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21話「ところで私は今どこにいるのしょうか?」

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「ところで私は今どこにいるのしょうか?」

お城のように豪華な自室。

カントリー調の落ち着いた作りのリビングやキッチンやダイニング。

「この家はボクが用意したんだよ。
 前に約束したよね?
 アルゾンが婚約してエマがカウフマン伯爵家で働く必要がなくなったら、四人で一緒に暮らそうって」

ロルフ様が得意げにおっしゃった。

確かにそんな約束をしました。

でもそんな夢のような話が本当に叶うとは、思ってもいませんでした。

「外に出てみるといい。
 エラのために大きな湖を作った」

ロルフ様が家を、ヴォルフリック様が湖を作ってくださったのですね。

「僕は湖の周りに、綺麗な花を植えて、お花畑を作ったよ」

三人とも前に私とした約束を覚えてて下さったんですね。

とても嬉しいです。

嬉しくて涙が溢れてきました。

「エラ、泣かないで。
 泣くのは外に出てお花畑を見てからにしよう」

ヴェルテュ様が頭を優しく撫でて下さいました。

「エラの顔に涙は似合わないよ」

「このハンカチを使うと良い」

ヴォルフリック様がハンカチを貸して下さり、ロルフ様が涙を拭ってくださいました、

「ありがとうございます!
 私、私……とっても嬉しいです!!」

私はなんとか笑顔を作って顔を上げた。

三人は私の顔を見て、ホッとした表情を浮かべた。

私はロルフ様、ヴォルフリック様、ヴェルテュ様にエスコートされて家の外に出た。

そこには真っ青な空が広がっていて、空の青さを反射した美しい湖がどこまでも広がっていました。

湖の周りには色とりどりのお花が咲いています。

遠くの森では小鳥がさえずり、お花畑には蝶々が舞っています。

湖を渡ってきた風が心地よく、私の頬をなでていきます。

「素敵!
 まるで子供の頃読んだ絵本の挿絵のようです!
 ヴォルフリック様、ヴェルテュ様このように素敵な湖とお花畑を用意してくださり、ありがとうございます!」

私がお礼を伝えるとお二人は太陽のような輝く笑みを浮かべた。

「エラ、振り返って家の外観を確認してほしいな。
 エラの理想に近い家を用意したもりだからだけど、気に入らなかったら直すね」

ロルフ様に言われ振り返ると、そこには赤い屋根に白い壁、小さな煙突がついたかわいらしいお家が建っていました。

「とっても可愛らしいです!
 妖精さんのお家みたいだわ!
 こんな可愛らしいお家に住むのが夢だったんです!
 ありがとうございますロルフ様!」

「エラに気に入ってもらえて、僕も嬉しいよ」

私が笑顔でお礼を伝えると、ロルフ様が無邪気な笑顔を見せた。

「でも家の外観に対して、中身が広すぎるような?」

このお家の外観では、私の部屋一つ収まらないのでは?

「建物の中は、いくらでも魔法で広くできるからね」

「そういうことだったのですね」

魔法って本当に便利ですね。

「部屋はいくらでも増やせるから、新しい部屋が欲しくなったら言ってね」

「はい、ロルフ様」

もう充分すぎるくらい広いです。魔法でお部屋を増やすことはなさそうです。

「ちなみにエラの隣の部屋は、僕の部屋だからね」

「ロルフの反対隣の部屋は私だ」

「エラの向かいの部屋はボクの部屋だよ」

「えっ……?」

三人の殿方と一緒に暮らしているということを思い出して、私の顔に一気に顔に熱が集まりました。

しかも両隣と向かいの部屋に殿方が住んでるだなんて……!

屋根裏部屋で暮らしていたときのように、三人一緒に同じベッドに寝るよりはずっと健全なのですが。

あのときは皆、幼い子どもの姿だったので、何も意識しないで寝てました。

知らなかったとはいえ、なんというふしだらなことを……!

私、もうお嫁にいけません!

「どうしたエラ?
 顔が赤いぞ?」

ヴォルフリック様に尋ねられても、私は顔を上げることができませんでした。

「エラのことだから、今まで三人で屋根裏部屋で一緒に暮らしてきたことを思い出して、急に恥ずかしくなったんじゃない?
 エラは僕たちの見た目が変わったことに戸惑っているんだよ」

ロルフ様に図星をつかれました。

「もしかして『私もうお嫁に行けない!』なんて考えて苦悩してるの?
 それなら心配いらないよ。
 ボクがエラをお嫁に貰ってあげるからね」

ヴェルテュ様が私の手をそっと握ります。

「ふぇっ……? おっ、お嫁……?」

「ヴェルテュ、抜け駆け禁止だ!
 エラをお嫁にもらうのは僕だよ!」

ロルフ様が、ヴェルテュ様に握られた反対側の手を取りギュッと握りました。

「ロルフもヴェルテュも何を言っている!
 エラと結婚するのはこの私だ!」

ヴォルフリック様に後ろから抱きつかれました。

もしかして私……三人の殿方からプロポーズされたのでしょうか?

状況の整理が追いつきません。

ロルフ様、ヴォルフリック様、ヴェルテュ様、可愛らしいお子様だと思っていた三人は実は成人していて。

三人が見目麗しい青年の姿で私の前に現れて。

私は三人の顔を直視するたびに心臓がドキドキして……!

そんな素敵な殿方たちと同居していて。

三人とも私のことが好きで……私と結婚したがっている……!?

人生初のモテ期でしょうか!?

しかもこんな美しい殿方に、三人から同時に求婚されるなんて……!

私の脳みそで処理できる情報量をはるかに超えています!!

「エラ、しっかり……!」

遠くでロルフ様たちの声が聞こえます。

どうやら私はまた気を失ってしまったようです。




☆☆☆☆☆



「案ずるなエラは気を失っただけだ。
 私が彼女をお姫様抱っこしてベッドまで運ぶ」

「変態竜には任せられないね。
 この間もふたりきりになった途端にエラを押し倒してたし。
 ここは紳士的なボクの運ぶよ」

「ヴェルテュはエラに抱きついたり、ドレスやアクセサリーをプレゼントしたり、抜け駆けしてたよね?
 僕がエラをお姫様抱っこして運ぶ番だ」

私が気を失った後このようなやりとりがされていたことを、私が知るのはずっとあとのことです。

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