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グズる大型犬系の彼
しおりを挟む珍しく早い時間に。
[ばたーんっ]
盛大にドアが開いて。
「ただいま~あ…」
そのドアの盛大さとは真反対の、しおれた声。
「おかえ」
「んなぁ~!もーづかれだぁ~」
私のおかえりを遮り、ベッドにぼふん!と体を沈めてしまった。
「あ、ちょっと。服は着替えないと」
「んえぇ~やだぁ~もー動くのだりぃぃ~」
はじまった。
疲れて帰ってきた日はいつもこれ。
一気に、どこかに何かを置き忘れてきた成人男子。男性じゃない。男子。
可愛いの通り越してめんどくさいですよー?
「だめだって!次の日服しわくちゃになってたらへこむくせにっ」
「やーだーもう寝るー。ほらぁ、こっち来て一緒に寝て~」
「あ、こらっ!」
もうこの一連の流れ、ホントただの駄々っ子。
こんなときは。
「…しょうがないなあ。
せっかく好きな物ご飯にしようと思ってたけど…」
仕方が無いので。
「納豆スパ作るねっ」
あなたのいちばーん、苦手なものでたたき起こすしかない!
「んな!?」
案の定、大嫌いな食べ物の名前にびょん!と起き上がって。
「ダメダメダメ!やだ納豆はマジやだ!!」
全力で嫌がってくれたので。
「よし起きれたね。はい、そのまま着替える」
「あ」
駄々っ子封殺、いっちょうあがりー♪
「そんなに駄々こねたり飛び起きたりできるんだから大丈夫だって。それに着替えといたら後が楽でしょー?」
「…まあ、そうやけどさあ…」
あんまりにも簡単に転がされてくれるのは嬉しいけど。
んー…なんて言うかなあ。
たまにはちょっとでいいから、男らしいとこ見せて欲しいななんて思うんだけど…。
そんなことを考えながら、納豆を使わない普通のご飯を作る支度に取り掛かりました。
そうこうしているうちに。
「…着替えた」
うまく乗せられたことに気づいてか、ちょっとすねた感じで部屋着に着替えた彼が顔を覗かせる。
もう本当に、どこまで子供なのこの人は。
…そんなとこも、可愛い。
って言ったら調子に乗るから絶対言わない。
かわりに。
「おっけー。じゃ、夕飯に好きな物作ったげる。なにがいい?」
リクエストに答えるつもりで準備してたら。
「んー、そんなん決まっとるやん」
急にがばっ!と私に覆いかぶさってきて。
「!?」
「お、ま、え♡」
そのまま、ものすごい近さで目を合わせてきた。
「や、ちょ、近」
「だぁめ」
その至近距離が恥ずかしくて目を逸らそうとしたんだけど、今日は許してくれなくて。
「…夕飯の前に、お前が食べたいの。いいだろ?」
「だ…んっ…!」
そう言って、なし崩し的にキスされる。
まだ、外はそんなに暗くないのに。
「んん…んんっ…」
そのキスは、さっきまでゴネてた人のとは思えないくらい熱くて、濃くて。
「っ…だ、めぇ…」
ここが普通の部屋だってことも忘れそうなくらいに、息が上がる。
そんな私の様子を見て満足したのか。
「…ふふっ、うっそー。かーわいいんだから~」
そう言ってニヤニヤ笑うから。
「っ、もお…ばっ…!」
バカ!って反撃しようと思ったら。
「ん。ごめん。でもホント可愛い」
そう言って今度は優しく抱きしめてきて私の動きをまた止めて。
「いつもありがと。お前がいるから、疲れ飛ぶ」
真剣な、でもとっても耳心地のいい優しい声でそう言ってくれた。
「っ…うん、どう、いたしまして…」
さっきは私の方が優位だったと思ったのに。
いつの間にか形成逆転。
でも、それで疲れが飛ぶって言うんなら…。
(…夕飯終わってからなら)
おわり
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