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7話「悪魔との契約」
しおりを挟む私は悪魔の本グロルの話を聞き、私はしばし呆然としていた。
祖母の人生が壮絶過ぎた。
祖母は自分から全てを奪った憎いいとこの体と己の体を入れ替え、いとこへの復讐を果たした。
だがイザベルはいとこの体を手に入れても幸せにはなれなかった。
フリーダは誰一人愛せなかった……かつて己を裏切りフリーダの夫になったバナンも、バナンとフリーダの息子のゲリーも、息子の嫁のクレイも……。
フリーダは誰にも真実を打ち明けることができず、孤独のまま死んでいった。
かつて私はつらいときに、祖母が生きていたら、祖母によく似た容姿の私を愛してくれたかしら? などと妄想し現実から逃避していたが、悪魔の本の話を聞く限り私が祖母に愛されることはなかっただろう。
フリーダはフリーダの息子と息子の嫁を恨んでいた、孫娘を愛してくれるとはとても思えない。
☆
『アダリズと言ったな? そなたからも憎悪の感情を感じる、理由を話してみよ、憎い相手がいるのならば手を貸そう』
私は悪魔の本グロルに全てを話した。両親から精神的な虐待を受けて育ったこと、家族の中で唯一の味方だと思っていた妹が私を裏切り婚約者と浮気していたこと。
婚約者が妹と共謀し私に冤罪を着せ殺そうとしていることを……。
『恨みを晴らしたいか?』
「ええ、もちろんです」
このまま明日になれば私は王太子に冤罪を着せられ、捕まって処刑されてしまう。
悪魔の力を借りずとも冤罪を晴らす方法がないわけでもない。だが私は知りたいのだ、醜い私の体と美しい己の体が交換されたとき、エマがどんな反応するのかを。
私の体は多少寝不足と栄養失調で弱ってはいるが、イザベルの体のように毒を飲まされて寝たきりという訳ではない、体を交換した衝撃で死ぬことはないだろう。
フリーダの魂がイザベルの体に入ったときのように、入れ替わった衝撃であっさり死なれたのではつまらない。
『ならばわしを手に取れ』
グロルに言われるまま、私は悪魔の本に手を触れた。
その瞬間、何かが私の中を駆け抜けていった。偉大なる叡智、パワーが手に入ったような錯覚に陥る。
『体を交換したい相手に、お主の人生が羨ましい、人生を交換したいと言わせよ、嘘でもおべんちゃらでも嫌みでも構わん
フリーダは弱ったイザベルに【美しい容姿を持ち、家族に愛され、素敵な婚約者がいるあなたが羨ましいわ、あなたの人生と私の人生を交換したいぐらい。あらごめんなさい婚約者は『いる』ではなくて『いた』でしたわね。それと美しい容姿の前に『かつて』とつけるべきだったかしら? いまのイザベルは頬は痩せこけ、顔も青白くて、かつての美しさの面影すら残っていないものね。家族に愛されていたのも過去の話よね、いまのイザベルは薬代のかかる金食い虫の厄介者ですものね】と言ったのだ。
そんな嫌みともとれる言葉でも構わん、本を手にしたまま相手にお主の人生を【羨ましい】【そんな人生を送りたいと】言わせるのだ、さすれば相手とお主の心と体を交換してやろう』
エマはいつも私の人生を羨むような言葉をいつも口にしていた「お姉様は完璧な淑女ですわ」「お姉様はお勉強が出来て、ピアノもダンスも得意で羨ましいですわ。私なんてお姉様の足元にも及びませんもの」「王太子殿下が婚約者だなんて羨ましいですわ」と。
「お任せください、エマにそのような言葉を言わせるのは簡単ですわ」
王太子殿下、エマ、あなたたちのことは絶対に許さない、私をはめようとしたことを死んでも後悔させてあげるわ。
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