1 / 99
第一章
1話「プロローグ」
しおりを挟む
――プロローグ――
――二十九年前、王宮にて――
『違う! 僕ではない! 僕は何もしていない! 父上、母上、信じて下さい!』
『魔女の呪いを受けたその姿で何を言う!』
『ウィルバート、母はあなたに失望しましたよ』
『見苦しいですよウィルバート兄上』
『ワルモンド、君がしたことなのだろう! 素直に罪を認めよ!』
『往生際が悪いぞウィルバート! 只今を持ってお前を廃太子とする! 国は次男のワルモンドに継がせる! せめてもの温情で王族の席だけは抜かずにおいてやる。北の森にある屋敷でおとなしくしていろ!』
『待って下さい父上!』
『ウィルバート、あなたは王族の恥です。二度と顔を見せないでちょうだい』
『母上そんな……!』
『さようなら、ウィルバート兄上』
『ワルモンド本当のことを言うんだ!』
『ウィルバートを外に連れて行け!』
『『『かしこまりました! 陛下!』』』
『僕はなにもしていない! 本当なんです! 父上ーー! 母上ーー!』
☆
――現在、北の森――
「お目覚めですかハルト様」
天蓋付きのベッド、窓から差し込む木漏れ日、小鳥のさえずり。
鼻孔をくすぐるアップルティーの香り、心配そうに僕を見つめる執事の顔。
そうか、あれは夢だったのか……。
「おはようシャインくんか、ちょっと嫌な夢を見てね」
モーニングティーを受け取り一口飲む、温かい。
「夢ですか?」
不安そうな顔でシャインくんが問う。
「そう城を追い出されたときの夢、もう三十年近く昔のことなのにね」
随分昔の出来事なのに昨日のことのように鮮明な映像だった、夢って怖いね。いい加減忘れてもいいだろうに。
「もしかしたらハルト様がその夢を見たのは、この手紙のせいかもしれませんね」
「手紙?」
シャインくんが差し出した銀色のトレイの上には白い封筒とペーパーナイフが乗っていた。
「今朝王城から使者がやってきて、この手紙を置いて行きました」
ワルモンドがよこした使者か……どうせろくなことが書いてないんだろう。
「王の蝋印の押された封筒ね……嫌な予感しかしないな」
僕はティーカップをテーブルに戻し、手紙とペーパーナイフを受け取った。
これが僕の呪いを解くことに繋がるなんて、このときは想像だにしなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・本日(2023/09/16)新作小説を3作品アップしました。
約60,000文字の中編2作品と、約10,000文字の短編1作です。
よろしくお願いします、
「妹の身代わりに殺戮の王子に嫁がされた王女。離宮の庭で妖精とじゃがいもを育ててたら、殿下の溺愛が始まりました」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/569801954
「不治の病にかかった婚約者の為に、危険を犯して不死鳥の葉を取ってきたら、婚約者が浮気してました。彼の病が再発したそうですが知りません」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/580801989
「完璧な淑女と称される王太子妃は芋ジャージを着て農作業をする。 ギャップ萌え~の効果で妖精王が釣れました」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/430802006
――二十九年前、王宮にて――
『違う! 僕ではない! 僕は何もしていない! 父上、母上、信じて下さい!』
『魔女の呪いを受けたその姿で何を言う!』
『ウィルバート、母はあなたに失望しましたよ』
『見苦しいですよウィルバート兄上』
『ワルモンド、君がしたことなのだろう! 素直に罪を認めよ!』
『往生際が悪いぞウィルバート! 只今を持ってお前を廃太子とする! 国は次男のワルモンドに継がせる! せめてもの温情で王族の席だけは抜かずにおいてやる。北の森にある屋敷でおとなしくしていろ!』
『待って下さい父上!』
『ウィルバート、あなたは王族の恥です。二度と顔を見せないでちょうだい』
『母上そんな……!』
『さようなら、ウィルバート兄上』
『ワルモンド本当のことを言うんだ!』
『ウィルバートを外に連れて行け!』
『『『かしこまりました! 陛下!』』』
『僕はなにもしていない! 本当なんです! 父上ーー! 母上ーー!』
☆
――現在、北の森――
「お目覚めですかハルト様」
天蓋付きのベッド、窓から差し込む木漏れ日、小鳥のさえずり。
鼻孔をくすぐるアップルティーの香り、心配そうに僕を見つめる執事の顔。
そうか、あれは夢だったのか……。
「おはようシャインくんか、ちょっと嫌な夢を見てね」
モーニングティーを受け取り一口飲む、温かい。
「夢ですか?」
不安そうな顔でシャインくんが問う。
「そう城を追い出されたときの夢、もう三十年近く昔のことなのにね」
随分昔の出来事なのに昨日のことのように鮮明な映像だった、夢って怖いね。いい加減忘れてもいいだろうに。
「もしかしたらハルト様がその夢を見たのは、この手紙のせいかもしれませんね」
「手紙?」
シャインくんが差し出した銀色のトレイの上には白い封筒とペーパーナイフが乗っていた。
「今朝王城から使者がやってきて、この手紙を置いて行きました」
ワルモンドがよこした使者か……どうせろくなことが書いてないんだろう。
「王の蝋印の押された封筒ね……嫌な予感しかしないな」
僕はティーカップをテーブルに戻し、手紙とペーパーナイフを受け取った。
これが僕の呪いを解くことに繋がるなんて、このときは想像だにしなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・本日(2023/09/16)新作小説を3作品アップしました。
約60,000文字の中編2作品と、約10,000文字の短編1作です。
よろしくお願いします、
「妹の身代わりに殺戮の王子に嫁がされた王女。離宮の庭で妖精とじゃがいもを育ててたら、殿下の溺愛が始まりました」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/569801954
「不治の病にかかった婚約者の為に、危険を犯して不死鳥の葉を取ってきたら、婚約者が浮気してました。彼の病が再発したそうですが知りません」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/580801989
「完璧な淑女と称される王太子妃は芋ジャージを着て農作業をする。 ギャップ萌え~の効果で妖精王が釣れました」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/430802006
46
お気に入りに追加
2,184
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる