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第一章

38話「執事は見た……!」シャイン・サイド

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――シャイン・サイド――


「ハルト様、リーゼロッテ様、お掃除が終わりましたよ……」

ハルト様とリーゼロッテ様を迎えにガゼボに向かうと、リーゼロッテ様に膝枕をされて寝息を立てるハルト様と、ハルト様に膝枕をしたまま眠っているリーゼロッテ様のお姿が目に入りました。

ハルト様とリーゼロッテ様を二人きりで過ごさせるために、魔女様と示し合わせて屋敷のお掃除をするという計画を立てたのですが。

思いの外お掃除に熱が入ってしまい、お二人を呼びに行くのが遅くなってしまいました。

「私が気を揉まなくても、お二人は上手くやっているようですね」

ハルト様は呪いが解けなければ一年後に死ぬと分かっていても、呪いを解くおつもりはないようです。

「ハルト様には『地獄だろうが魔界だろうがどこへでもお供する』と言いましたが、本心を言えばハルト様には呪いを解いてほいのです」

リーゼロッテ様は気立ての良い娘さんですし、ハルト様に少なからず好意を抱いているご様子。

ハルト様もリーゼロッテ様のことが気になっているようですし、このままお二人が両思いになって呪いが解けたら。

傾きかけた日の光がガゼボに届き、ハルト様とリーゼロッテ様を照らす。

その時一瞬だけハルト様の髪が金色に戻ったように見えました。

「ハルト様!」

思わず声をかけると、ハルト様とリーゼロッテ様が目を覚ました。

「ん……シャインくんか?」

「ふぁ……シャインさんおはようございます」

お二人が寝ぼけ眼を擦りながら顔を上げられた。

「えっ……! 僕はいつからリーゼロッテの膝の上に……!?」

「すみません! ハルト様が枕がほしそうだったので、勝手に膝枕しました」

「嫁入り前の娘が破廉恥な……!」

「私はすでにハルト様にお嫁入りしていますが?」

「そうなんだけど、そういう意味じゃなくて……!」

ハルト様のあの慌て方を見るに、どうやら同意の上での膝枕ではなかったようです。

夕日はすでに山の影に姿を隠し、ハルト様の髪は普段と同じ深い茶色に変わっておりました。

先程の光景は見間違いだったのでしょうか? ハルト様の髪が金色に見えたのですが。

「女の子がそんなことするのは、はしたないだろ」

「すみません、ハルト様」

「あっ、ごめん……リーゼロッテを傷つけるつもりは……」

もしかしてお二人は互いに難からず思い合っているのかもしれません。

眠っている間は素直な気持ちが外に漏れているのでしょうか?

それで呪いにより茶色く変色したハルト様の髪が、呪いをかけられる前の金色にもどっていた?

お二人が素直に気持ちを口にしたら、ハルト様にかけられた呪いを解く糸口がみつかるかもしれません。

「だとしたらわたくしのすることはひとつ。素直になれないハルト様と、奥手なリーゼロッテ様の恋を全力で応援しなくてはいけませんね」

この瞬間からわたくしは、全力でお二人の恋を応援することに決めたのです。



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