1 / 15
1話
しおりを挟む
「公爵令嬢アデリナ・シュトローム貴様との婚約を破棄する!
貴様が公爵令嬢であることを鼻にかけ、俺の真実の愛の相手である男爵令嬢のイルゼ・シャオムをいじめた!
よって国外追放を命じる!」
赤い髪を振り乱し、ルビーのような真っ赤な目を釣り上げ、第一王子カーリン・ブラーゼが言い切った。
「カーリン様、あたし怖かった……!」
ふわふわの桃色の髪に愛らしい顔立ちのイルゼ嬢が、ピンクの瞳にいっぱいの涙を浮かべ、豊満な胸をアホ王子の腕に押し付ける。
「オレがついてるから大丈夫だよ、イルゼ」
カーリン・ブラーゼは鼻の下をのばし、イルゼ嬢を抱きしめた。
「王子殿下との婚約破棄、承りました」
アホ王子が、私がどのような方法で男爵令嬢のイルゼ嬢を虐めたかを鼻息荒く語っている。
アホ王子は、私がイルゼ嬢を噴水に突き落とし、イルゼ嬢を階段から突き落とし、イルゼ嬢のお弁当に虫を入れたと言っている。
私には全く身に覚えがないことなので、適当に聞き流す。
学園に入学してからアホ王子は、華奢で小柄で愛らしい外見のイルゼ嬢に夢中。
王子は整った顔立ち以外、なんの取り柄もないポンコツ。
中身空っぽ同士、実にお似合いだと思う。
冤罪でも何でもいい、アホ王子との婚約を破棄できるなら大歓迎だ。
卒業パーティに参加していた学生も先生も、王子と男爵令嬢の真実の愛を妨げ、男爵令嬢を虐めていた(濡れ衣)私が、断罪されるのを笑顔を浮かべ見物している。
「王子殿下、婚約破棄の書類にサインしてください」
王子とイルゼ嬢が学園でイチャイチャしているのを見た日から、いつかこんな日が来ると思って婚約破棄に必要な書類を持ち歩いていた。
まさか卒業パーティーで大衆の面前で婚約破棄されるとは思わなかったが、顔と身分しか取り柄がない怠け者で浪費家で浮気者のアホ王子と縁が切れるのは、とても嬉しい。
アホ王子と婚約して五年、厳しい王子妃教育に明け暮れた。
王子妃教育の合間に、アホ王子に割り振られた書類を代わりに片付け。
学園に入学してからは生徒会会長をしているアホ王子に代わり、生徒会の仕事をこなしてきた。
そして、手柄は全てアホ王子に盗まれてしまった。
その苦労の日々も今日で終わる。
どうせならもっと早く婚約を破棄してほしかったわ。
感極まって私の瞳から涙がこぼれる。
それを見たアホ王子とイルゼ嬢が、何か勘違いしたようです。
「アデリナ、今更後悔しても遅いぞ!」
「婚約破棄されて人前で泣くなんてみっともないです~」
誰が顔しか取り柄のないアホ王子と、胸のでかさしか取り柄のないビッチ令嬢のために泣くか!
しかしこの二人に、私が涙を流した理由を説明してやる義理はない。
私はアホ王子の署名入りの婚約破棄の書類をポケットにしまい、
「ごきげんよう、王子殿下、イルゼ嬢。
もう二度とお会いすることはないでしょう」
優雅にカーテシーをして踵を返した。
悪者の私が去ったあと、卒業パーティの会場から歓声が沸き起こり、卒業生がアホ王子とビッチ男爵令嬢をたたえている声が聞こえたが、今の私には関係のないことだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
下記3作品を「第16回恋愛小説大賞」にエントリーしてます! 投票よろしくお願いします!!
「夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた」 【完結保証・2月1日から投稿再開します】https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233694097 #アルファポリス
【完結】「彼女を愛することはない~王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」 【2月1日から後日談を投稿します。後日談はアルファポリス限定公開です】https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804 #アルファポリス
「卒業パーティーで王子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る~私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/266624366 #アルファポリス
貴様が公爵令嬢であることを鼻にかけ、俺の真実の愛の相手である男爵令嬢のイルゼ・シャオムをいじめた!
よって国外追放を命じる!」
赤い髪を振り乱し、ルビーのような真っ赤な目を釣り上げ、第一王子カーリン・ブラーゼが言い切った。
「カーリン様、あたし怖かった……!」
ふわふわの桃色の髪に愛らしい顔立ちのイルゼ嬢が、ピンクの瞳にいっぱいの涙を浮かべ、豊満な胸をアホ王子の腕に押し付ける。
「オレがついてるから大丈夫だよ、イルゼ」
カーリン・ブラーゼは鼻の下をのばし、イルゼ嬢を抱きしめた。
「王子殿下との婚約破棄、承りました」
アホ王子が、私がどのような方法で男爵令嬢のイルゼ嬢を虐めたかを鼻息荒く語っている。
アホ王子は、私がイルゼ嬢を噴水に突き落とし、イルゼ嬢を階段から突き落とし、イルゼ嬢のお弁当に虫を入れたと言っている。
私には全く身に覚えがないことなので、適当に聞き流す。
学園に入学してからアホ王子は、華奢で小柄で愛らしい外見のイルゼ嬢に夢中。
王子は整った顔立ち以外、なんの取り柄もないポンコツ。
中身空っぽ同士、実にお似合いだと思う。
冤罪でも何でもいい、アホ王子との婚約を破棄できるなら大歓迎だ。
卒業パーティに参加していた学生も先生も、王子と男爵令嬢の真実の愛を妨げ、男爵令嬢を虐めていた(濡れ衣)私が、断罪されるのを笑顔を浮かべ見物している。
「王子殿下、婚約破棄の書類にサインしてください」
王子とイルゼ嬢が学園でイチャイチャしているのを見た日から、いつかこんな日が来ると思って婚約破棄に必要な書類を持ち歩いていた。
まさか卒業パーティーで大衆の面前で婚約破棄されるとは思わなかったが、顔と身分しか取り柄がない怠け者で浪費家で浮気者のアホ王子と縁が切れるのは、とても嬉しい。
アホ王子と婚約して五年、厳しい王子妃教育に明け暮れた。
王子妃教育の合間に、アホ王子に割り振られた書類を代わりに片付け。
学園に入学してからは生徒会会長をしているアホ王子に代わり、生徒会の仕事をこなしてきた。
そして、手柄は全てアホ王子に盗まれてしまった。
その苦労の日々も今日で終わる。
どうせならもっと早く婚約を破棄してほしかったわ。
感極まって私の瞳から涙がこぼれる。
それを見たアホ王子とイルゼ嬢が、何か勘違いしたようです。
「アデリナ、今更後悔しても遅いぞ!」
「婚約破棄されて人前で泣くなんてみっともないです~」
誰が顔しか取り柄のないアホ王子と、胸のでかさしか取り柄のないビッチ令嬢のために泣くか!
しかしこの二人に、私が涙を流した理由を説明してやる義理はない。
私はアホ王子の署名入りの婚約破棄の書類をポケットにしまい、
「ごきげんよう、王子殿下、イルゼ嬢。
もう二度とお会いすることはないでしょう」
優雅にカーテシーをして踵を返した。
悪者の私が去ったあと、卒業パーティの会場から歓声が沸き起こり、卒業生がアホ王子とビッチ男爵令嬢をたたえている声が聞こえたが、今の私には関係のないことだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
下記3作品を「第16回恋愛小説大賞」にエントリーしてます! 投票よろしくお願いします!!
「夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた」 【完結保証・2月1日から投稿再開します】https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/233694097 #アルファポリス
【完結】「彼女を愛することはない~王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」 【2月1日から後日談を投稿します。後日談はアルファポリス限定公開です】https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804 #アルファポリス
「卒業パーティーで王子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る~私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/266624366 #アルファポリス
34
お気に入りに追加
3,754
あなたにおすすめの小説
金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。
銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」
私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。
「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」
とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。
なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。
え?どのくらいあるかって?
──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。
とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。
しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。
将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。
どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。
私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?
あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
需要が有れば続きます。
サレ妻王太子妃は実家に帰らせていただきます!~あなたの国、滅びますけどね???
越智屋ノマ@甘トカ【書籍】大人気御礼!
恋愛
小国の王女だったヘレナは、大陸屈指の強国「大セルグト王国」の王太子妃となった。
ところが夫である王太子はふしだらなダメ男。怜悧なヘレナを「お高くとまった女」と蔑み、ヘレナとは白い結婚を貫きながらも他の女を侍らせている。
ある日夫の執務室を訪ねたヘレナは、夫が仕事もせずに愛妾と睦び合っている【現場】を目撃してしまう。
「殿下。本日の政務が滞っておいでです」
どこまでも淡々と振る舞うヘレナに、罵詈雑言を浴びせる王太子と愛妾。
――あら、そうですか。
――そこまで言うなら、実家に帰らせていただきますね?
あなたの国、滅びますけどね???
祖国に出戻って、私は幸せになります。
冷遇された王妃は自由を望む
空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。
流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。
異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。
夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。
そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。
自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。
[もう、彼に私は必要ないんだ]と
数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。
貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる