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第一章

3話「意地悪な双子の妹」

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幸い、話している間に紅茶が少し冷めたので、ちょっと熱いと思う程度ですみました。熱々の紅茶だったら火傷を負っているところです。

ドレスに染みが出来てしまいました。王宮に着ていけるドレスはこれ一着しかないのに。

デリカが殿下に見えない角度で口の端を上げました。

「いいざまだな! 誕生日に俺や母上が贈ったドレスやアクセサリーを『こんな趣味の悪いドレス着れない』と言ってデリカに押し付けている貴様には紅茶の染みのついたドレスがお似合いだ!」

「お言葉ですが殿下、贈り物は私の手に届くことなくデリカの部屋に……」

王妃殿下や王太子殿下からの贈り物が私の手に届いたことはない。

お二人からの贈り物を身に着けたデリカが私の部屋を訪れ、

「どう素敵なドレスとアクセサリーでしょう? 王妃様とトレネン様に頂いたのよ。お姉様当てだったけど、お姉様にはこんな華やかなドレスは似合わないから私が着てあげたわ」

と告げ、そのとき初めて私は贈り物を目にするのだ。

「そうなんですトレネン様! お姉様ったら王妃様やトレネン様からの贈り物の蓋も開けもせずに、プレゼントの入った箱ごと私に投げつけてくるんですよ。王族への礼儀も何もあったものではありませんわ」

「お前が王家からのプレゼントを蓋も開けずにデリカに押し付けていたと公爵夫妻も証言している! 観念しろリーゼロッテ! 公爵夫妻がもらしていたぞ『リーゼロッテは嘘つきで根性が曲がっていて、気弱な性格のデリカをいつもいじめているどうしょうもない娘だ。娘はデリカ一人で良かった』とな!」

双子の妹のデリカは子供の頃から要領と愛想がよく、両親は妹のデリカばかりを可愛がっておりました。

両親は長女の私には厳しく、日の出前から夜中までイスに縛り付けて勉強させました。

次女のデリカのことは甘やかし、家庭教師がデリカにちょっとでも厳しいことを言うとすぐに首にしていました。

両親は妹を連れてサーカスや芝居小屋や別荘によく遊びに行ってました。

私はいつも屋敷でお留守番をさせられていました。

両親がデリカの嘘を信じて私を悪く言ったのか、それともデリカが嘘つきだと知りつつそれでもデリカの肩を持ったのか私には分かりません。

ですがこの瞬間、両親の期待に答え、いい子にしてきたのが馬鹿らしく思えました。

「リーゼロッテ・シムソン! 悪魔の申し子のような貴様との婚約を破棄し、新たな婚約者に清楚で可憐なデリカを指名する!」

「嬉しいですわトレネン様」

隙間なく寄り添い合うデリカと王太子殿下。

デリカが身につけているのは殿下の髪と瞳の色と同じ桃色のドレス、イヤリングは桜色のシャンパンガーネット、ネックレスはピンク色のローズクオーツ。

殿下のジュストコールの色はデリカの瞳の色と同じラベンダー色(薄い紫色)。

私の瞳の色はロイヤルパープル(濃い紫色)なので、私の瞳の色に合わせて服を着てくれた訳ではなさそうです。

なるほど……王太子殿下とデリカは以前から出来ていたようですね。今回のことも二人で示し合わせて計画していたのでしょう。

二人が婚約するのは別に構いませんが、まともな令嬢教育すら受けていないデリカに、王太子殿下の婚約者が務まるでしょうか?

王太子妃教育は、公爵家の淑女教育の百倍は辛いのですよ。


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