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三話「アルビー・レーヴィットの半生」

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ーーアルビー・レーヴィット視点ーー


幼い頃から僕には、前世の日本で暮らした記憶があった。

前世の僕は、引きこもりオタクで部屋で乙女ゲームばかりしていた。

一番気に入っていた乙女ゲームがあるんだけど……そのタイトルも内容もなぜだか思い出せない。

前世の僕は黒髪黒目でヒョロヒョロ痩せ瓶底眼鏡をかけていて、冴えないオタクを絵に書いたような男だった。

そんな僕が、現世では茶色の髪に翡翠色の瞳の美少年になっていたのには驚いた。

スマホもゲームも冷蔵庫もない。納豆や梅干しや味噌汁やたくあんや白米や寿司や天ぷらもない生活に、初めは慣れずにホームシックならぬ前世シックになっていた。

だけど家族がとても優しくしてくれたので、しだいに現世の生活にも慣れていった。たまに梅干しを食べたくなるこたはあるけとね。
 
僕はレーヴィット公爵家という裕福な家の長男として生まれた。

優しくて頼りになるお父様とお母様、おてんばなところもあるけど可愛い双子の妹。

何不自由のない生活。おまけに前世で大好きだった絵が好きなだけ描けて、僕は幸せだった。

僕が良く描くのは前世の絵本で見た、精霊や妖精の絵。彼らの絵を描いてると癒されるんだよね。

あとはときどき前世で読んだ本に書いてあったルーン文字を、妹の持ち物に描いたり。リーナはおてんばで幼い頃よく怪我をして帰ってきたからおまじないの変わり。気休めだけどね。

いつの間にか絵がなくなっていたり、妹のリーナが「お兄様の周りを精霊が飛んでいるのを見ましたわ」と言ったり、お母様が「絵は精霊が気に入って持っていってしまったみたいね」と言うぐらいで、特別変わったことはなく穏やかにくらしている。

リーナってば精霊や妖精が本当にいると信じているんだ。しっかりしているように見えてまだまだ子供だなぁ。お母様もリーナの話に付き合って、精霊が絵を持って行ったなんて言って。僕は精霊や妖精の絵を描くのは好きだけど、精霊や妖精を信じるほど子供じゃないよ。 



☆☆☆☆☆



※アルビーの描いた絵がたまたまこの世界の精霊の姿に似ていたので、精霊が自分の姿を描いて貰えたと勘違いして持っていってしまいました。その代わり精霊の加護を与えられています。本人にその自覚はありません。
 
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