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なしくずしの同棲

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 なぜか家が全焼した。
 ピンク色の髪を見たので、犯人は転校生ーー飴桃夏夢だろう。
 動機が謎だが、とんでもないことをしてくれた。

「秋也、おはよう」

 おかげで我々田中家は、麻黒さんの豪邸に匿われることになった。
 最新セキュリティやプロのボディガードが配置されているため、安全面において死角はないので安心だが、幾度目にかならない迷惑を麻黒さんに申し訳ない。

「おはよう、陽菜」

「昨日は災難だったわね。あの女のことは探させてはいるのだけど、申し訳ないのだけど、まるで足取りがつかめないわ。制限がかかっているはずだから、限定されているはずなんだけど」

「そんなことまで悪いね。あの子は昔から天才だから、感覚で全部避けれているのかも」

「邪悪な何かを感じたけど、あなたにそうまで言わしめる能力もあるなんて、困ったものね」

 全くだ。
 あの子がその気になれば、警察もプロの追跡も逃れられてもなんら不思議がない気がする。
 俺たちのような普通の人間とは一線を画しているのだ。
 才能という点においては、神と言っても信じられるレベルと言っても過言ではない。
 こちらから転校生に介入するのはあちら側から姿を晒さない限りは難しそうだ。

「転校生が出てくるまではどうにもならないか」

「夏祭りで仕掛けられても面白くないから。それまでに姿を見せてほしいけど。もう期間がないから無理そうね」

 麻黒さんは夏祭りが大好きなので、中止に追い込むような事態になれば、由々しき事態だろう。
 最善策としては夏祭りの最中に現れたとしても、夏祭りが中止にならないように手を打つことだろうか。
 精華の家庭教師がてら、夏祭りの準備の手伝いをさせてもらって、あらかじめ介入できる目を把握しておいてもいいかもしれない。

「麻黒さん、今から精華の家庭教師に行ってくるけど、このまま行っても大丈夫かな」

「まだ安全だっていう確証が持ってないから悪いけれど、こっちで送迎させてもらうわ。あと私もボディガードと一緒にあなたと行動を共にすることにするわ」

「え? 麻黒さん、仕事は大丈夫なの?」

「大丈夫よ。一通りは終わったし、お父様が秋也のところのように危険だからということで、新しいのは受けてないから」

「そうなんだ」

 一瞬、現在精華もかなりあられのない姿を晒しているので、断った方がいいかと考えたが、麻黒さんは醜態を晒しても軽蔑したりしないことを思い出して、考え直した。
 俺が冬夜と摩耶に裏切られた直後であっても、哀れみだったり、見下したりせずに接してくれたのだ。
 今回の精華の場合も言わずもがなだろう。

「じゃあ、一緒に行こうか」


 ーーー

 いつもの精華の家に行くと、常とは違い、精華の偽のお母さんが出迎える形ではなく、精華が出迎える形で出てきた。

「あ、麻黒さん?」
 
 なぜか裸エプロンだったため、麻黒さんがあまりの衝撃にフリーズし、精華は正気に戻った。

「すいません! 着替えてきます!」

 嵐のような勢いで家の中に戻っていくと、ホットパンツにシャツという部屋着スタイルで再び姿を現した。

「私としたことが、修行が足りないわね……」

 ショックから回復すると麻黒さんは反省のような言葉を口走る。
 これに慣れたら逆に危ういので、そのままでいいのだが。
 口に出して言うと精華に追い討ちを掛けそうなので、内心でツッコミを入れつつ、精華の家の中に足を運んでいく。

「体調は大丈夫?」

「ええ、昨日ぐっすり寝れたせいか、体調は万全ですよ」

 精華は机上にそう言うが、玄関に出てきた時に正気でなかった上に、顔色も若干悪い。

「あ、ちょっと待っててくださいね。ジュース買ってきます」

 冷蔵庫の中に客人のようの飲み物がないのを思い出したのか、精華は部屋まで案内するとそう申し出た。

「まだ本調子じゃないでしょ。俺が代わりに買ってくるよ」

 流石に体調も悪いというのに、何かと物騒な街に1人で出て行かせるのも憚られたので、代わりに俺が行くことにした。
 ここら辺は歩き慣れているし、近くのスーパーも知ってるのでそこまで手間ではない。

「じゃあ、すぐ行ってくるから」

 そう2人に言い置くと、外に出た。
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