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17話「ある意味頼りになる?」
しおりを挟むあとは伯爵家に居座っている、父と父の愛人と異母妹を追い出すだけだ。
こちらには契約書があり、なおかつ優秀な弁護士が三人もついている。
彼らは、お金がないので弁護士を雇えない。
彼らを追い出すのは、ゲルラッハ子爵令息との婚約を破棄するより簡単だった。
元々彼らなど簡単に追い出せたのだ。
ゲルラッハ子爵令息との婚約を破棄する為に、今まで屋敷に住まわせてやっていただけ。
用が済んだら追い出すのみ。
父と父の愛人と異母妹は恨み言を吐きながら、屋敷を出ていった。
「あたしにこんなことしたらアデル様が黙ってないわよ!
彼はとっても頼りになるんだから!」
去り際に異母妹がそんなことを言っていた。
アデルはすでに子爵家を勘当されている。
彼は子爵に「伯爵家へ慰謝料として支払った金を、鉱山で働いて返せ!」と言われ、鉱山に送られた。
そんな彼を頼ってもどうにもならないと思うが、父と父の愛人と異母妹もこのあと鉱山に行く。
彼らが行く鉱山が、ゲルラッハ元子爵令息と同じ場所なら、先に鉱山で働いている彼に色々と教えてもらえるかもしれない。
そういう意味でなら、彼は異母妹の言うとおり「頼りになる」存在なのかもしれない。
そんなことを考えながら、父と父の愛人と異母妹を乗せた粗末な馬車が遠ざかって行くのを、私は部屋の窓越しに眺めていた。
父を伯爵家の当主だと勘違いし、私の許可なく子爵夫妻を通した使用人は全員首にした。
使用人には私が伯爵家の当主で、父とその付属品は居候に過ぎないと、常々説明していた。
「知りませんでした」「聞いてませんでした」なんて、そんな言い訳は通らない。
ゲルラッハ子爵一家は婚約破棄を阻止するために、伯爵家に乗り込んで来た。
彼らはゲルラッハ元子爵令息に私を襲わせ、私との間に既成事実を作るつもりだった。
その手助けをした人間を許すことはできない。
主に仇をなす使用人は首にする。そうでなくては伯爵家の当主など務まらない。
特に私は成人したばかり。
「若い伯爵は使用人への処罰もぬるい」と周囲に舐められたら終わりだ。
ゲルラッハ子爵家の危険性について教えてくれたクロリスには、感謝しかないわ。
彼女には後できちんとお礼をしなくてはいけないわね。
彼女は私の恩人だもの。
だがこのときの私は、クロリスのことを何もわかっていなかったのだ。
クロリスの正体を知るのは、この数日後のこと……。
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