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一口目

〜13〜

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「何だよ。ノリが悪いって言いたいのか? これは毎回言ってることだが、こっちはテメェの暇潰しのお遊びに真面目に付き合う義務はねぇんだよ」
 私が吐き捨てるように言い返した直後、歳桃は露骨に不機嫌そうな顔になって上から睨みつけてきた。
 歳桃が腰を折った理由は、背の低い私と目線を合わせるためだと思われる。
 だが、こんなふうに大袈裟なぐらい深くかがまれると、身長差を見せつけられてるようでなんか腹立つ。
 私はつま先に重心をかけて背伸びした。これで目線は合い、歳桃がかがむ必要はなくなったはずだ。
 それなのに、歳桃は私から少し顔を離しただけでかがむのをやめようとしない。
 怪訝に思っていると、
「チビチビドチビ!!」
 ぐいっ、と歳桃が勢いよく顔を近づけてくるなり罵倒してきた。
「な、……何だと!?」
「いっつも乱暴な言葉遣いで、態度が偉そうでクールで大人ぶっているけれど、身長だけはいつまで経っても小学生!」
「テメ……ッ! そんなこと言ったら、テメェだって身長も態度も無駄にクソデカいだけだろうが!!」
「極小人間!」
「極大人間!」
「元不良のくせに気持ちが悪いぐらい真面目。もっとサボりなよ。意外と優等生ちゃん」
「優等生くんのくせに気色悪ィぐらい不真面目。テメェは逆にサボりすぎだ。サボり魔」
「猫かぶりひめ!」
「死にたがりおう!」
もと紗夜に戻る!」
「……もとさやって。テメェ、それ言いたいだけだろ」
「それが何か? ミニミニ紗夜さやえんどう!」
ひねくれ桃!」
「小ぶりすぎる梨!」
「大ぶりすぎる桃! ……って、これは悪口になんのか?」
 独り言を呟く私を見て、歳桃が顔をやや上向きにした。その口元にはいつもの嘲笑。
「微妙だね。一般的には、大ぶりすぎる桃の方がお得感があって喜んで購入する人が多いからね。僕の悪口につられて大ぶりすぎるって言ってしまったから難しくなるのだよ。……傷だらけの訳あり商品で売れ残った桃とかなら僕への悪口になるんじゃない? でも遅い。勝負はもうついた。はい、今回も僕の勝ち~。この僕に口喧嘩で勝とうなんて1000年早いのだよ」
 歳桃は偉そうな口調でそう言った。人差し指を立てて軽く左右に振る。さらに、その指で私の額をトンと小突いてきやがった。
 私は舌打ちして歳桃をぎろりと睨みつける。
 いつも通り急遽開催された、互いを罵り合うだけの世界一不毛な争いでしかない、悪口大会。参加者は私と歳桃の二人だけだ。
 大会は、悔しいことに私のターンで中断してしまっているという状況だ。
 正直劣勢ではあるものの、私はまだ負けたわけではない。
 お、そうだ。うまい切り返しが運良く思いついた私は片眉を上げてニヤリと笑った。
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