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ゴブリンの誤算

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 人里離れた森には、人間を襲うゴブリンの棲み処がある。ゴブリンは人間の中でも女を好み、捕らえると性欲処理の穴として酷使してきた。そのため、人間は森へ入るのを禁じた。だが、今度は人間を襲うために時折人里まで下りてくるゴブリンに手を焼くようになった。彼らは知能が低いが、集団で襲撃するため、人間にとって厄介な存在であった。
 森に住むゴブリンの群れの中に、ブリンという一体のゴブリンがいた。ブリンには兄が何人もいる。彼らから『武勇伝』をいくつも聞いていた。ブリンは自分も兄達のようにヒトを襲い、オンナを犯し、欲のままに生きたいと願っていた。だが、ブリンは彼らから馬鹿にされてきた。ブリンは他のゴブリンと比べて非力であり、足も遅く、ヒトを狩った経験がなかったためだ。馬鹿にされようと、ブリンがめげることはない。自分の力はこんなものではない、もっとずっとオレは強いんだ。ブリンには根拠のない自信があった。成体になったらオレは最強になるのだと、信じて疑わなかったのだ。
 ついにブリンは成体となった。意気揚々とブリンは森の中を歩いて回る。森には、稀にこどもが迷い込むことがあったからだ。こどもの肉は柔らかく、穴も狭くて最高なのだと兄が言っていた。狩りの相手としても申し分ない。ブリンは自分がこどもの肉を頂く様子を想像して、舌なめずりをした。
 森を歩いていると、自分ではない足音が聞こえた。ブリンは慌てて茂みに身を隠す。茂みの隙間から様子を伺うと、前方に人影が見えた。遠くからでも分かる長く美しい金髪が風と踊っている。身なりも綺麗なようで、ブリンは思ったよりも上物を見つけたことに舞い上がっていた。このまま女が近付くまで待って、至近距離から体当たりしよう。突然のことで油断して、驚いている隙に服を剥いで、犯して、犯し尽くして、満足したら食べてやろう。ブリンは唾を飲み込み、彼女が近付くのを今か今かと待った。
 彼女は何かを探すように、キョロキョロと辺りを見回しながら歩を進める。足音がどんどんと大きくなる。今だ、とブリンは彼女に体当たりをした。

「わっ」

 ブリンの思惑通り、彼女はバランスを崩し、地面に頭をぶつけた。雑草がクッションとなり、外傷を与えることはできなかったが、ブリンは彼女に馬乗りになることが出来た。

「ケケケ!やった!やったぞ!」

 ブリンは堪え切れない愉悦を露にする。ブリンは勝利を確信しながら彼女を見下ろした。が、様子がおかしい。彼女は困惑しているものの、恐怖を感じていないのだ。よくよく観察してみると、耳はブリンと同じように尖っており、ヒトではないことに気が付いた。酷く整った容姿を見るに、恐らくエルフなのだろう。失敗した、と固まるブリンに彼女、もといエルフは口を開けた。

「驚いたなあ。こんな熱烈な求愛、生まれて初めてだ」
「は?」

 エルフは頬を紅潮させて、おかしなことを口にした。キュウアイ?オレは狩りをしているのであって、キュウアイはしていない。固まったままのブリンを見上げながら、エルフは尋ねた。

「私はルフ。君の名前は?」
「な、名前だと?……ブリン、だ」
「ブリン……。ああ、可愛い名前だね」
「かわ……ッ?!」
「ふふ、嬉しいなあ。ようやく伴侶が見つかった」

 自分に馬乗りされているのにも関わらず、嬉しそうに笑うルフは理解不能であり、ブリンはゾッとした。ハンリョなど、難しい言葉は分からないが、とにかく怖い。ブリンは逃亡を図るために腰を上げようとする。しかし、ルフの右手がブリンの後頭部を掴み、左手がブリンの腰を抱いた。華奢だと思っていた身体は筋肉質で、腰を上げようにもびくともしない。メスのエルフだと思っていたが、どうやらオスのエルフだったようで、ブリンは血の気が下がるのを感じた。

「これで終わりじゃないよね?それじゃあ私、寂しいよ」

 ルフは後頭部を掴んでいた右手で、ブリンの頭を引き寄せる。ブリンが胸元を手で押して抵抗するも、赤子の手をひねるように、いとも簡単にルフはブリンの唇を奪っていた。ぬるりと入り込んだ舌が、ブリンの舌を絡めて引きずり出す。

「んんッ、ん、んぅう!」

 ちゅ、じゅる、ぐちゅ。
 水音と共にブリンの声が漏れる。空気ごと奪い去るような口づけに、ブリンは頭がくらくらとして、満足な抵抗が取れないでいた。混乱の最中、至近距離でルフと目が合う。深碧色の瞳は蕩けてしまいそうなほど熱を孕んでいた。ブリンは背筋が粟立つのと同時に、下腹部がきゅう、と疼いた。ブリンには初めての経験だった。訳が分からず首を振ると、ようやく深い口付けから解放される。

「ッは、はあ、はあ……」
「はあ、はあ……ふふ。初めてキス、しちゃったね」

 どちらのものか分からない唾液が糸を引く。肩で息をするブリンの深緑色の髪を、ルフは嬉しそうに撫でる。ブリンが上体を起こそうとしても、腰は未だガッシリと抱かれていてままならない。

「ブリン、可愛い。可愛すぎて私、我慢できなくなりそう」

 ブリンの臀部の割れ目に、何かが押し付けられる。熱の籠った、熱く固い棒状の何か。ブリンは兄達から女の犯し方を教えてもらっておらず、ペニスを知らなかった。ルフが腰を上下に緩く動かす度、その何か――服越しに勃起したペニス――がブリンの割れ目に沿うように動く。ゾクゾクと、未知の快感がブリンを襲う。

「ッ?!な、なに、何だ、これ……?!」
「君のナカに入りたくて仕方ないよ。ね、入れてもいいよね?」

 性に疎いブリンでも、ルフの言葉が何を意味しているのか理解できた。このエルフは自分と交尾をしようとしているのだ、と。ブリンは顔を横に振り、抵抗しようと必死に声を上げた。

「む、ムリ!ムリだ!オス同士じゃできないだろ!!」
「……え?」

 ブリンの言葉に、ルフは不思議そうな声を出して、まじまじとブリンを見つめた。

「ブリン、メスだよね?」
「は?」

 ルフの言葉に、今度はブリンが呆気に取られた。ブリンは両親からオスとして育てられた。兄達とも分け隔てなく育てられており、有り得ない。そんなはずがない、と言うために口を開けたブリンに、ルフは再びそそり立つ肉棒を擦りつけた。

「ギャッ!や、やめろ!」
「メスだよ。ブリンは」
「だから、オレは……!」
「ここが、子作りする場所」
「ひ、やあぁっ!」

 ルフは服越しに、ブリンの膣口にペニスを押し当てた。

「それからここ。排泄するところ。穴が二つあるね。分かる?」
「ん、うぅ……ッ」

 ルフが右手で布越しに肛門を優しく撫でる。もどかしささえ感じるような僅かな快感に身を震わせながら、ブリンは必死に頭を巡らせる。両親の子供は自分含めてオスだけ。オス以外は認めなかった。両親には何度も言われた。お前はメスではなくオスなのだと……。自分がメスだと気付いた瞬間に、ブリンは死にたくなった。自分はメスを犯す側だと、上だと、信じて疑わなかったのだ。それなのに、今更自分が下だと?認めることができなかった。

「ち、違う!違う違う違う!離せ!離せえええ!!!」

 ブリンはありったけの力を込めて身を捩った。だが、人間のこどもほどの大きさしかないブリンが、人間の大人よりも大きく屈強なルフに敵う筈がなかった。ブリンは、ルフに敵わないと分かっていても抵抗を止めることはできなかった。彼女は現実を認めることができず、暴れることで現実逃避をしていたのだ。

「求愛しておいて、今更逃げるなんて酷いよ」
「オレは狩りをしていただけだ!キュウアイなんて、してない!離せ!!オマエなんて殺してやる!!!」

 悲しそうに眉を下げたルフは、ぎゅうとブリンを抱きしめた。抱きしめる力の強さに、ブリンは顔を歪めた。

「は、離せ……!」

 ルフはブリンの小さな身体を、体温を確かめる。
 突如として自分の胸に飛び込んできた、幼ささえ感じる小さなメスのゴブリン。彼女を一目見て、心臓が鷲掴みされたような心地になった。早い話が一目惚れだったのだ。勝気で命知らずな彼女の勝ち誇った顔が、脳裏に焼き付いて離れない。自分をオスだと思っていた愚かさすらも愛おしくて。この胸の高鳴りは、興奮は、ブリンだから感じるものなのだろう。やはり彼女は、自分の伴侶なのだ。そうに違いない。
 ルフは口角を上げる。深碧色の瞳はギラギラと妖しく光り、獲物を捕らえようとする捕食者の眼差しであった。

「……ううん。君は、私の伴侶だ。やっと見つけた私だけの伴侶なんだ。逃がさないよ」
「やだ!いやだ!!やめろ!!!」

 ルフは右手でブリンが身に付けていた布をはぎ取る。ゴブリンは襲った人間の服を奪い、テキトウに身に纏うことで性器を隠していた。長年使い古されてボロボロになっていたお粗末な防具を奪われ晒されたブリンの秘部は涎を垂らし、ひくひくと物欲しそうに震えている。ルフはブリンを抱きしめたまま上体を起こし、彼女を地面に寝かせて微笑んだ。

「慣らしてあげられなくてごめんね」
「ひッ!や、やめろ……!」

 ルフはブリンの細く短い脚を大きく開かせる。濡れぼそった秘部に自身の肉棒を宛がうと、ゆっくりと埋めていった。小柄なゴブリンには、屈強な身体を持つルフの性器は大きく、膣内を無理矢理押し広げてゆく音が痛々しく響く。痛みに顔を歪めたブリンに、ルフは再び口付けをした。

「んぅ、う、むうぅ!ふぁ、う……ッ!」

 口付けによって意識を逸らしたルフは、一気に性器を蜜壺に押し入れた。

「ん゛んんんん!!!い゛ッ、い゛たい……ッ!」
「きつ……はあ、ブリン、ごめんね。痛いよね?でも私、今がとっても幸せなんだ……」

 うっとりと恍惚とした顔で、ルフは息を吐く。熱に浮かされたように、ルフはブリンの耳元で囁く。

「好き、好きだよブリン。愛してる。ゆっくり動くからね」
「ッ、く、ううぅ……!」

 ルフはブリンを労わるように、身体中に唇を落としていく。すき、すき、と声を漏らしながら。律動の度に、血液が混じった愛液が零れ、地面を湿らせる。ブリンは痛みと僅かな快感に苛まれながら、唇を噛んで、声を抑えようとした。

「ふ、うう……ん、ひやあッ!」

 だが、ルフに乳首やクリトリスを撫でられて、成すすべなく嬌声を上げてしまう。

「ッ、やあ、そこ、やめ……あ゛ぁあッ!」
「どこが気持ちいい?乳首?お股にあるここ?どっちもかな」

 ルフは嬉しそうに、乳首とクリトリスは摘まんで扱く。ビクビクッとブリンの身体が震え、膣内がきゅうと締め上げる。

「ふふ、ナカきゅうきゅうしてる。もう我慢しなくていいよね?私のこと、受け入れて……♡」

 ぐちゅ♡ずちゅ♡ばちゅんっ♡
 ルフの容赦のない律動に、ブリンは身体をのけぞらせた。チカチカと火花が散る。快感が身体中を駆け巡り、ブリンは無意識のうちに、縋るように手を伸ばす。ルフはその手を自らの手で絡めて、地面に縫い付けた。

「ん゛ぎッ、あ゛ぁあ゛!は、あ゛ぁ、ん゛う゛ぅ!」
「っは、ああ……愛してる、ブリン、愛してる……ッ♡」
「や゛ぁあ!ん゛ぐ、う、あ゛ッ、――――ッ♡」

 ルフがブリンの膣内に精を解き放つ。ゆっくりとペニスを引くと、ごぽりと吐き出された精子が血液と混じって秘部から零れる。未だビクビクと身体を震わせるブリンに、ルフは目を細める。

「ブリン、とっても可愛い。またシたくなっちゃった……♡」

 ブリンは真っ青な顔で必死に首を振った。身体のあちこちが痛くて、とてもではないが死んでしまう。ブリンは本気でそう思った。ルフはそんなブリンの様子に心底残念そうな顔で、彼女を横抱きにした。

「!?な、何をする?!」
「え?何って、家に帰らなくちゃ」
「オレの家は、あっちだ!オレは一人で帰る!」

 じたばたと暴れるブリンに、ルフは首を傾げる。

「ブリンの家は、こっちだよ。ちょっと遠いところにあるけど、気に入ってくれると思う。私が伴侶のために用意した家なんだ」
「だ、だから!オレはハンリョじゃないって言ってるだろ!」
「あれ、忘れちゃったかな?私は言ったよね。逃がさないって」

 深碧色の瞳に闇が混じる。ヒュ、とブリンの喉が絞まる。ルフの筋肉質な身体に包まれて、ブリンはやはり身動きが取れない。逃げ出すことなど出来やしないのだ。
 俯いたブリンに、ルフは笑いかける。

「大丈夫。たくさんたくさん愛してあげるからね」

 ルフは心底嬉しそうな顔で歩き出した。

つづく
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