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一話「兄様が僕の体をこしょこしょする話①」

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「エミリー明日誕生日だろう、これ受け取ってくれ」

「エミリー、オレからも誕生日プレゼントがあるんだ」

「ボクもプレゼントがあるんだ、受け取って」

三人のクラスメイトから、紙袋に入ったプレゼントをもらった。

「みんなありがとう」

笑顔でお礼を言うと、みんなの顔が夕日のように赤く染まった。

暑いのかな?

「さらさらの髪に折れそうなほど細い腰、エミリーは本当にかわいいな」

「本当、大きな目に白い肌、女の子より愛らしいよね」

華奢な体躯も女の子みたいな顔立ちもコンプレックスなので、褒められてもあまり嬉しくない。

「なぁエミリー、今度うちに遊びに来いよ」

「うん、いいよ」

クラスメイトの一人に手を握られた。顔が近いよ。そんなに顔を近づけなくても声は聞こえるよ。

「抜け駆けするな! エミリー、オレの家にも遊びに来てくれ!」

別のクラスメイトに反対の手を握られる。

「ボクの家にも!」

もう一人のクラスメイトに腕を掴まれた。

「うん、順番にね」

クラスメイトの顔が近い。だからそんなに顔を近づけなくても聞こえてるよ。

「悪いけどそれはだめだ」

後ろから手が伸びてきて、ぎゅっと抱きしめられた。

「うちのエミリーは学校以外の外出も外泊も禁止なんでね」

「兄様!」

兄様が僕の髪にキスを落とす。

「「「せっ、せせせ……生徒会長っっ!!」」」

兄様の登場に僕の腕や手を握っていたクラスメイトが、ぱっと手を離し三歩……いや五歩後ろに下がった。みんな顔が青いよ? 今度は寒いのかな?

兄様が冷血無比な生徒会長なんてうわさされているから、その兄様の登場にびっくりしちゃったのかな?

兄様はとってもやさしくて穏やかな人なのに、みんな誤解してるよ。

「今の約束はなかったことにしてくれるかな、いいよね?」

兄様の言葉に、皆が無言でこくこくとうなずく。

シュトラウス公爵家って友達の家に遊びに行くの禁止されてたんだ。知らなかった。

残念だけど、兄様がだめっていうなら仕方ない。 

「みんなごめんね」

みんなは首を縦に振るだけで一言も話さない。急にどうしたんだろう?

「それからシュトラウス公爵家の人間は、当主の許可なくプレゼントのたぐいは受け取れないんだ。悪いけどこれも持って帰ってくれるかな」

兄様が僕の手からプレゼントの入った紙袋を取り上げると、みんなに付き返した。

家にそんなしきたりあったの? 僕が知らなかっただけかな?

「どうしてもというなら、シュトラウス公爵家に送ってもらおうか、そのときは送り主と中身についていろいろと審査させてもらうが」

三人が血の気の引いた顔でふるふると首を横に振った。

「エミリーのお友達は聞き分けが良くて助かるよ。じゃあ帰ろうかエミリー?」

「はい兄様、またねみんな」

みんなに手を振って別れた、けど誰も手を振り返してくれなかった。

みんなの顔は青を通り越して白くなっていた。口からエクトプラズムが出ているような気がするけど、僕の見間違いかな?


◇◇◇◇◇

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