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五話「異世界に全裸で召喚されました」
しおりを挟む―ヒロイン視点―
学校に行く途中大きな水たまりを見つけ、のぞき込んだら中に吸いこまれた。
そして気がついたら空の上にいて、ふぁ~いい眺め……なんて悠長に絶景を楽しんでいる暇もなく。
気がつけば体は急降下!
「きゃぁぁぁぁぁぁああッッ!!」
死んじゃうーーーー!!
と思ったのも一瞬、走馬灯を見ることもなく湖に墜落した。
「はぁ~~~~、死ぬかと思った! なんなのよもぅ~~~~!」
なんとか水面に顔を出し悪態をつく。下が湖じゃなかったら死んでるよ!
周りを確認すると、岸辺に人の姿が見えた。
「あっ、人がいた! よかったぁ~~! すみませ~~ん、ここって何県ですかぁ?」
金色の髪で異国の民族衣装のようなものを着ている。近くで映画の撮影か何かかな?
しかし相手からの返事がない。遠くて聞こえないのかもしれない。
岸辺まで泳ぎ、岸に上がりもう一度話しかける。
「聞こえないのかな? もしも~~し? はっ、もしかして金髪だから外国人! ここ外国なの!? えっと……、ハロー、ハロー?」
とりあえず「ハロー?」と声をかけてみたけど、英語圏の人じゃなかったら通じないか。
よく見ると私と同い年ぐらいの男の子だった。
少年は自身が身につけていたマントを脱ぎ、私に差し出した。
斜め後ろからでも分かるくらい、男の子の顔が赤かった。
「天界ではみなそうなのかもしれませんが、ここは地上です。どうかこれを……」
良かった言葉が通じた。言葉が通じたことにホッと胸を名で下ろす。
少年に言われ、自分の姿を確認し仰天した!
服を着てない! 真っ裸! 全裸!
「いやぁぁぁぁあああぁぁぁッッ!!」
全裸で知らない人の前にいる事実に耐えられず、悲鳴を上げ、胸を手でおさえその場にうずくまる。
なんで何故に素っ裸?
私、セーラー服を着て家を出たよね?
娘が全裸で学校に行こうとしたら、ママが全力で止めたハズ。
「ほのか、あなた服を着るのを忘れてるわよ!」って注意されたハズ。
水たまりをのぞいたときまではちゃんと服を着てた。私の服はいったいどこにいってしまったの??
「天界は常春なのかもしれませんが、ここは地上です。そのままでは風邪をひきます、どうかこれを」
男の子は足元にマントを置くと、数歩歩き私から距離をとった。
金髪の男の子はシャイな性格……ううん紳士みたい。
私は少年が貸してくれた青いマントを羽織る。
裸にマント一枚では心元ないが裸でいるよりはましだ。
「ありがとうございます、助かりました」
外国で初めて会った人が、親切な人でよかった。
「いえ、どうかお気になさらず、なんでしたら私の着ている服もお貸しします」
纏うものが薄いマント一枚では、落ち着かない。
体のラインがまる分かりだし、風が吹くたびにマントがはためき肌がのぞくし、上着を貸してもらえると助かる。
親切な人だなぁ、この辺りの人はみんなそうなのかな?
「でも、私に服を貸したら、あなたが風邪をひきませんか?」
「地上のもののことなど、どうかお気になさららず。あなたは伝説の……」
「王子――――!!」
声のした方向を見ると、遠くから赤い髪の男性が走ってきた。
「きゃぁっ」
新たな男の登場に、私はその場にうずくまる。
マント一枚で知らない男性の目にさらされるのは、やはり恥ずかしい。
男の子は後ろを向いていてくれたから、なんとか耐えられたけど……私の羞恥心は限界だった。
「レヴィン王子ご無事でしたか? 先ほどの水音と悲鳴は!?」
えっ? 今赤い髪の人が金髪の男の子を王子と呼んだ?
ええっ? あの男の子、王子様だったの?
私は王子様の身ぐるみをはいで、自分の服にしようとしてたの??
ふ、不敬罪で殺されるーー!
「ドミニクそこまでだ、それ以上近づいてはならぬ!」
王子様が私を赤い髪の男性から守るように私の前に立った。
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