2 / 99
第一章
2話「公爵令嬢リーゼロッテ・シムソン」
しおりを挟む――リーゼロッテ・サイド――
――翌日・王宮――
今日はよく晴れていて小鳥のさえずりが聞こえ、そよ風が吹いてとても心地良いです。
こんな日に婚約者と私の双子の妹と王宮の東屋で飲むダージリンティーはとても……。
「リーゼロッテ・シムソン! 貴様との婚約を破棄する!」
……とても苦いです。しかも冷たいです、私はアイスティーを注文したでしょうか? いえそんなはずがありません、熱々の紅茶を注文したはずです。
近くにいたメイドに視線を向けると顔を逸らされました。王太子殿下とデリカのお茶は湯気を立てているので、私のカップにだけ故意に冷めた紅茶を注いだようです。
殿下の隣の席を見るとデリカが勝ち誇った顔をしていました。デリカが何かしたんでしょうね。紅茶のことも、婚約破棄のことも。
「殿下、理由をお伺いしてもよろしいですか?」
「貴様が双子の妹のデリカを、公爵家や学園でいじめているからだ!」
「えっ?」
私がデリカをいじめている? 私がデリカにいじめられているのではなくて?
「とぼけるな! お前がデリカのドレスやアクセサリーを盗んでいることは知っているのだぞ! デリカを階段から突き落としたり、噴水に突き落としたりしていることもな! さらに自分のした失敗を全てデリカのせいにしているそうじゃないか! 先日も公爵が大事にしている高価な花瓶を割ったのを、デリカのせいにしたそうだな! お前はとんでもない悪女だ!」
殿下のおっしゃった言葉を理解するのに、しばらく時間がかかりました。全部濡れ衣です。
「いえ、それは私がデリカにされていることです。先日お父様が大切にされていた花瓶を割ったのもデリカで……」
「白を切っても無駄だ! 使用人が銀色の髪の若い女が公爵の書斎から逃げていく後ろ姿を目撃している!」
「お言葉ですが殿下、デリカと私は双子の姉妹。デリカも私と同じ銀髪です。使用人はお父様の書斎から逃げて行った女は何色のドレスを着ていたと話していましたか?」
公爵家には銀髪の若い女は二人いるのです。
幼い頃から両親や周りの大人に取り入るのが上手かったデリカは、両親や使用人に愛され、桃色や赤や黄色などの華やかなドレスを身にまとっていました。
対して私は幼少の頃からデリカに貶められ、祖母のお古のドレスを身につけてきました。
私の持っているドレスは、時代遅れの型で、地味な茶色や濃い藍色の服ばかりです。
「お父様の書斎から逃げた女が桃色や赤のドレスを着ていたら……」
「ひどいわ! お姉様はどうしてそんな事を言うの? どうしても私にお父様の大切にしている花瓶割った罪をなすりつけたいのね?」
デリカが眉尻を下げ泣き真似を始めた。
「大丈夫だよデリカ俺がついてる、泣かないでくれ」
嘘泣きをするデリカを殿下が慰めました。なんでしょうこの茶番は?
「この嘘つきの性悪女め! 清らかで純粋無垢で優しいデリカを泣かすとは何様のつもりだ!」
トレネン殿下が自身の使っていたカップを持ち上げ、カップの中身を私にかけた。
☆☆☆☆☆
45
お気に入りに追加
2,196
あなたにおすすめの小説
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる