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6話「舞踏会へ」
しおりを挟む――三人称――
昼間エラが働いている間、ロルフ、ヴォルフリック、ヴェルテュの三人は屋根裏部屋に集まり作戦会議をしていました。
「隣国の商人が破格の値段で宝石を売りにきたり、
最新のドレスや靴を安価で売ったり、
商売を辞めるからと言って商人が豪華な馬車を置いていったり……。
こんなことが続いたら、いくら継母とアルゾンがアホでも、何かあるのかと怪しむだろう?」
アクセサリー担当のヴォルフリックが、こんな作戦で本当に大丈夫なのか? と二人に尋ねました。
ロルフは涼しい顔で、
「細かいことは気にしない。
継母とアルゾンが信じたんだからそれでいいじゃない」
と言ってヴォルフリックの疑問を受け流します。
ヴォルフリックが「二人が間抜けで助かったな」と呟き、深く息を吐きました。
「これで王家主催の舞踏会に行く準備が整ったね。
あとはボクが不細工なアルゾンが世界で二番目の美人に見えるように、彼女に魔法をかけるだけだね」
ヴェルテュが細くしなやかな指をポキポキと鳴らします。
「世界で二番目?
一番じゃなくて?」
ロルフの問いかけに。
「世界で一番美しいのはエラだからね」
ヴェルテュはくすりと笑いながら答えました。
「確かに、エラより美しい娘はいないね」
「エラは心も体も宝石のように輝いているからな」
ヴェルテュの言葉に、ロルフとヴォルフリックが賛同します。
明日は王族主催のパーティ。
そこで第二王子の婚約者が決まります。
はてさて三人の目論見どおり、アルゾンは第二王子に見初められ、彼から求婚されるのでしょうか?
☆☆☆☆☆
「とうとう第二王子殿下が婚約者を決める、大切な夜会の日が訪れたのね。
あたしはお母様と一緒に舞踏会に行って楽しんでくるわ。
お義姉様は家の床でも磨いてください。
近々第二王子殿下が当家を訪れるかもしれないので、念入りにお掃除しておいてくださいね」
アルゾンは桃色の髪をハーフハーフアップにし、髪と同じサーモンピンクのドレスを身にまとっていた。
彼女の胸元では彼女の髪の色と同色のインペリアルトパーズのネックレスが光り、耳もとではヌーディーピンクのイヤリングが輝いていた。
彼女の足元では金の靴が存在感を放っていた。
アルゾンはボロボロのワンピースをまとったエラを見下すような眼差しをむけ、扇で口元を隠しクスリと笑いました。
「アルゾンが第二王子殿下に認められれば当家は王族の縁戚。
アルゾンが男の子を産めば、その子にも王位継承権が与えられるかもしれないわ。
いつ王族の方が当家を訪ねて来ても恥ずかしくないように、家中をピカピカに磨いておきなさい」
継母がエラに命じました。
継母は真っ赤な髪を結い上げ、年甲斐もなく胸元の開いた深紅のドレスを身にまとい、真っ赤な口紅をつけていました。
二人は上機嫌で四頭立ての馬車に乗り込み、お城に出かけて行きました。
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