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ファレンスの街
ついてないな
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バールの街を出発して一日、現在乗り合い馬車の車輪に繋がる一部分が壊れたらしく、御者がなんとか馬車を修理しようとしているが数時間立ち往生している。
馬車に乗っていた全員が修理の間、外で何をすることもなく修理が終わるのを待つ。修理しやすいように馬車を数人で上げたが、それ以上、俺に手伝えることはなかった。
「暇だな。一眠りするか」
昼過ぎの晴天の中、大の字で地面に寝転がる。日本だったらこの時間はあくせく働いていただろうな。昼間から惰眠を貪る。冷えたビールがあれば最高だったな。
あくびをすると、蝶追いかけに飽きたキモイとサトウが俺の腹に飛び乗る。
「キュイ」
「ピーッ」
「オエェェェ。やめろ、昼食ったもんが出てくるだろ!」
飛び跳ねる二匹を腹の上から落とし、横を向きながら一眠りする。
夕方前、サトウの執拗なデコへの突きで目覚める。
「地味に痛いからやめろ」
「ピーッ!!」
「キュイ!!」
地団駄を踏みながら二匹が飯の催促をする。
「腹が減ったのか? 悪い悪い」
アイテムボックスから小型の魔物を取り出す。キモイはそのまま食えるが、サトウは切り分ける必要がある。
「この作業、結構グロいな。これくらいの大きさなら食えるだろ」
切り分けた魔物のピースをサトウに少しずつ与えると嬉しそうに羽をバタつかせた。
「お前、一応飛べる鳥らしいぞ」
バールの街の掃除ギルド長ルーシーに報酬としてもらった魔物図鑑によれば、メタルハーピーイーグルは生後ニ、三ヶ月で飛びはじめるらしい。だが、魔物図鑑の生後二ヶ月のメタルハーピーイーグルの絵とサトウの成長度合いが明らかに違う。
「お前はまだ小さな雛鳥のはずなんだけどな」
サトウを持ち上げれば、3、4キロはある。見かけはまだ雛っぽいが……今後は未知だな。
「ゲフゥ」
「俺の顔に向かってゲップをするとはいい度胸だな」
その後、二匹をしばらく運動させた後にため息を吐く御者に声をかける。
「直すことは無理そうか?」
「ああ、ダメだろうな。馬車は一先ず置いて、馬だけを連れてバールの街に戻る。すまんな」
ついていないな。
乗客はこのままバールに戻るかファレンスに向かうかの選択肢があったが、俺以外の乗客は徒歩の旅の準備をしてないからとバールの街へと引き返す選択をした。
アイテムボックスにそれなりの食材はあるし体力もある。途中に泊まれる村もあるようだし、問題はないだろう。
御者が持っていたファレンスへの道のりの地図を書き写す。道はそう難しくなさそうなのでこれなら大丈夫だろう。
「兄さん、なんにも荷物を持ってないようだが本当に大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
「これ、運賃代だ」
御者に運賃代を返してもらっただけまだマシか。
バールの街に向かう人たちに軽く手を振り別れる。
「よし、少し時間はかかるがファレンスに向かうぞ」
「キュイ!」
「ピーッ!」
馬車に乗っていた全員が修理の間、外で何をすることもなく修理が終わるのを待つ。修理しやすいように馬車を数人で上げたが、それ以上、俺に手伝えることはなかった。
「暇だな。一眠りするか」
昼過ぎの晴天の中、大の字で地面に寝転がる。日本だったらこの時間はあくせく働いていただろうな。昼間から惰眠を貪る。冷えたビールがあれば最高だったな。
あくびをすると、蝶追いかけに飽きたキモイとサトウが俺の腹に飛び乗る。
「キュイ」
「ピーッ」
「オエェェェ。やめろ、昼食ったもんが出てくるだろ!」
飛び跳ねる二匹を腹の上から落とし、横を向きながら一眠りする。
夕方前、サトウの執拗なデコへの突きで目覚める。
「地味に痛いからやめろ」
「ピーッ!!」
「キュイ!!」
地団駄を踏みながら二匹が飯の催促をする。
「腹が減ったのか? 悪い悪い」
アイテムボックスから小型の魔物を取り出す。キモイはそのまま食えるが、サトウは切り分ける必要がある。
「この作業、結構グロいな。これくらいの大きさなら食えるだろ」
切り分けた魔物のピースをサトウに少しずつ与えると嬉しそうに羽をバタつかせた。
「お前、一応飛べる鳥らしいぞ」
バールの街の掃除ギルド長ルーシーに報酬としてもらった魔物図鑑によれば、メタルハーピーイーグルは生後ニ、三ヶ月で飛びはじめるらしい。だが、魔物図鑑の生後二ヶ月のメタルハーピーイーグルの絵とサトウの成長度合いが明らかに違う。
「お前はまだ小さな雛鳥のはずなんだけどな」
サトウを持ち上げれば、3、4キロはある。見かけはまだ雛っぽいが……今後は未知だな。
「ゲフゥ」
「俺の顔に向かってゲップをするとはいい度胸だな」
その後、二匹をしばらく運動させた後にため息を吐く御者に声をかける。
「直すことは無理そうか?」
「ああ、ダメだろうな。馬車は一先ず置いて、馬だけを連れてバールの街に戻る。すまんな」
ついていないな。
乗客はこのままバールに戻るかファレンスに向かうかの選択肢があったが、俺以外の乗客は徒歩の旅の準備をしてないからとバールの街へと引き返す選択をした。
アイテムボックスにそれなりの食材はあるし体力もある。途中に泊まれる村もあるようだし、問題はないだろう。
御者が持っていたファレンスへの道のりの地図を書き写す。道はそう難しくなさそうなのでこれなら大丈夫だろう。
「兄さん、なんにも荷物を持ってないようだが本当に大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
「これ、運賃代だ」
御者に運賃代を返してもらっただけまだマシか。
バールの街に向かう人たちに軽く手を振り別れる。
「よし、少し時間はかかるがファレンスに向かうぞ」
「キュイ!」
「ピーッ!」
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