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第二章
84話「二度目のキッス」
しおりを挟むリーゼロッテは分かってるのかな?
僕の呪いが解けてお互いが好きあっているとわかった今、僕がリーゼロッテに触れたいという欲求を、我慢する理由がなくなっていることに。
いや事に及ぶ前に、ちゃんとリーゼロッテに「好きだ」って伝えたいし、リーゼロッテと結婚式も挙げたいし、色々とやることはあるんだけど……。
リーゼロッテが僕を警戒しないのは、僕の見た目が子供のせいだよね。
僕が呪われた年齢は十二歳、約三十年間この姿でいる。
だけど大人になる段階で男性に起こる某現象も起きたし、子供の体でもやろうと思えば色々とできてしまうのだ。
リーゼロッテはそのへんのところをわかっているのかな?
「あとで嫌だって言っても、僕は知らないからね」
僕はストローの吸い口に口をつけた。リーゼロッテがもう一つの吸口に口をつける。
彼女との距離が近い……。
リーゼロッテの顔が間違に見えて、僕の心臓が早鐘を打つ。
目のやり場に困り視線を逸らすと、リーゼロッテの覆う面積の少ない水着が視界に入って余計に動揺してしまう。
ビーチって怖い。
どこに視線を向けていいのかわからない。
目のやり場に困り、僕は瞳を閉じた。
「ケホッ、ゴホッ……!」
僕が瞳を閉じた次の瞬間、リーゼロッテがむせる音が聞こえた。
僕は慌ててストローから口を離した。
「大丈夫! リーゼロッテ?!」
こういうとき背中をさすった方がいいのかな?
それとも水着の女の子の背中をさするのはセクハラになるから、触れない方がいいのかな?!
僕がどうしていいかわからずアワアワしていると、リーゼロッテが「大丈夫ですハルト様。ちょっとむせただけですから」と言って苦笑いを浮かべた。
「良かった」
僕は胸を撫で下ろした。
「でもリーゼロッテはどうして突然むせたの?」
「あの……それは」
リーゼロッテが頬を赤らめる。
「……ハ、ハルト様の瞳を閉じたお顔が、あまりにも可愛らしかったので……つい、見とれてしまい……それで」
「えっ……?!」
つられてこっちまで顔が赤くなってしまう。
二人で顔を赤くしたまま、しばらく沈黙した。
「あ、あのねリーゼロッテ……!
もう気づいてるかもしれないけど、僕は君のことが、その……す、好きなんだ……!
だからそういうことを言われると……意識してしまって……!」
僕の言葉を聞いたリーゼロッテの顔が耳まで赤く染まる。
「ハ、ハルト様が私を好き……?!」
リーゼロッテが自身の頬に手を当て赤面している。
「えっと……?
気づいてなかった?
僕にかけられた呪いを解く方法は、真実の愛で結ばれた相手と初めてのキスを交わすこと。
僕の呪いが解けたってことはリーゼロッテと僕が……その、せ、接吻したってことで。
そのだから……僕たちは両思い……ってことに……!」
「そ、そうですよね!
わかってます!
ちゃんとわかってます!」
リーゼロッテは酷く動揺していた。
「その、私とハルト様は……いつ、く、口づけを……?」
「えっと……シャインくんの背中に乗って移動しているとき、僕もリーゼロッテも眠ってしまったよね?
そのときシャインくんの体が揺れて、僕たちの……その唇が触れ合ったみたいなんだ」
「ハルト様の唇と私の唇が……触れ合った」
リーゼロッテの顔は真っ赤で、彼女の顔からは湯気が立ち上っていた。
「ご、ごめん……!
迷惑だった!?」
不慮の事故とはいえ、乙女のファーストキスを奪ってしまったんだ!
責任を取らないと!
って僕たちはもう結婚しているし、どうやって責任を取ろう??
「い、嫌じゃありません!
私、ハルト様の呪いを解くお手伝いが出来てとても嬉しいです!!」
リーゼロッテが僕の手を握りしめる。
「うん、ありがとう。
僕も初めての(キスの)相手がリーゼロッテで嬉しいよ」
リーゼロッテはりんごのように顔を朱色に染めた。
「ですが、一つだけ残念なことが……」
「えっ? 何?」
「ハ、ハルト様との初めての口づけを覚えていないこと……です」
「えっ?! あっ、うん……そうだね。
僕もそのことは残念だよ」
多分僕たちの唇が寝ている間に触れ合ったのは、一年以内に僕がリーゼロッテに告白しないと思ったアダルギーサとシャインくんの配慮なんだろうけど、好きな人としたファーストキスが記憶にないというのは少し悲しい。
「初めての口づけは記憶に残ってないけど、二度目のキスからは記憶に残していけるよね」
「えっ……?」
「リーゼロッテ、き、君と……口づけを交わしたい。
君にキス、してもいいかな……?」
「ふぇっ……!?」
リーゼロッテが驚いた顔で高い声を上げた。
「ご、ごめん……!
無理なら……」
「い…………じゃ、ないです」
「えっ?」
「ハ、ハルト様となら……嫌じゃ、ない……です!」
リーゼロッテは真っ赤な顔で俯いてしまった。
「ありがとう」
リーゼロッテが勇気を出して、嫌じゃないって言ってくれたんだ!
僕も勇気を出さないと!
「リーゼロッテ……」
「ハルト様……」
僕がリーゼロッテの頬に触れると、彼女は瞳を閉じた。
彼女の長いまつ毛と整った鼻筋、美しく形の良い唇に目を奪われる。
僕の心臓がバクンバクンと音を立てている。
僕の唇とリーゼロッテの唇が触れ合う……彼女とする二度目のキス。
そのとき強い魔力の波動を感じた。
リーゼロッテから唇を離し海に目をつけると、人の頭くらいの大きさの水の塊が高速で飛んで来るのが見えた。
しかも水の塊は一つや二つじゃない!
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