14 / 50
十四話「フリード様と仲良くしよう」②
しおりを挟むキィィン! カキィィン!
剣と剣がぶつかり合う音。
フリード様が剣を振るう度に揺れる金色の髪、飛び散る汗。
今まで見たどのスチル絵より、麗しいおフリード様がそこにいた。
相手が膝をつくとフリード様が剣を振り下ろした。
パキィィィィィンン!
相手の剣が折れ、剣先はくるくると回転して訓練場の端に突き刺さる。
フリード様が相手の首もとに剣を突きつける。
「降参です、フリード様、腕を上げられましたね」
相手の男が両手を上げて降参のポーズを取る。
「今日はたまたま運が良かっただけです。僕などまだまだですよ、先生」
フリード様が剣を鞘にしまい、相手の男に手を差し出す。
フリード様の相手をしていたのは、剣術の先生だったのね。
さすが剣神の才能もちのフリード様、十五歳にしてその才能を発揮。先生すらもはや敵ではないのね。
「うわぁぁ! すごいです! お兄様!」
パチパチパチパチと拍手を送ると、フリード様は驚いた顔でこちらを見た。
「ディアーナ来ていたのか?」
「はい、お兄様の剣術の訓練を見学したくて」
フリード様の顔がほころぶ。
「お邪魔でしたか?」
コテンと首をかしげると、フリード様の頬が赤らむ。フリード様は手で口元を抑え私から視線を逸した。
「いや、邪魔ではないが危ないから……次からは見学するときは事前に知らせてくれ、訓練場に結界を張っておく」
「はい」
そういえば、漫画のディアーナはフリード様に斬られて死ぬのよね。
フリード様をなんとか味方に出来ないかしら?
私はユリアに意地悪する気も殺す気もない、だけど何が起きるか分からない。漫画の強制力で冤罪を着せられ、断罪されるかもしれない。
フリード様と仲良くしておけば、卒業パーティーで斬り殺されるところを、峰打ちで済ませてもらえるかもしれない。
「お兄様、お茶をお持ちしました」
「ありがとう」
「お茶を淹れたのも運んだのもメイドさんで、私はメイドさんの後をついてきただけなんですが」
「それでも嬉しいしよ、ありがとう」
フリード様が私の頭をよしよしと撫でる。
金色の髪、サファイアの瞳、白磁のようにきめ細やかな肌、やっぱり近くで見ると美形だ。(遠くから見てもかっこいいけど)
フリード様のお顔が近い、唇が触れ合ってしまいそう。
「あの、私帰りますね」
「待ってディアーナ」
ふわわわっ!! フリード様に手を掴まれてしまった!
「せっかくだから一緒にお茶を飲もう」
「えっ、ですが……」
チラリとティーセットを見る、ティーカップが二つ、フリード様と先生の分では。
「先生、今日の訓練はここまでにしましょう」
フリード様が私の考えている事が分かったようで、先生に視線を向ける。
「そうだね、弟子にお気に入りの剣を折られてメンタルボロボロなので今日の訓練はここまでにしよう。それに私がいたらお邪魔なようだしね」
先生はフリード様にウィンクをすると、折れた剣先を拾い帰って行った。
「君ももう下がっていいよ」
「かしこまりました」
フリード様に言われ、ティーセットを運んでくれたメイドさんも帰っていく。
「これで邪魔者はいなくなった……」
「はいっ?」
フリード様、今何かおっしゃいました。
「なんでもないよ、こちらの話だ」
フリード様がにこりと笑う。
爽やかな笑顔やばい! 好きになってしまう!
22
お気に入りに追加
1,105
あなたにおすすめの小説
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
転生ガチャで悪役令嬢になりました
みおな
恋愛
前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。
なんていうのが、一般的だと思うのだけど。
気がついたら、神様の前に立っていました。
神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。
初めて聞きました、そんなこと。
で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!
寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを!
記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。
そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!?
ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する!
◆◆
第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。
◆◆
本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。
エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる