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5話「鳩が豆鉄砲をくらう」
しおりを挟む――新国王ウィリアム・サイド――
北の塔に赴きべナットに毒杯を渡した帰りだった。
バイス公爵に会ったので、僕の私室に案内した。
「バイス公爵が王弟派についてくれるとは思いませんでした」
身内の恥をさらしてでも僕はバイス公爵は仲間に引き入れたかった。
「王弟殿下は……失礼いたしました、国王陛下は娘を政治利用しないと約束してくださいましたから」
「バイス公爵はアリーゼ嬢のことがよほど大切と見える」
「あの子は勉学や語学は得意なのですが、他者とのコミュニケーションや社交が苦手でして、貴族社会には向いてないと判断いたしました。
あの子は貴族社会にいたら苦労しかしない、しかしバイス公爵家に生まれた以上政治的なしがらみから逃げられない。なので国王陛下におすがりしたのです、味方になる変わりアリーゼを自由にしてほしいと……。
アリーゼには修道院で無邪気な子供たちに囲まれ、裏表のない民とともに笑って暮らしてほしいのです」
そう言ったバイス公爵の顔は鬼宰相と言われる貴族の顔ではなく、父親の顔だった。
「バイス公爵、その事をちゃんとアリーゼ嬢に伝えましたか?」
「いいえ」
「一度きちんと話し合った方がいいですよ、おそらくバイス公爵の思いはアリーゼ嬢に届いてないと思うので」
「なんとっ?!」
バイス公爵は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
バイス公爵は、普段は優秀だがアリーゼ嬢のことになるとポンコツになるようだ。
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