上 下
85 / 99
第二章

84話「二度目のキッス」

しおりを挟む



リーゼロッテは分かってるのかな?

僕の呪いが解けてお互いが好きあっているとわかった今、僕がリーゼロッテに触れたいという欲求を、我慢する理由がなくなっていることに。

いや事に及ぶ前に、ちゃんとリーゼロッテに「好きだ」って伝えたいし、リーゼロッテと結婚式も挙げたいし、色々とやることはあるんだけど……。

リーゼロッテが僕を警戒しないのは、僕の見た目が子供のせいだよね。

僕が呪われた年齢は十二歳、約三十年間この姿でいる。

だけど大人になる段階で男性に起こる某現象も起きたし、子供の体でもやろうと思えば色々とできてしまうのだ。

リーゼロッテはそのへんのところをわかっているのかな?

「あとで嫌だって言っても、僕は知らないからね」

僕はストローの吸い口に口をつけた。リーゼロッテがもう一つの吸口に口をつける。

彼女との距離が近い……。

リーゼロッテの顔が間違に見えて、僕の心臓が早鐘を打つ。

目のやり場に困り視線を逸らすと、リーゼロッテの覆う面積の少ない水着が視界に入って余計に動揺してしまう。

ビーチって怖い。

どこに視線を向けていいのかわからない。

目のやり場に困り、僕は瞳を閉じた。

「ケホッ、ゴホッ……!」

僕が瞳を閉じた次の瞬間、リーゼロッテがむせる音が聞こえた。

僕は慌ててストローから口を離した。

「大丈夫! リーゼロッテ?!」

こういうとき背中をさすった方がいいのかな?

それとも水着の女の子の背中をさするのはセクハラになるから、触れない方がいいのかな?!

僕がどうしていいかわからずアワアワしていると、リーゼロッテが「大丈夫ですハルト様。ちょっとむせただけですから」と言って苦笑いを浮かべた。

「良かった」

僕は胸を撫で下ろした。

「でもリーゼロッテはどうして突然むせたの?」

「あの……それは」

リーゼロッテが頬を赤らめる。

「……ハ、ハルト様の瞳を閉じたお顔が、あまりにも可愛らしかったので……つい、見とれてしまい……それで」

「えっ……?!」

つられてこっちまで顔が赤くなってしまう。

二人で顔を赤くしたまま、しばらく沈黙した。

「あ、あのねリーゼロッテ……!
 もう気づいてるかもしれないけど、僕は君のことが、その……す、好きなんだ……!
 だからそういうことを言われると……意識してしまって……!」

僕の言葉を聞いたリーゼロッテの顔が耳まで赤く染まる。

「ハ、ハルト様が私を好き……?!」

リーゼロッテが自身の頬に手を当て赤面している。

「えっと……?
 気づいてなかった?
 僕にかけられた呪いを解く方法は、真実の愛で結ばれた相手と初めてのキスを交わすこと。
 僕の呪いが解けたってことはリーゼロッテと僕が……その、せ、接吻したってことで。
 そのだから……僕たちは両思い……ってことに……!」

「そ、そうですよね!
 わかってます!
 ちゃんとわかってます!」

リーゼロッテは酷く動揺していた。

「その、私とハルト様は……いつ、く、口づけを……?」

「えっと……シャインくんの背中に乗って移動しているとき、僕もリーゼロッテも眠ってしまったよね?
 そのときシャインくんの体が揺れて、僕たちの……その唇が触れ合ったみたいなんだ」

「ハルト様の唇と私の唇が……触れ合った」

リーゼロッテの顔は真っ赤で、彼女の顔からは湯気が立ち上っていた。

「ご、ごめん……!
 迷惑だった!?」

不慮の事故とはいえ、乙女のファーストキスを奪ってしまったんだ!

責任を取らないと!

って僕たちはもう結婚しているし、どうやって責任を取ろう??

「い、嫌じゃありません!
 私、ハルト様の呪いを解くお手伝いが出来てとても嬉しいです!!」

リーゼロッテが僕の手を握りしめる。

「うん、ありがとう。
 僕も初めての(キスの)相手がリーゼロッテで嬉しいよ」

リーゼロッテはりんごのように顔を朱色に染めた。

「ですが、一つだけ残念なことが……」

「えっ? 何?」 

「ハ、ハルト様との初めての口づけを覚えていないこと……です」

「えっ?! あっ、うん……そうだね。
 僕もそのことは残念だよ」

多分僕たちの唇が寝ている間に触れ合ったのは、一年以内に僕がリーゼロッテに告白しないと思ったアダルギーサとシャインくんの配慮なんだろうけど、好きな人としたファーストキスが記憶にないというのは少し悲しい。

「初めての口づけは記憶に残ってないけど、二度目のキスからは記憶に残していけるよね」

「えっ……?」

「リーゼロッテ、き、君と……口づけを交わしたい。
 君にキス、してもいいかな……?」

「ふぇっ……!?」

リーゼロッテが驚いた顔で高い声を上げた。

「ご、ごめん……!
 無理なら……」

「い…………じゃ、ないです」

「えっ?」

「ハ、ハルト様となら……嫌じゃ、ない……です!」

リーゼロッテは真っ赤な顔で俯いてしまった。

「ありがとう」

リーゼロッテが勇気を出して、嫌じゃないって言ってくれたんだ!

僕も勇気を出さないと!

「リーゼロッテ……」

「ハルト様……」

僕がリーゼロッテの頬に触れると、彼女は瞳を閉じた。

彼女の長いまつ毛と整った鼻筋、美しく形の良い唇に目を奪われる。

僕の心臓がバクンバクンと音を立てている。

僕の唇とリーゼロッテの唇が触れ合う……彼女とする二度目のキス。

そのとき強い魔力の波動を感じた。

リーゼロッテから唇を離し海に目をつけると、人の頭くらいの大きさの水の塊が高速で飛んで来るのが見えた。

しかも水の塊は一つや二つじゃない!


しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

処理中です...