9 / 84
異世界と少年と私
急に現れた銀髪の二人 後編(レズリー視点)
しおりを挟む
振り向けば、座り込んだ婦人と呼ぶにはまだ若い不機嫌な銀髪の美しい少女がいた。人の気配などなかったにいつの間に後ろを取られた?
「なっ! もう一匹いたのか!」
団長の発言に少女が明らかに苛立ったのが分かった。少女に剣を向ける団長を諫めよう動いた瞬間、少女の衣服が目の前まで落ち、瑞々しい美脚が露わになった。
「あぁ、とても綺麗な脚だ」
思わずそう呟いてしまう。団長は破廉恥だと顔を真っ赤にして叫んでいるが、少女足に釘付けなのは分かっている。
「早く服を着ろ! 痴女めが!」
団長の大声に少女がこちらを睨みタジタジとその身体と合わない下服を穿こうとする度に太ももまで剥き出しになって非常に目の毒だ。自分のためにも目を逸らす。
下服をどうにか穿いた少女。助かった……。
「魔の者めが!」
団長の大声と共に忘れていた本来の目的の魔の者と思われる少年に剣を向ければ、先ほどまで後ろにいたはずの少女が目の前にいた。双子かと後ろを振り返り堪忍するが……そこには誰もいなかった。俺にも団長にも分からない速さで移動したのか? どうなっている?
魔の者と俺たちの間に入り、さらに不機嫌に眉間に皺をよせる少女。
「むっ。痴女。魔の者を庇い立てするのなら、痴女ともども始末するぞ」
おいおい。待て待て! 団長を止め、少女に聞こえないよう耳打ちする。
「一般人の少女を巻き込むなんて団長らしくないぞ」
「あの動きのどこが一般人だ。レズリーも見たであろう」
「確かに、だが……」
「はぁ……分かった。痴女に事情を説明して魔の者を討つぞ」
今にも逃げだしそうな勢いの少女に手を上げ警戒を薄めさせる。団長が痴女と連呼するので危うく俺も痴女と失言しそうになったが、少女の庇う子供が魔の者であると同時に危険である事を伝えたが、逆に少女はなぜ子供が魔の者なのかと尋ねてきた。 魔の者を知らないとはどういうことだ? 子供でも魔の者はお伽話で周知されている。
(別の国の者か? いやそれでも魔の者を知らないはずがない)
団長も同じ疑問で少女を詰めると、いきなり焦ったように被っていたフードを取った。
「銀髪……」
この国で銀髪はほとんど見かけない。いや、大陸中を探してもそんなに人数はいないだろう。あれは、相当量の魔力を使える者にしか現れない色だ。二人とも見事な銀髪に美しい菫色の目……これはなにか事情がありそうだ。
少年を魔の者と呼ぶ度に俺たちに警戒心を高める少女に身分証でもある騎士団のエンブレムを見せる。これなら、我々が怪しい者でないと理解してくれるはずだ。
「これはなんですか?」
「へ?」
は? 国は違えど、騎士の持つエンブレムは共通認識のはずだ。知らない訳がない。騎士の証明を見せれば、貴族だって表面上でも礼節を持って接してくる。だが、エンブレムを見ても少女の俺たちに向ける胡散臭い表情は演技ではないと思う。
「騎士団のエンブレムを知らないとは言わせないぞ。他国でもそれは変わらないはずだ」
団長が苛立ちながら魔法を纏った剣を向ければ、これでもかというほどに少女の目が見開き魔法が何かと問う。この反応は、まさか魔法を知らないのか?
「ま、魔法は知っています。ただ、実際に見たのは初めてだったので驚いただけです」
そう強がる少女を横目に再び団長と声を潜める。
「どう思う?」
「手入れのされた髪や肌。水仕事をしたこともない手。言葉遣いも丁寧だ。平民だったとしても魔法も知らない様子、相当箱入りかと……」
「レズリー、魔の者を引き渡すよう説得できそうか?」
「説得はするが、そもそもあの少年が魔の者だという自信がなくなってきた。あの強大な力を持つ魔の者があのように怯え足にしがみ付くなど考えられない」
「演技かもしれないが……確かに私も違和感は拭えない。だが、確認できるまで警戒は解くな。頼んだぞ」
どうにか少年を引き渡してもらおうと少女を説特しようと魔の者の仮面について説明すれば、少女がそれは仮面ではなく『ますく』だと言い張った。ますく……とは一体なんだ?
「それならば、その『ますく』とやらを外し口の中を見せよ」
威圧的に団長が命令すれば、少女の眉間の皺がより深くなり侮蔑の表情に変わる。俺たちは彼女に変態のように映っているのだろうか……。
団長が冷静に少女の誤解を解く。やはり、俺たちが卑猥な要求をしてたと勘違いしていたようだ。少女が優しい声で魔の者にますくを取るよう語りかける。ゆっくりとますくが取り外されると目を見張るような無垢な少年が現れた。怯えながら見せてくれた口の中には、牙も刺青もなかった。安堵のため息を漏らし、団長と視線を交わす。
魔の者でないことは理解したが、それなら二人はなぜ軽装でこのような場所にいるのかという疑問が出てくる。少年は下着姿。少女も体型に合っていない装い。このギランの森の深い所は冒険者でもBランク以上の者しか訪れないエリアだ。
少女は自分をエマと自己紹介、少年はシオンというようだ。エマは気がついたらこの場所にいたと言う。人攫いか? いや何かの魔法か? あの閃光は魔法であろう。
二人をここに置いて行く訳にもいかない。詳しい話は野営地で尋ねれば良いだろう。
「ここにいても埒が明かない。日没までには野営地に到着したい。二人にはこのまま同行してもらう。拒否権はない」
団長はまた女性限定の変な態度でエマに命令するが、野営地まで同行することに承諾してもらう。移動中シオンはエマの胸の中ですっかり眠っている。羨ましい。
驚いたのが、移動中のエマの体力だ。騎士や冒険者なら鍛えているので苦ではないが、エマはそんな特別な訓練を受けてるような様子はない。おまけに二人とも生活魔法を初めて見たと驚いていた。生活魔法は平民もほとんど使用できる魔法だ。それを見たことないとは……本当にどこから来たのだろうか?
「レズリー、湯が沸いている」
団長の声で顔を上げると、エマがこちらを不安そうに見ていた。また思考に耽るクセが出ていたか。
「なっ! もう一匹いたのか!」
団長の発言に少女が明らかに苛立ったのが分かった。少女に剣を向ける団長を諫めよう動いた瞬間、少女の衣服が目の前まで落ち、瑞々しい美脚が露わになった。
「あぁ、とても綺麗な脚だ」
思わずそう呟いてしまう。団長は破廉恥だと顔を真っ赤にして叫んでいるが、少女足に釘付けなのは分かっている。
「早く服を着ろ! 痴女めが!」
団長の大声に少女がこちらを睨みタジタジとその身体と合わない下服を穿こうとする度に太ももまで剥き出しになって非常に目の毒だ。自分のためにも目を逸らす。
下服をどうにか穿いた少女。助かった……。
「魔の者めが!」
団長の大声と共に忘れていた本来の目的の魔の者と思われる少年に剣を向ければ、先ほどまで後ろにいたはずの少女が目の前にいた。双子かと後ろを振り返り堪忍するが……そこには誰もいなかった。俺にも団長にも分からない速さで移動したのか? どうなっている?
魔の者と俺たちの間に入り、さらに不機嫌に眉間に皺をよせる少女。
「むっ。痴女。魔の者を庇い立てするのなら、痴女ともども始末するぞ」
おいおい。待て待て! 団長を止め、少女に聞こえないよう耳打ちする。
「一般人の少女を巻き込むなんて団長らしくないぞ」
「あの動きのどこが一般人だ。レズリーも見たであろう」
「確かに、だが……」
「はぁ……分かった。痴女に事情を説明して魔の者を討つぞ」
今にも逃げだしそうな勢いの少女に手を上げ警戒を薄めさせる。団長が痴女と連呼するので危うく俺も痴女と失言しそうになったが、少女の庇う子供が魔の者であると同時に危険である事を伝えたが、逆に少女はなぜ子供が魔の者なのかと尋ねてきた。 魔の者を知らないとはどういうことだ? 子供でも魔の者はお伽話で周知されている。
(別の国の者か? いやそれでも魔の者を知らないはずがない)
団長も同じ疑問で少女を詰めると、いきなり焦ったように被っていたフードを取った。
「銀髪……」
この国で銀髪はほとんど見かけない。いや、大陸中を探してもそんなに人数はいないだろう。あれは、相当量の魔力を使える者にしか現れない色だ。二人とも見事な銀髪に美しい菫色の目……これはなにか事情がありそうだ。
少年を魔の者と呼ぶ度に俺たちに警戒心を高める少女に身分証でもある騎士団のエンブレムを見せる。これなら、我々が怪しい者でないと理解してくれるはずだ。
「これはなんですか?」
「へ?」
は? 国は違えど、騎士の持つエンブレムは共通認識のはずだ。知らない訳がない。騎士の証明を見せれば、貴族だって表面上でも礼節を持って接してくる。だが、エンブレムを見ても少女の俺たちに向ける胡散臭い表情は演技ではないと思う。
「騎士団のエンブレムを知らないとは言わせないぞ。他国でもそれは変わらないはずだ」
団長が苛立ちながら魔法を纏った剣を向ければ、これでもかというほどに少女の目が見開き魔法が何かと問う。この反応は、まさか魔法を知らないのか?
「ま、魔法は知っています。ただ、実際に見たのは初めてだったので驚いただけです」
そう強がる少女を横目に再び団長と声を潜める。
「どう思う?」
「手入れのされた髪や肌。水仕事をしたこともない手。言葉遣いも丁寧だ。平民だったとしても魔法も知らない様子、相当箱入りかと……」
「レズリー、魔の者を引き渡すよう説得できそうか?」
「説得はするが、そもそもあの少年が魔の者だという自信がなくなってきた。あの強大な力を持つ魔の者があのように怯え足にしがみ付くなど考えられない」
「演技かもしれないが……確かに私も違和感は拭えない。だが、確認できるまで警戒は解くな。頼んだぞ」
どうにか少年を引き渡してもらおうと少女を説特しようと魔の者の仮面について説明すれば、少女がそれは仮面ではなく『ますく』だと言い張った。ますく……とは一体なんだ?
「それならば、その『ますく』とやらを外し口の中を見せよ」
威圧的に団長が命令すれば、少女の眉間の皺がより深くなり侮蔑の表情に変わる。俺たちは彼女に変態のように映っているのだろうか……。
団長が冷静に少女の誤解を解く。やはり、俺たちが卑猥な要求をしてたと勘違いしていたようだ。少女が優しい声で魔の者にますくを取るよう語りかける。ゆっくりとますくが取り外されると目を見張るような無垢な少年が現れた。怯えながら見せてくれた口の中には、牙も刺青もなかった。安堵のため息を漏らし、団長と視線を交わす。
魔の者でないことは理解したが、それなら二人はなぜ軽装でこのような場所にいるのかという疑問が出てくる。少年は下着姿。少女も体型に合っていない装い。このギランの森の深い所は冒険者でもBランク以上の者しか訪れないエリアだ。
少女は自分をエマと自己紹介、少年はシオンというようだ。エマは気がついたらこの場所にいたと言う。人攫いか? いや何かの魔法か? あの閃光は魔法であろう。
二人をここに置いて行く訳にもいかない。詳しい話は野営地で尋ねれば良いだろう。
「ここにいても埒が明かない。日没までには野営地に到着したい。二人にはこのまま同行してもらう。拒否権はない」
団長はまた女性限定の変な態度でエマに命令するが、野営地まで同行することに承諾してもらう。移動中シオンはエマの胸の中ですっかり眠っている。羨ましい。
驚いたのが、移動中のエマの体力だ。騎士や冒険者なら鍛えているので苦ではないが、エマはそんな特別な訓練を受けてるような様子はない。おまけに二人とも生活魔法を初めて見たと驚いていた。生活魔法は平民もほとんど使用できる魔法だ。それを見たことないとは……本当にどこから来たのだろうか?
「レズリー、湯が沸いている」
団長の声で顔を上げると、エマがこちらを不安そうに見ていた。また思考に耽るクセが出ていたか。
293
お気に入りに追加
1,274
あなたにおすすめの小説
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
スキル調味料は意外と使える
トロ猫
ファンタジー
2024.7.22頃 二巻出荷予定
2023.11.22 一巻刊行
八代律(やしろ りつ)は、普通の会社員。
ある日、女子大生と乗ったマンションのエレベーター事故で死んでしまう。
気がついたら、真っ白な空間。目の前には古い不親切なタッチパネル。
どうやら俺は転生するようだ。
第二の人生、剣聖でチートライフ予定が、タッチパネル不具合で剣聖ではなく隣の『調味料』を選んでしまう。
おい、嘘だろ! 選び直させてくれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる