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異世界と少年と私
ヨハン
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「エマ、その目はなんだ? また失礼なことを考えているだろう」
「い、いえ。ただ、大変なのだなと思い……毎回毎回」
ちらりと隣にいるロワーズの弟を見ながら言う。
ロワーズとは顔の系統は違うもののオリーブ色の髪の色は同じだ。
ロワーズがため息交じりに苦笑いをすると弟を紹介する。
「弟のヨハンだ。ヨハン、こちらは客人のエマ嬢、シオン、それから――」
「マーク君です」
「そうだ。マークだ。二人は私の子ではない。お前の思っているような関係ではない」
ヨハンからはこちらを値踏みするような視線が刺さる。
「ふーん。それなら、なぜこっそりと食事をしているのでしょうか? 『エマ嬢』と」
言い方に含みがあるだけではなく、視線が敵意剥き出しなのはどうしてだろうか? 兄を守ろうとするにしても過剰のような気がする。私たちは先ほど会ったばかりだ。
これは嫉妬? 心配しなくてもロワーズを取ったりはしない。
「こっそりなどしていない。旅で疲れた故、顔を出さなかっただけだ。ヨハンにも到着の知らせは出していたぞ」
「そういえば何か連絡があったかもしれない。僕、拷――尋問で忙しかったのですよ」
え、この人……拷問って言いかけた?
ヨハンと目が合いギョッとする。こっち見ないで目が本気で怖い。
ロワーズが咳払いをしながら言う。
「ヨハン、その話はまた後ほどだ。まだ食事を終えていない。客人に失礼だ」
「……兄上、それなら、僕も食後のお茶を同席してもよろしいでしょうか?」
そう聞きつつも勝手に座り出したヨハンに呆れているロワーズだったけれど。結局は五人で食後のお茶をすることになった。
ハインツが全員の紅茶の準備をする。紅茶用のレモンジャムだと紹介された小瓶からは甘酸っぱい香りが漂う。これは砂糖を使っているのかな? 商人交渉の情報収集で調べてみる。
蜂蜜レモンジャム――イモネ産レモン、イモネ産蜂蜜
良品
価格相場:金貨二枚
き、金貨二枚……。この大きさで結構な値段だ。小さじ一杯でいくらなのだろうか? 恐ろしい、異世界甘味の値段。
レモンジャムを味見。ああ、これは凄い。ほのかに甘く上品なレモンの香りが口の中に広がる。
まじまじとレモンのジャムを観察しているとロワーズがテーブルを人差し指で軽く叩く。
「エマ、聞いているか?」
「あ、すみません。レモンジャムが美味しく、そちらに気が取られていました」
「ジャムを気に入ったのなら部屋に届けさせる。それよりヨハンがそなたらに塔の案内をしたいそうだが、いかがだろうか?」
え、絶対に嫌です。ヨハンは穏やかな顔をしているけれど、こちらを見る目の奥が笑っていない。ロワーズは弟フィルターでも掛かっているのか、この腹黒な感じがあまり見えていないらしい。
どうにかして断ろう。誰かが案内しないといけないのならハインツかリリアに頼みたい。
「ヨハン様も忙しいでしょうから、私たちは大丈夫ですよ。お仕事のお邪魔になりたくないです」
「僕は明日なら大丈夫だよ。執務も休めばいいしね。後、名前はヨハンと呼んでくれたら嬉しいな」
にっこりと笑いながら答えるヨハン。
いやいや、ほら先ほど言っていたお仕事の拷問? があるでしょう? なんででこんなに案内に乗り気なの? 怖いんだけど。
ヨハンを鑑定する。
ヨハン・フォン・クライスト
年齢:二十五
種族:人族
職業:黒騎士団文官。北の砦代官代理
状態:椎間板ヘルニア
魔力4 体力3
スキル: 言語、 長剣、短剣、 索敵、統率、 戦闘、快速、 殺気、防御、毒耐性、房中術、算術、精神耐性、社交、作法、ダンス、尋問、拷問
魔法属性:水・雷
魔法:生活魔法、水魔法、 雷魔法:
称号:尋問魔
尋問とか拷問とか怖いスキルが生えているのが怖い。称号も尋問魔って何? 関わりたくないのだけど……。
「い、いえ。ただ、大変なのだなと思い……毎回毎回」
ちらりと隣にいるロワーズの弟を見ながら言う。
ロワーズとは顔の系統は違うもののオリーブ色の髪の色は同じだ。
ロワーズがため息交じりに苦笑いをすると弟を紹介する。
「弟のヨハンだ。ヨハン、こちらは客人のエマ嬢、シオン、それから――」
「マーク君です」
「そうだ。マークだ。二人は私の子ではない。お前の思っているような関係ではない」
ヨハンからはこちらを値踏みするような視線が刺さる。
「ふーん。それなら、なぜこっそりと食事をしているのでしょうか? 『エマ嬢』と」
言い方に含みがあるだけではなく、視線が敵意剥き出しなのはどうしてだろうか? 兄を守ろうとするにしても過剰のような気がする。私たちは先ほど会ったばかりだ。
これは嫉妬? 心配しなくてもロワーズを取ったりはしない。
「こっそりなどしていない。旅で疲れた故、顔を出さなかっただけだ。ヨハンにも到着の知らせは出していたぞ」
「そういえば何か連絡があったかもしれない。僕、拷――尋問で忙しかったのですよ」
え、この人……拷問って言いかけた?
ヨハンと目が合いギョッとする。こっち見ないで目が本気で怖い。
ロワーズが咳払いをしながら言う。
「ヨハン、その話はまた後ほどだ。まだ食事を終えていない。客人に失礼だ」
「……兄上、それなら、僕も食後のお茶を同席してもよろしいでしょうか?」
そう聞きつつも勝手に座り出したヨハンに呆れているロワーズだったけれど。結局は五人で食後のお茶をすることになった。
ハインツが全員の紅茶の準備をする。紅茶用のレモンジャムだと紹介された小瓶からは甘酸っぱい香りが漂う。これは砂糖を使っているのかな? 商人交渉の情報収集で調べてみる。
蜂蜜レモンジャム――イモネ産レモン、イモネ産蜂蜜
良品
価格相場:金貨二枚
き、金貨二枚……。この大きさで結構な値段だ。小さじ一杯でいくらなのだろうか? 恐ろしい、異世界甘味の値段。
レモンジャムを味見。ああ、これは凄い。ほのかに甘く上品なレモンの香りが口の中に広がる。
まじまじとレモンのジャムを観察しているとロワーズがテーブルを人差し指で軽く叩く。
「エマ、聞いているか?」
「あ、すみません。レモンジャムが美味しく、そちらに気が取られていました」
「ジャムを気に入ったのなら部屋に届けさせる。それよりヨハンがそなたらに塔の案内をしたいそうだが、いかがだろうか?」
え、絶対に嫌です。ヨハンは穏やかな顔をしているけれど、こちらを見る目の奥が笑っていない。ロワーズは弟フィルターでも掛かっているのか、この腹黒な感じがあまり見えていないらしい。
どうにかして断ろう。誰かが案内しないといけないのならハインツかリリアに頼みたい。
「ヨハン様も忙しいでしょうから、私たちは大丈夫ですよ。お仕事のお邪魔になりたくないです」
「僕は明日なら大丈夫だよ。執務も休めばいいしね。後、名前はヨハンと呼んでくれたら嬉しいな」
にっこりと笑いながら答えるヨハン。
いやいや、ほら先ほど言っていたお仕事の拷問? があるでしょう? なんででこんなに案内に乗り気なの? 怖いんだけど。
ヨハンを鑑定する。
ヨハン・フォン・クライスト
年齢:二十五
種族:人族
職業:黒騎士団文官。北の砦代官代理
状態:椎間板ヘルニア
魔力4 体力3
スキル: 言語、 長剣、短剣、 索敵、統率、 戦闘、快速、 殺気、防御、毒耐性、房中術、算術、精神耐性、社交、作法、ダンス、尋問、拷問
魔法属性:水・雷
魔法:生活魔法、水魔法、 雷魔法:
称号:尋問魔
尋問とか拷問とか怖いスキルが生えているのが怖い。称号も尋問魔って何? 関わりたくないのだけど……。
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