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偽りの富

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 目が覚めると私は地面に横たわっていた。上体を起こし、周囲を見回す。ひまわりが咲き誇る花畑を裂くように、一本の道がどこまでも続き、その奥には青空がどこまでも広がっていた。ここは一体どこだろう。立ち上がると、身体がずっしりと重く感じた。手元を見ると、大きな宝石があしらわれた指輪、ブレスレットが付けられていることに気付く。黒色のドレスを着ており、宝石があちこち散りばめられている。まるで夜空に浮かぶ星のように美しい。足元には宝石を使ったアンクレット、黒く艶のあるヒール。とてもじゃないが自分から手を出そうとは思わない代物ばかりだ。一体どうしてこんな服装で地面に寝ていたのだろう。
 私はその場に立ち尽くしてしまう。どこに向かえばいいか、分からない。道はどこまでも続いているような気がした。咲き誇るひまわりは私など目もくれず太陽の方を向いている。私はひとまず、ひまわりと同じように太陽の方を目指して歩き出した。
 どれだけ歩いただろうか。太陽の光がジリジリと私を照りつける。汗が首筋を流れた。暫く歩いていると、道の先に、何かがあるのを見つけた。私は急いで向かう。何でもいいからこの場所の手がかりが欲しかったのだ。藁を掴むような心地で、ようやくその場所に辿り着く。道の真ん中に鎮座していたのは石像だった。美しい少女が何かを求めて手を伸ばしているように見えた。私はその美しさに、思わず滑らかな岩肌をなぞった。すると、石像が光り輝き、少女の声が聞こえた。

「助けてくれてありがとう。次はあなたの番よ」

 私の番?それってどういう意味?声をかけようとして、私は強い違和感を覚えた。足が動かないのだ。確かめるように下に目を移すと、足が石のように固まっていた。

「え、な、何で?!どうしてこんなことに!?」

 慌てふためく私に、石像の少女は微笑む。少女はすっかり人間の姿へと変わっていた。

「あなたは生前、お金欲しさに詐欺を繰り返しましたね。偽りの富を得たあなたは決して許されるものではありません。この場所で、永遠に懺悔するのです」

 私は生前の記憶を取り戻した。私はお金が欲しかった。富豪になりたかった。だから詐欺に手を出して、巨額の富を得た。私はその金を元手に、株を始め、その金で働くことなく生活を送ることができた。夫や家族をつくると過去のことがバレるのではないかと思い、独り身を貫いた。同じ理由で友人もいなかったが、今はインターネットがある。秘密を知られることなく親しい関係になれる。私はそれで充分だった。最期は誰かに看取られることなく生涯を終えたが、後悔はなかった。人を騙したことにも罪悪感はない。自分が生きるために他人を利用するのは仕方のないことだと思った。そうか。ここは地獄だったのか。よく見ると、道の先には、石像がいくつも置いてあった。私のその一つになるのだろうか。そんなのは御免だった。私は少女に助けを乞うた。

「い、嫌だ!お願いです!何でもしますから、どうか助けて……!」
「あなたはたくさんの人々を騙し、助けようともしなかった。自分の行いが返ってきただけのこと」
「そんな……!」

 石化が進み、腰から下はもう動かない。私は必死に少女に手を伸ばした。彼女は冷えた眼差しをこちらに向け、何も言わずに去って行った。……皮肉にも、その姿は私が騙した人々に向けたものと酷似していた。

Fin.
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