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015 盗賊さん、ダンジョンの話を聞く。
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「随分と弱気だね」
「……確かにな」
グレンは苦笑し、すぐに表情を改めた。
「厚かましいとは思うが、オレにポーションのつくり方を教授してくれないか」
「もちろんさ」
ボクは笑みをつくって端的に、そう応じた。
新たな材料を用意して、グレンの前でレッドグレイヴで一般的に行われているポーション作製過程を披露した。ひと通りの流れを見せ、完成品でボクの手の平が治癒する様子を見せながら、疑問はないかと問いかける。
「何か質問はある?」
「あぁ、ひとつ気になったんだが。薬草を加熱するとスキルが失われるんだよな。ならすり潰しても結果は同じになるんじゃないのか」
「確かにすり潰した後、長時間放置したらそうなるね。でも、すり潰してすぐは薬草が損傷を癒そうとスキルが発動するんだ。それがポーション作製の際には重要なのさ。スキルが発動中でなければ、スキルの抽出は出来ないからね。それに薬草をすり潰すのには、もうひとつ理由があって、薬草に魔力を均一に浸透させやすくするためでもあるのさ。茎や葉脈、葉身と各部位でそれぞれ魔力の浸透しやすさが違うからね」
「そういうことか。あとはオレが魔力操作をマスターすりゃいいんだな」
「そうなるね。あとはポーション作製には必須の水の魔石をどこかで仕入れる必要があるね。一応、ボクもそれなりにストックしてるけど個人的に消費する程度しか手持ちがないからね」
グレンは腕を組み、眉間に深いシワをつくった。
「練習するにしても素材をどうにかしないことにはな」
「ここの現状や薬師ギルドの妨害なんかを考えると、領都内で仕入れるのは難しそうだね」
「確実にふっかけられるだろうしな」
「そうなって来ると、取れる選択は限られて来るね」
「あぁ、自分で採って来るなりするしかねぇだろうな。薬草は城壁外に自生してたりするが、水の魔石はダンジョンに潜るしかねぇな」
「付近のダンジョンで水の魔石をドロップするモンスターの情報は把握してたりするかな?」
「確か北地区のダンジョン1階層で、スライムが小粒のやつをドロップするって話だったと思うぜ」
「スライムか。それならすぐに数を集められそうだね」
「簡単に言ってくれるな」
「低階層ならちょくちょく素材採取でダンジョンに潜ってたりしてたからね」
「そんなこともしてたのか」
「そうでもしなきゃ、ひとに頼んだらいつまで待たされるかわからないからね。自分で出来るんなら自分でやるさ。グレンだって似たようなものだろ。単身でレッドグレイヴまで乗り込んでったくらいなんだしさ」
「なんか違うような気もするが、やることがわかってんなら今はそれを自分でやるしかないっては違いねぇな」
レッドグレイヴに技術指導を受けに行った話を例えに出したが、グレンはもう吹っ切れたらしく、気にした様子を微塵も見せなかった。
「それじゃ、ダンジョンに行くのは決定として、ここはダンジョンに入るのに制限とかはあるのか?」
「あー、冒険者ギルドの登録がいるな。ダンジョンの管理してんのがあっこだからな。入場料として銀貨3枚の支払いと入場時に攻略計画書の提出が義務化されてる」
「攻略計画書? なんだいそれは」
ボクが潜っていたのはレッドグレイヴ邸の敷地内にあったダンジョンだったので、そういった手続きなどは一切必要なかっただけに初めて耳にする単語に興味を惹かれた。
「パーティーメンバーの名前と緊急時の連絡先、攻略予定階層と行動予定の日時、持ち込む装備の詳細なんかを記した書類だな。専用用紙は冒険者ギルドにあるぞ」
「かなり厳重に管理してるんだね」
「そうでもしなきゃ無茶するやつが後を絶たなくてな。無茶して行方不明になったやつの捜索時にも役には立ってるみたいだしな。あとはそうだな、ダンジョン内での犯罪もある程度は抑制出来てるらしいぞ」
「持ち込む装備の詳細も申告するってことは、ダンジョンからの持ち出しに関しては、なにか制限はあるのかな」
「ドロップアイテムに関しては、特に言及されてなかったはず。そこ縛ったりなんかしたらさすがに冒険者達から反発されるんじゃないか」
「かもしれないな。それならスライムを乱獲しても咎められることはなさそうだな」
「乱獲出来るほど出て来てくれりゃいいけどな」
「1回の入場料で銀貨3枚取られるんなら、その1回でそれなりの素材を稼いでおきたいじゃないか」
「まぁな。それもあってかダンジョン行くやつは事前準備にそれなりに時間かけてたりするな。その辺りも冒険者ギルドの狙いなのかもな」
「なるほどね」
あとは低階層で長時間うろうろしても稼げないから実力のない新人は入場料支払うのを躊躇うだろうし、追い剥ぎするようなやつも毎回銀貨3枚支払うのもバカらしいと思わせる意図もありそうだ。
「そういうので損したくないやつは、城壁外の魔獣討伐とか受けてんじゃねぇかな。ダンジョンと違ってアイテムはドロップしねぇが、魔獣は丸々素材として買い取ってもらえるしな」
「冒険者ギルドに関しては概ねわかったよ。でも、実地に勝るものもないだろうし、これから冒険者登録のついでに様子を見に行ってみないか、ダンジョンに」
「……確かにな」
グレンは苦笑し、すぐに表情を改めた。
「厚かましいとは思うが、オレにポーションのつくり方を教授してくれないか」
「もちろんさ」
ボクは笑みをつくって端的に、そう応じた。
新たな材料を用意して、グレンの前でレッドグレイヴで一般的に行われているポーション作製過程を披露した。ひと通りの流れを見せ、完成品でボクの手の平が治癒する様子を見せながら、疑問はないかと問いかける。
「何か質問はある?」
「あぁ、ひとつ気になったんだが。薬草を加熱するとスキルが失われるんだよな。ならすり潰しても結果は同じになるんじゃないのか」
「確かにすり潰した後、長時間放置したらそうなるね。でも、すり潰してすぐは薬草が損傷を癒そうとスキルが発動するんだ。それがポーション作製の際には重要なのさ。スキルが発動中でなければ、スキルの抽出は出来ないからね。それに薬草をすり潰すのには、もうひとつ理由があって、薬草に魔力を均一に浸透させやすくするためでもあるのさ。茎や葉脈、葉身と各部位でそれぞれ魔力の浸透しやすさが違うからね」
「そういうことか。あとはオレが魔力操作をマスターすりゃいいんだな」
「そうなるね。あとはポーション作製には必須の水の魔石をどこかで仕入れる必要があるね。一応、ボクもそれなりにストックしてるけど個人的に消費する程度しか手持ちがないからね」
グレンは腕を組み、眉間に深いシワをつくった。
「練習するにしても素材をどうにかしないことにはな」
「ここの現状や薬師ギルドの妨害なんかを考えると、領都内で仕入れるのは難しそうだね」
「確実にふっかけられるだろうしな」
「そうなって来ると、取れる選択は限られて来るね」
「あぁ、自分で採って来るなりするしかねぇだろうな。薬草は城壁外に自生してたりするが、水の魔石はダンジョンに潜るしかねぇな」
「付近のダンジョンで水の魔石をドロップするモンスターの情報は把握してたりするかな?」
「確か北地区のダンジョン1階層で、スライムが小粒のやつをドロップするって話だったと思うぜ」
「スライムか。それならすぐに数を集められそうだね」
「簡単に言ってくれるな」
「低階層ならちょくちょく素材採取でダンジョンに潜ってたりしてたからね」
「そんなこともしてたのか」
「そうでもしなきゃ、ひとに頼んだらいつまで待たされるかわからないからね。自分で出来るんなら自分でやるさ。グレンだって似たようなものだろ。単身でレッドグレイヴまで乗り込んでったくらいなんだしさ」
「なんか違うような気もするが、やることがわかってんなら今はそれを自分でやるしかないっては違いねぇな」
レッドグレイヴに技術指導を受けに行った話を例えに出したが、グレンはもう吹っ切れたらしく、気にした様子を微塵も見せなかった。
「それじゃ、ダンジョンに行くのは決定として、ここはダンジョンに入るのに制限とかはあるのか?」
「あー、冒険者ギルドの登録がいるな。ダンジョンの管理してんのがあっこだからな。入場料として銀貨3枚の支払いと入場時に攻略計画書の提出が義務化されてる」
「攻略計画書? なんだいそれは」
ボクが潜っていたのはレッドグレイヴ邸の敷地内にあったダンジョンだったので、そういった手続きなどは一切必要なかっただけに初めて耳にする単語に興味を惹かれた。
「パーティーメンバーの名前と緊急時の連絡先、攻略予定階層と行動予定の日時、持ち込む装備の詳細なんかを記した書類だな。専用用紙は冒険者ギルドにあるぞ」
「かなり厳重に管理してるんだね」
「そうでもしなきゃ無茶するやつが後を絶たなくてな。無茶して行方不明になったやつの捜索時にも役には立ってるみたいだしな。あとはそうだな、ダンジョン内での犯罪もある程度は抑制出来てるらしいぞ」
「持ち込む装備の詳細も申告するってことは、ダンジョンからの持ち出しに関しては、なにか制限はあるのかな」
「ドロップアイテムに関しては、特に言及されてなかったはず。そこ縛ったりなんかしたらさすがに冒険者達から反発されるんじゃないか」
「かもしれないな。それならスライムを乱獲しても咎められることはなさそうだな」
「乱獲出来るほど出て来てくれりゃいいけどな」
「1回の入場料で銀貨3枚取られるんなら、その1回でそれなりの素材を稼いでおきたいじゃないか」
「まぁな。それもあってかダンジョン行くやつは事前準備にそれなりに時間かけてたりするな。その辺りも冒険者ギルドの狙いなのかもな」
「なるほどね」
あとは低階層で長時間うろうろしても稼げないから実力のない新人は入場料支払うのを躊躇うだろうし、追い剥ぎするようなやつも毎回銀貨3枚支払うのもバカらしいと思わせる意図もありそうだ。
「そういうので損したくないやつは、城壁外の魔獣討伐とか受けてんじゃねぇかな。ダンジョンと違ってアイテムはドロップしねぇが、魔獣は丸々素材として買い取ってもらえるしな」
「冒険者ギルドに関しては概ねわかったよ。でも、実地に勝るものもないだろうし、これから冒険者登録のついでに様子を見に行ってみないか、ダンジョンに」
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