上 下
59 / 83

五十九話「霧の道」

しおりを挟む
エアネスト視点

◇◇◇◇◇

僕は白馬に兄上は黒馬にまたがり、霧の中を進んでいた。途中いくつかの別れ道があったが、馬たちは道を知っているようで迷わずに進んでいく。

ヴォルフリック兄上が「これがシュトラールが言っていた、魔王城への近道か」とつぶやく。

おそらくシュトラール様にいただいたルーン文字Mエイワズから生まれた馬がいなければ、たどりつけないのだろう。

やがて霧が晴れ、漆黒の城が現れた。コウモリに似たモンスターが城の周りを飛び交う。禍々しいオーラを放つ巨大な城。暗雲が立ち込め、ときおり稲妻が光る。

ゲーム本編と設定資料で見たことがあるから間違いない、あれが魔王城だ。

ゲームでは崖を越えるとか、海を渡る、イベントをクリアするとか、アイテムを集めるとかいろいろあった。いろんな手順や道順をすっ飛ばして、魔王が住まう城まで来てしまった。

ここに来て僕は重大なことに気づいた!

僕のレベルが1で、装備が布の服だということに……。

死ぬ! 光魔法が使えても、レベル1で、装備が布の服で、武器が初期装備のロングソードでは死んでしまう!

戻ろうにも、霧の道は消えていた。白馬と黒馬に道を聞こうにも、馬たちは道草を食べている。魔王城の近くに生えてる草なんか食べて大丈夫かな? お腹壊さない?

仕方なく馬から降りる。

「怖いか?」

震えるボクの腰にヴォルフリック兄上が手を回す。昨日までしていた行為を思い出し、顔に熱が集まる。

抱かれたい。ヴォルフリック兄上の男根を想像してしまい、お尻がキュンとうずく。兄上の男根がほしい。だけど今はそんなことをしている場合ではない!

ここは魔王城の近くなのだ! 気を引き締めなくては!

「怖いです、でも逃げません!」

魔王城にはワルフリート兄上と、ティオ兄上が囚われている。ここまで来て逃げ出すわけにはいかない。兄上たちを助け出さなければ!

ワルフリート兄上とティオ兄上の名を口にすると、ヴォルフリック兄上が不機嫌になるから黙っていよう。

「ボク一人では心細くて泣いていたかもしれません。でもヴォルフリック兄上が一緒にいてくださるから、平気です」

兄上を見上げニコリと笑い、抱きつく。

「あおるな、我慢しているんだ」

「えっ?」

ヴォルフリック兄上もエッチなことしたいのかな? でもここは魔王城の近くだし、モンスターも出るし、宿屋もないし……。

「案ずるな、魔王がどこで監視しているか分からぬ場所で、お前を辱めたりしない」

安心したような、すごく残念なような。

昨日まで兄上と毎日セックスしてたからか、ボクはみだらな体になってしまったようだ。ヴォルフリック兄上の陰茎がほしい。

魔王を討伐し、ワルフリート兄上とティオ兄上を助け出したら、ヴォルフリック兄上といっぱい性行為したい。

この世界がゲームと同じなら魔力と体力を回復できるポイントと、レアアイテムが入った宝箱があるはずだ。

レアなアイテムを落とすモンスターや、経験値がお得なモンスターもいる。

まずは回復ポイントを見つけ、そこを拠点にレベルを上げよう。



◇◇◇◇◇


光の矢リヒト・プファイル!」

無数の光の矢が敵の体を貫く。

ヴォルフリック兄上がバスタードソードでモンスターを斬り、ボクが光魔法で援護する。

回復ポイントはゲームと同じ場所にあった。大きな魔法陣があり、そこを中心に清らかな気が流れ、モンスターが出現しない。HPとMPが一瞬で回復する。

ラスボス戦前のレベル上げポイントである。

ボクとヴォルフリック兄上も回復ポイントを拠点に、モンスター狩りをしている。

MPを気にしなくていいので、光魔法を連発できる。おかげでレベルもだいぶ上がった。

ゲームと同じ場所に配置されていた宝箱や、モンスターがドロップしたアイテムを回収し、勇者:レベル1、装備:布の服、武器:初期装備、というしょっぱい状態は回避された。

ボクが装備しているのは光の剣リヒト・シュヴェーアト。最強の武器聖剣ハイリゲス・シュヴェルトに次ぐ攻撃力を持つ剣だ。

光の服というそこそこ守備力の高い装備も手に入った。

あとは守備力が高いけどHPが少なくて経験値がたくさんもらえる敵を、集中的に狩るだけだ。


◇◇◇◇◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目覚めた五年後の世界では、私を憎んでいた護衛騎士が王になっていました

束原ミヤコ
恋愛
レフィーナ・レイドリックは、レイドリック公爵家に生まれた。 レイドリック公爵家は、人を人とも思わない、奴隷を買うことが当たり前だと思っているおそろしい選民思想に支配された家だった。 厳しくしつけられたレフィーナにも、やがて奴隷が与えられる。 言葉も話せない奴隷の少年に、レフィーナはシグナスと名付けて、家族のように扱った。 けれどそれが公爵に知られて、激しい叱責を受ける。 レフィーナはシグナスを奴隷として扱うようになり、シグナスはレフィーナを憎んだ。 やがてレフィーナは、王太子の婚約者になる。 だが、聖女と王太子のもくろみにより、クリスタルの人柱へと捧げられることになる。 それは、生きることも死ぬことも許されない神の贄。 ただ祈り続けることしかできない、牢獄だった。 レフィーナはそれでもいいと思う。 シグナスはレフィーナの元を去ってしまった。 もう、私にはなにもないのだと。

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

騎士調教~淫獄に堕ちた無垢の成れ果て~

ビビアン
BL
騎士服を溶かされ、地下牢に繋がれ、淫らな調教を受け続ける―― 王の血を引きながらも王位継承権を放棄し、騎士として父や異母兄たちに忠誠を誓った誇り高い青年リオ。しかし革命によって王国は滅びてしまい、リオもまた囚われてしまう。 そんな彼の目の前に現れたのは、黒衣の魔術師アーネスト。 「革命の盟主から、お前についての一切合切を任されている。革命軍がお前に求める贖罪は……『妊娠』だ」 そして、長い雌化調教の日々が始まった。 ※1日2回更新 ※ほぼ全編エロ ※タグ欄に入りきらなかった特殊プレイ→拘束(分娩台、X字磔、宙吊りなど)、スパンキング(パドル、ハンド)、乳首開発、睡眠姦、ドスケベ衣装、近親相姦など

彼女の前世がニホンジン? 2 聖妃二千年の愛

さんかく ひかる
恋愛
王太子ロバートと伯爵令嬢メアリは結婚が許されないまま、密かに結ばれた。メアリはロバートと愛を育むが、徐々に不安が募る。ロバートには秘密があるらしいと気づいたのだ。別れるべきか添い遂げるべきか? 悩む彼女は開祖エリオンに救いを求めるが……。 やがて物語は、千年前の勇者たちと魔王の壮絶な戦いへと遡る。さらに二千年前に君臨した聖王と聖妃が語り掛ける。伝説の愛の秘密が明かされたとき、メアリとロバートの運命は大きく動き出す。 過去と現在が交錯する物語の中で、二人の愛は試練を乗り越えられるのか? 前世の記憶が導く、二千年にわたる愛の奇跡。 この小説は「彼女の前世がニホンジン? このままでは婚約破棄しかない!」の続きです。 前作では名前だけ登場した、史師エリオン、勇者セオドア、女勇者カリマ、そして魔王ネクロザールが活躍します。聖王アトレウスと聖妃アタランテも登場します。 前作の主役ロバートも活躍しますが、今作は、過去の伝説がメインストーリーとなっています。 前作と同様、八万字を予定しています。三日に一度の更新を目指します。今年いっぱいに完結の予定です。 エブリスタと小説家になろうにも掲載してます。

同室の笹井くんと古閑くんの自己都合な両片想いは、自己解釈が大半ですの注意して下さい !!

塚野真百合
BL
寮住まいの高校生笹井 透は、不眠症で少し悩んでいる。それに気が付いた同室でクラスメートの古閑 響は透に密かに好意を寄せ始めていた。  そんなある日、透は手違いで買ってしまった苦手なコーヒーを飲んでしまったために不眠症を悪化させ寝不足のまま学校へ行くことになった。  当然、昼過ぎに透は、眠気の限界をむかえてしまう。  それに気が付いた古閑の気転で少し休む事になるのだが、前のめりに眠る透を支えたつもりが、膝枕と言う形に…  古閑にしてみれば、ラッキー?  膝枕で目を覚ました透にとっては、不足の事態とまだ残る眠気で、調子が戻らない。  透は、担任に早退する意向伝え寮に戻る事になる。   1人寮に戻った透は、もしかして古閑は、自分を好きなのか?  もしかすると自分も? 古閑を?  と、色々と考え込んでしまい。また眠れなくなる。    

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

処理中です...