上 下
11 / 83

十一話「玉座の間、国王との謁見①」

しおりを挟む

着替えを終え、玉座の間へと向かう。

「ヴォルフリック兄上、父上や二人の兄上と会うのは久しぶりでしょう。やはり会えるのは嬉しいですか?」

ボクの質問に兄上が眉間にしわを寄せる。

「九年間牢に入れられ、農民が私を殺そうと攻めてきても放置していた、薄情な父親に会うのが嬉しいとでも?」

兄上の言葉につきりと心が痛む、無神経な質問をしてしまった。

「ごめんなさい兄上」

「気にするな、お前を責めたのではない。私はお前を愛しく思っている。お前だけが側にいてくれればそれでよい」

ヴォルフリック兄上がボクのことを気に入ってくださっているのは、とても嬉しい。

兄上が他の兄弟や父上にも、心が開けるように尽力できたらいいな。

「私の事はいい、それよりも気をつけなければならないのはお前だエアネスト」

「はい?」

ボクが気をつけなければならないってどういうこと?

「プラチナブロンドの髪と濃い青い目を失ったお前を、あいつらがどう扱うか……。今まで通り接してくれるとは思わぬ方がいい、心の準備をしておけ」

エアネストの記憶に中にあるボクは、父上、母上、兄である第一王子と第二王子からとても可愛がられていた。

メイドや執事や騎士たちもとてもボクに優しくしてくれた。

それはボクがプラチナブロンドの髪に濃い青い目を持って生まれた次期王候補だからであって、ボクがその髪の色を失ったらやっぱり変わってしまうもんなのかな。

少しだけ寂しく思えた。

銀色の髪を失った時のヴォルフリック兄上もこんな思いをしたのだろうか。


◇◇◇◇◇


ここでちょっと王族の人間関係について予習しておこう。

第三十一代エーデルシュタイン王国国王ジキワルド。第一王子と第二王子そして第四王子である僕の父親。

第一王子ワルフリートと第二王子ティオは国王と第一王妃アンナ様の子。

アンナ様はワルフリート兄上とティオ兄上が幼い頃に亡くなっている。

第三王子ヴォルフリックは魔王と第二王妃レーア様の子。

世間的には国王ジキワルドとレーア様との子ということになっている。

ちなみにレーア様は人間と精霊のハーフだ。レーア様はヴォルフリック兄上を生んですぐに亡くなった。

そして第四王子であるボク、エアネスト。ボクは国王と第三王妃ルイーサの子。第三王妃である母上は存命だ。

◇◇◇◇◇

この世界の髪と目の色についておさらいしておこう。

銀色の髪と紫の瞳は精霊とその血を引くものにしか現れない。この世界で、一番貴重で高潔な色だ。

黒い髪と黒い目は魔族にしか現れない。魔王は漆黒の髪と目を持っている。

純血の人間で一番高貴な色は、金髪と青い目。その中でもプラチナブロンドは特に貴重とされていて、王族か王族の血を引く者にしか現れない。この世界ではボクといとこのソフィアがプラチナブロンドだ。(ボクはもう違うけど)

金色の髪は強い光属性の魔力を持っている。

プラチナブロンドの次がダークブロンド、次がローズブロンド。

国王ジキワルドと第三王妃ルイーサはダークブロンド。

第一王子ワルフリートと第二王子ティオはローズブロンド。

茶色の髪が一番多く属性も様々だ。黄色に近い方が貴重で濃い茶色に近いほどありふれている。

貴族や平民のほとんどが茶色の髪をしている。



次に瞳の色。

紫は精霊と精霊の血を引く者、黒は魔族ということはさっき説明したよね。

人間の中で一番魔力が強く魔力量が多いのが濃い青。王族と王族の血を引く者の中でもごく一部のものにしか現れない。

次に水色、その次が緑色。この二色は王族や貴族に多い色だ。魔力量は中程度。

平民は黄色か茶色、魔力はほとんどない。

イレギュラーでボクのような灰色の目の者もいる。魔力量はゼロ。



これらの事は別に覚えなくてもなんの問題もない。頭の片隅になんとなく置いといてくれるだけでいい。


◇◇◇◇◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

俺の穏やかなスローライフを荒らすのはやめてくれ

水場奨
BL
豊富な魔力を得るだろうと期待されていた俺。ところが儀式で得た魔力の圧に勝てず前世で大人だった記憶を思い出してしまった。結果、インドア派になった俺は村の役立たずに。 だけど考えてみ? 会社にも行かなくてよくてご近所とも付き合わなくていい。 のんびりまったり生きていくのも案外気楽だ……って思ってたのに! なぜだかかなり病んでるスーパー幼馴染に脅されています。誰か助けて!!

【完結】侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

みやこ嬢
BL
【2020年12月20日完結、全69話、小話9話】 アデルは王国を裏で牛耳るヴィクランド侯爵家の跡取り息子。次世代の人脈作りを目標に掲げて貴族学院に入学するが、どうもおかしい。 寄ってくるのは男だけ! 女の子は何故か近付いてこない!! それでも将来のためと信じて地道に周囲との親交を深めて籠絡していく。 憧れの騎士団長との閨のレッスン。 女性が苦手な気弱同級生からの依存。 家族愛を欲する同級生からの偏愛。 承認欲求に飢えた同級生からの執着。 謎多き同級生との秘密の逢瀬。 これは、侯爵家令息アデルの成長と苦難の物語。 あやしい話にはタイトルの横に*を付けてます

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

【完結】凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕

みやこ嬢
BL
2023/01/27 完結!全117話 【強面の凄腕冒険者×心に傷を抱えた支援役】 孤児院出身のライルは田舎町オクトの冒険者ギルドで下働きをしている20歳の青年。過去に冒険者から騙されたり酷い目に遭わされた経験があり、本来の仕事である支援役[サポーター]業から遠退いていた。 しかし、とある理由から支援を必要とする冒険者を紹介され、久々にパーティーを組むことに。 その冒険者ゼルドは顔に目立つ傷があり、大柄で無口なため周りから恐れられていた。ライルも最初のうちは怯えていたが、強面の外見に似合わず優しくて礼儀正しい彼に次第に打ち解けていった。 組んで何度目かのダンジョン探索中、身を呈してライルを守った際にゼルドの鎧が破損。代わりに発見した鎧を装備したら脱げなくなってしまう。責任を感じたライルは、彼が少しでも快適に過ごせるよう今まで以上に世話を焼くように。 失敗続きにも関わらず対等な仲間として扱われていくうちに、ライルの心の傷が癒やされていく。 鎧を外すためのアイテムを探しながら、少しずつ距離を縮めていく冒険者二人の物語。 ★・★・★・★・★・★・★・★ 無自覚&両片想い状態でイチャイチャしている様子をお楽しみください。 感想ありましたら是非お寄せください。作者が喜びます♡

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...