互い不利なはずなのに、あんな恐ろしい闇そのものですら、こんな圧倒的な力で消してしまうなんて……。
それにアレは、リオのことを同族とか仲間と言っていた。
それは一体どういことなのだろうか……。
(リオたちは女神ナターリアの子孫ではないの……?)
リオは闇を消し去ったあと、今度は水と風をかけ合わせた魔法を使い、そこら中に広がった火を消しながら、ついでによくわからない周りの石像や台座をも破壊していった。
明らかに来た時とは様変わりしているというか……。
それ以前に、戻るための通路まで消してしまうのはかなりヤバいのではないだろうか。
「リ、リオ……ちょっとやりすぎ……」
私はそう言って、グイグイとリオの服を引っ張るも、どうやら彼の耳には届いていないようで……。
「あんの黒いのぉ! ソアの首を掴みやがって! クソが! こんな腐れた所なんざ、俺が全て焼き払ってやらぁあ!!」
やばい……リオ、キレすぎて壊れたのでは……。
このままだと本気で遺跡ごと消してしまう勢いだ。
えぇ、私たち生きて帰れるのかしらー!
10
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました
春浦ディスコ
恋愛
王立学院に勤めていた二十五歳の子爵令嬢のマーサは婚活のために辞職するが、中々相手が見つからない。そんなときに王城から家庭教師の依頼が来て……。見目麗しの第四王子シルヴァンに家庭教師のマーサが陥落されるお話。
お義兄様に一目惚れした!
よーこ
恋愛
クリステルはギレンセン侯爵家の一人娘。
なのに公爵家嫡男との婚約が決まってしまった。
仕方なくギレンセン家では跡継ぎとして養子をとることに。
そうしてクリステルの前に義兄として現れたのがセドリックだった。
クリステルはセドリックに一目惚れ。
けれども婚約者がいるから義兄のことは諦めるしかない。
クリステルは想いを秘めて、次期侯爵となる兄の役に立てるならと、未来の立派な公爵夫人となるべく夫人教育に励むことに。
ところがある日、公爵邸の庭園を侍女と二人で散策していたクリステルは、茂みの奥から男女の声がすることに気付いた。
その茂みにこっそりと近寄り、侍女が止めるのも聞かずに覗いてみたら……
全38話
異世界転生したら悪役令嬢じゃなくイケメン達に囲まれちゃいましたっ!!
杏仁豆腐
恋愛
17歳の女子高生が交通事故で即死。その後女神に天国か地獄か、それとも異世界に転生するかの選択肢を与えられたので、異世界を選択したら……イケメンだらけの世界に来ちゃいました。それも私って悪役令嬢!? いやそれはバッドエンドになるから勘弁してほしいわっ! 逆ハーレム生活をエンジョイしたいのっ!!
※不定期更新で申し訳ないです。順調に進めばアップしていく予定です。設定めちゃめちゃかもしれません……本当に御免なさい。とにかく考え付いたお話を書いていくつもりです。宜しくお願い致します。
※タイトル変更しました。3/31
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる