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12話「冷たい両親」エマ(妹)視点・ざまぁ回

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――エマ(妹)視点――

メイドに連れて行かれた先は応接室だった。応接室に着くまでにメイドに三度もはたかれた。

「王太子殿下、旦那様、奥様、罪人を連れて参りました」

応接室に入るとお父様とお母様とデレック様がいた。

「お父様! お母様! デレック様! 助けて! このメイドが私に酷いことをしたのよ! バケツの水をかけたり、頬を打ったりしたのよ! ムチで打ったあと家から叩き出して!!」

バシーン!

すごい音がして目の前に火花が飛ぶ、気がつくと私は扉まで飛ばされていた。

遅れて頬に痛みが走る、メイドに叩かれたときの比ではない。

手で頬を押さえ顔を上げると、お父様が鬼の形相でこちらを睨んでいた、お父様の右手は固く握られている。

……私、お父様に殴られたの?

「お前のような恥知らずは、わしの娘ではない!」

「お父様……?」

「王太子殿下の婚約者という立場を利用して国庫の金を横領していたそうね? ボーゲン公爵家の名に泥を塗るなんてとんでもない娘だわ、恥を知りなさい!」

お母様が持っていた扇子で私の肩を叩いた。

「止めて! お父様! お母様! 何をするの? どうしてぶつの? 私は二人の可愛い子供でしょう? デレック様も見てないで助けてよ!」

「お前との婚約は既に破棄されている! 気安く僕の名前を呼ぶな!!」

デレック様がゴミを見る目で私を見る。

「お前を公爵家から除籍した! もはやお前はわしの娘ではない!!」

お父様が眉間にシワを寄せ怒鳴る、私が公爵家から除籍された? 私はもう貴族じゃないの? 平民なの? どうしてこんなことになっているの??

「みんなどうしたの? 昨日まで私に優しくしてくれたじゃない? 私よエマよ、みんなの可愛いエマよ! 分からないの?! 目が覚めたらアダリズお姉様の姿になっていたの! これは何かの呪よ! お願い助けて!!」

お父様とお母様とデレック様が顔を見合わせ、ため息をついた。

「こいつは何を言っているんだ?」

お父様がメイドに尋ねる。

「旦那様、この女は目覚めたときからこの様子です。おそらく頭がおかしくなった振りをして罪から逃れようとしているのかと」

「罪を逃れるために精神を患った振りをするとはな……どこまでも小賢こざかしい女だ!」

メイドの話を聞いたデレック様が、私をさげすむような目で見たあと舌打ちした。

「アダリズ・ボーゲン! 貴様が僕の婚約者である立場を悪用し国庫の金を着服したことは分かってる! お前の部屋を捜索すれば着服した金で買った宝石やアクセサリーがすぐにみつかるだろう! 潔く罪を認めろ!!」

デレック様の放った言葉を聞いてめまいがした。

昨日私は、アダリズお姉様の部屋にデレック様からもらった宝石やアクセサリーの一部を隠した。

そして私は今アダリズお姉様の姿をしている、アダリズお姉様の部屋から宝石が見つかったら言い逃れが出来ない。横領の罪で捕まり処刑されてしまう。

「違うわ! 私の名前はエマよ! アダリズお姉様じゃないわ!! 呪いを……きっと魔女に呪いをかけられたのよ、それでこんな姿に……! お父様、お母様、デレック様、お願い信じて!!」

「あきれたな、誰がそんな夜迷いごとを信じると言うんだ!」 

「アダリズ、往生際が悪いぞ!」

「アダリズ、観念しなさい!」

私は泣きなが懇願した、だがお父様もお母様もデレック様も信じてくれなかった。


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