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7話「契約書にサインするときは、書面によく目を通しましょう」

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その日から私はアデルとミランダに、見張りをつけた。

二人は順調に仲を深めていき抱きしめ合ったり、口づけを交わすまでになった。

しかし、その後がなかなか進展しない。

ふたりともまだ若すぎるからかしら?

しばらく様子を見ていると、半年が経過してしまった。

私は王立学園の入学の準備に追われることになる。

私とアデルが王立学園に通うことを知った異母妹が、「お義姉様だけ学園に通うなんてずるい! お義姉様が学園に通うなら、あたしも通いたい!」と言ってきた。

王立学園は貴族と裕福な平民、特別な才能を持った一部の平民が通うところだ。

平民でしかもなんの才能もない、努力もしない異母妹が通っても仕方ないところだ。

異母妹を学園に通わせるなんてお金の無駄でしかない。

しかし私は、をつけて異母妹が学園に通うことを許可した。

その際しっかりと契約書を交わしている。

卒業までにかかる費用は莫大なので、異母妹だけでなく、父と父の愛人にも別の契約書にサインしてもらった。

異母妹は「これでアデル様と一緒に学園に通えるのね!」と言って契約書を読まずに喜んでサインをした。

「秘密の恋人関係」と言っていたが、この頃は全く忍んでいない。

「秘密の」というのは口だけで、最初から忍んでなどいなかったか。

契約書はわざと難しい文言を使って書いた。

仮に異母妹が契約書を読んだとしても、契約内容を正しく理解することはできなかっただろう。

平民の異母妹には家庭教師をつけてない。勉強嫌いな異母妹には付ける必要もない。

そんな勉強嫌いな異母妹が学園に通いたがる理由は二つ。

一つ目は私への対抗意識、二つ目は学園でアデルとイチャイチャしたいからだ。

契約書の内容を理解できなかったのは、父も父の愛人も一緒だ。

父は伯爵家に婿養子に入ってから、子種を残す以外の仕事を一切していない。

もし父がカマキリの雄だったら交尾後に殺されている。

仕事をしないのに、「自分は伯爵家の当主だ」と思いこんでいるのだからある意味凄い。
 
父は仕事をしてこなかったので、いざ難しい文言の連なる書類を見せられても理解できないのだ。

そんなわけで、父も父の愛人も異母妹も契約書をよく読みもせずに契約書にサインをした。

彼らは異母妹が学園に入学できることを喜んでいるが、果たして契約書にサインをしたことはあなた方の為になるのかしらね?

この契約書がいずれ自分たちの首を絞めることになるとは知らず、彼らは手を取り合ってはしゃいでいた。




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そんなこんなで十五歳になった私は学園に入学した。

私は勉強の甲斐あってSクラスに入ることができた。

アデルと異母妹は仲良くEクラス最低クラスになった。

Sクラスは成績優秀な生徒の集まりだから、勉強についていくのは大変だ。

でもその分、難解な問題が解けたときは達成感がある。

それに会話が通じる相手と話せるのは嬉しい。

アデルや異母妹と話していても、彼らは難しい言葉を知らないから、その都度噛み砕いて話さなくてはならない。

何より彼らとは、同じ言語で話しているはずなのに会話が成立しなくて、とても疲れるのだ。

高度な知識を持った人たちと、知的な会話ができるのはとても楽しい。

私は学園で有意義な時間を過ごしている。

それに親友もできた。

親友の名はクロリス・グーゼンバウアー公爵令嬢。

公爵の次女で、学年首席、おまけに美人で、背が高くて、スレンダーで、優しくて、清楚で、お菓子作りも得意で、まさに完璧な淑女とは彼女のことだ。

私みたいな地味な子が、彼女の親友でいいのかしら? と恐縮してしまうほどだ。

彼女は病弱なので婚約者がいない。

いつも長袖のカーディガンを羽織っていて、白い手袋をつけている。

体が弱いので体育も見学。

病弱なのを除けば彼女は本当に完璧だ。

彼女とお昼休みにガゼボで過ごす時間だけは、嫌なことを全部忘れられる。

彼女は私の癒しスポットなのだ。




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