上 下
31 / 50
2章 学園パートの始まり

第30話 イベント終了

しおりを挟む

 リアムが勇者の力を覚醒して以降、当然ながら課外授業は強制終了となった。

 生き残っている傭兵と講師達が生徒達を王都へ避難させ、続けて王都騎士団への通報も行われる。

 関係者が後処理を続けていく一方、リアムは気絶したまま王都へと運び込まれた。

 王都までは俺達も一緒だったのだが、マリア嬢が気絶中のリアムをレイエス家の屋敷へ搬送すると言って別れることに。

「大丈夫かな?」

「大丈夫じゃない?」

 心配そうに見送るリリたんに、俺は楽観的な意見を返す。

 本来なら見れないリアム視点を知っているからね。

 ――気絶したリアムはマリア嬢の実家に搬送されたあと、王都にいる最高位の医者から診察を受ける。

 単なる魔力切れによる気絶と診断され、二日後には目を覚ますはずだ。

 ただ、事態が動くはここから。

 手の甲に浮かんだ『勇者の紋章』は当然ながら注目を惹く。同時にマリア嬢が語った現場の様子にも。

 これらの事実がマリア嬢の父であるジョージ・レイエス侯爵の耳に入るのだ。

 王国貴族の中でも重鎮である彼は娘から聞いた事実、リアムの手に浮かぶ紋章の情報を持って王の元へ。

 それを聞いた王は勇者の伝説に詳しく、創造の女神リュケルを崇め奉る『リュケル教会』へ更なる助言を求める。

 話を聞いたリュケル教会はリアムを『勇者』と断定し、同時に――

『勇者が誕生したという事実は、裏を返すと世界に危機が迫っている証拠とも言えます』

 と、語るわけ。

 それを聞いた王様はゴクリと唾の飲み込み、プレイヤーには「次の展開へ進むぜ!」と示すわけだ。

 そして、学園パート中盤で勇者の剣を抜き、終盤で魔王の存在が明らかになる――という流れ。

 今日で学園パートの序盤が終了したってことだな。

 とにかく、戦乙女による『やり直し』のおかげもあって、ここまではシナリオ通りと言えよう。

 女神様が決めた正史ルート通りに展開されている。

 今後の人生と勇者イベントとの関わりについては、一度考えなければならないが……。

「ふわぁ~」

 今は考えるよりも眠りたい。

 明日の授業も中止になったし、ひと眠りして休日を堪能したいね。

「レオ君、明日ってお休みになったでしょ? 明日、一緒にお出かけしない?」

「うん、いいよ」

 リリたんを女子寮まで送った別れ際、彼女とデートの約束をして。

 俺はルンルン気分で寮へ戻ると、エントランスには一足早く戻っていたシャルの姿があった。

「レオン君、明日休みって聞いた?」

「ああ、聞いたよ」

「そっか。でも、早朝トレーニングはするよね?」

「もちろん」

 そんな話をしながら部屋へ向かい、鍵を開けて――

「もう寝る?」

「ああ。さすがに眠い」

「だよね~」

 服を脱いでパンツ一丁になると、何故かシャルの姿がパジャマ姿に早変わりしていた。

「明日のトレーニングも頑張ろうね?」

「あ? ああ」

 そして、何故かシャルは一緒に俺のベッドに潜り込むのである。  

「なんで?」

「ん?」

「なんで俺のベッドで寝てるの?」

 当然の質問をぶつけると、シャルは若干ながら頬を赤らめて笑みを浮かべた。

「だって、課外授業で一緒に寝れなかったから」

「そう……」

 頭の中では「なんでだよ」とツッコミを入れたが、眠気が限界だ。

 シャルを追い出す気力すら湧かない。

 とにかく眠って、起きたらリリたんとのデートを堪能して……。

 それから色々考えよう。

 今後、俺がハッピーエンドを迎えるための方法を。

 リリたんと最高の人生を送るための方法を。

 悪役転生した俺の青春学園ファンタジーはこれからも続くんだからね。

「スヤァ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

 女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】

m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。 その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...