短編集

柊原 ゆず

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ガールズトーク

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 今日は久々に高校時代の友人と集まることになった。就職をしてからしばらく会っていないので皆どうしているのか話を聞くのが楽しみだ。わくわくしながら指定された店に向かうと、既に皆が揃っていて私が最後だったようだ。

「あ!潮子いたこじゃん!久しぶり!」

 花梨が私にいち早く気付いて、手を振る。私も手を振り返し、近付く。学生の頃とあまり変わらない面々にどこか安心する。私達は店のドアを開ける。ドアに設置されたベルが、チリン、と小気味いい音を立てた。中に入ると、空調が効いており、涼しい風が私達を迎えた。内装はお洒落で、ジャズが流れるセンスの良い喫茶店だった。七人という大所帯の私達は広めの席に案内された。メニューを眺めて、店員さんに各々注文をしてようやく一息つく。

「それにしても、皆変わってないね」

 花梨が嬉しそうに言う。

「確かに、皆あんまり変わってないね」

 そう言うのは中国人の梦蝶モンディエ

「ねえねえ、彼氏できた?」

 学生時代から恋バナが好きだったアメリカ人のメアリー。

「いなーい。誰かいい人紹介してよー」
「私もいない。かわいい彼女とデートしたい……」

 フランス人のイリスの言葉に同調するのはロシア人で同性愛者のフェオドーラ。

「もー、恋愛ではしゃぎすぎだよ」

 呆れたように言うのはアフリカ人でアセクシュアルのアミーナ。

「そう言って、話を聞くのは好きなくせに」
「……そりゃあ、まあ。皆が楽しそうだからね」

 メアリーが茶化すと、アミーナはそう呟く。

「ねえねえ、潮子はどうなの?」
「潮子って昔から浮いた話聞かないし、気になる!」
「私も!」

 皆が口々に言い、視線が自分に集中する。私は八本のうち一本の腕で頬をかく。

「私奥手なんだよね……」
「宇宙は広いんだよ?気になった時にアタックしないと次いつ会えるか分からないんだから積極的にいかなきゃ!」
「分かってはいるんだけどね……」

 わいわいと話をしていると、店員がやって来た。注文したものができたのだろう。コーヒーや紅茶、オレンジジュース、お茶、そして私には鉄を砕いてコーヒーと混ぜた鉄コーヒーが机に置かれた。
 今は西暦3131年。500年ほど前から地球は、宇宙からやって来た宇宙人と共生を始めた。共生を始めた当初は差別や偏見があったが、今ではすっかり宇宙人も地球に生きる者の一人になった。こうして今笑い合えるのも私の祖先のおかげだろう。
 私達は話題を変えながら話を続ける。やっぱり友達と話すのは楽しい。メアリーの話に思わず笑いながら、私は鉄コーヒーを口に入れた。

Fin.
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