上 下
12 / 38
ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情

6

しおりを挟む
《雪蛍side》

「渋谷さん、おはようございます!」

 朝、マンションの駐車場に行くと、待っていたのは新人マネージャーの小柴だった。

「何でアンタが居るんだよ?  今日は莉世の担当だろーが」
「はい、その……実は南田先輩から連絡がありまして、体調が悪いから病院へ行きたいと。それで僕が代わりに……」
「病院?  って、平気なのかよ?」
「えっと、その……詳しい事は分かりませんが本人は風邪だろうと……」
「……ふーん。まあいい。仕事に遅れる訳にはいかねーからな。さっさと頼む」
「は、はい!」

 小柴から聞いた話は俺を驚かせたのと同時にイラつかせるものでもあった。

(アイツ、何で俺に直接言ってこないんだよ……)

 昨日の事もそうだ。何時間も連絡がつかなくて俺がどれだけ心配した事か。

(……そんなに体調、悪いのかよ……)

 何だか不安に駆られた俺は莉世にメッセージを送ってみた。

 すると、少しして返事が返ってきて、【ごめんね、ちょっと風邪を拗らせたみたいで……今日病院に行って来るから心配しないでね】と記してあった。

 本当なら、俺が直接行って看病してやりたいけど、仕事もあるし、周りに勘繰られても困るから、【無理するなよ。何かあったらすぐに言えよな】悩んだ末にそれだけ送った俺はひとまず仕事に集中する事にした。

 結局莉世は本格的に風邪を拗らせたらしく、数日間は安静にするよう医者に言われたといって暫く俺の管理は小柴がする事になった。

 相変わらず要領を得ない小柴に苛立ちを感じるも、そんな事は何だかどうでも良くなってくる。

(莉世、どうしてるかな……)

 様子を見に行きたいけど朝から夜までスケジュールが詰まっていて時間が取れず、メッセージでのやり取りしか出来ていない。

 会えない時間が長過ぎて、莉世に触れた過ぎて、俺の身体はそろそろ限界を迎えそうになっていた。

 そんなある日の仕事終わり、映画の撮影も終盤を迎えている事、残りの撮影の英気を養う為にメインキャストで食事に行く事になった。

 その席には勿論桜乃も居て、終始俺の隣を陣取ってくる。

(あーうぜぇなぁ……)

 聞いてもいない事をペラペラ話し、人のプライベートな事を聞いてくる。

 あまりの鬱陶しさにうんざりした俺が早めに引き上げようとすると、

「ねぇ雪蛍くん、ちょっと……大切な話があるんだけど、この後時間貰えないかな?」

 意味深な言葉を口にした。

「何だよ、話って」
「ここじゃあちょっと……。そういえば南田さんの姿が見えないけど、彼女は?」
「あー、アイツは風邪拗らせて休んでるぜ」
「……そう、風邪を……。それって、本当に風邪が原因なのかな?」
「は?  それ、どういう意味だよ?」
「……時間を取ってくれるなら、詳しく話すよ」
「……分かった。とりあえず一緒に出るのはマズい。十分後、この紙に書いた店まで来てくれよ」
「うん、分かった」

 桜乃の話というのはどうやら莉世に関係がある事らしく、俺の心はいつになく動揺していた。

(莉世……お前、本当に風邪なのか?  それとも、何か他に理由があるのか?)

 不安な俺は莉世の声を聞きたい衝動を抑えながら、指定した知り合いのBARまで歩いて行く。

 そして十分後、約束通り桜乃がやって来ると、

「実はね、結萌……南田さんの事である話を聞いちゃったの」

 そんな前置きをして、莉世に関する話を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

腹黒伯爵の甘く淫らな策謀

茂栖 もす
恋愛
私、アスティア・オースティンは夢を見た。 幼い頃過ごした男の子───レイディックと過ごした在りし日の甘い出来事を。 けれど夢から覚めた私の眼前には、見知らぬ男性が居て───そのまま私は、純潔を奪われてしまった。 それからすぐ、私はレイディックと再会する。 美しい青年に成長したレイディックは、もう病弱だった薄幸の少年ではなかった。 『アスティア、大丈夫、僕が全部上書きしてあげる』   そう言って強姦された私に、レイディックは手を伸ばす。甘く優しいその声は、まるで媚薬のようで、私は抗うことができず…………。  ※R−18部分には、♪が付きます。 ※他サイトにも重複投稿しています。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

泉南佳那
恋愛
 イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!  どうぞお楽しみいただけますように。 〈あらすじ〉  加藤優紀は、現在、25歳の書店員。  東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。  彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。  短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。  そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。  人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。  一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。  玲伊は優紀より4歳年上の29歳。  優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。  店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。    子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。  その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。  そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。  優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。  そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。 「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。  優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。  はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。  そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。  玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。  そんな切ない気持ちを抱えていた。  プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。  書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。  突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。  残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……

Catch hold of your Love

天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。 決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。 当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。 なぜだ!? あの美しいオジョーサマは、どーするの!? ※2016年01月08日 完結済。

色々と疲れた乙女は最強の騎士様の甘い攻撃に陥落しました

灰兎
恋愛
「ルイーズ、もう少し脚を開けますか?」優しく聞いてくれるマチアスは、多分、もう待ちきれないのを必死に我慢してくれている。 恋愛経験も無いままに婚約破棄まで経験して、色々と疲れているお年頃の女の子、ルイーズ。優秀で容姿端麗なのに恋愛初心者のルイーズ相手には四苦八苦、でもやっぱり最後には絶対無敵の最強だった騎士、マチアス。二人の両片思いは色んな意味でもう我慢出来なくなった騎士様によってぶち壊されました。めでたしめでたし。

恋は秘密のその先に

葉月 まい
恋愛
秘書課の皆が逃げ出すほど冷血な副社長 仕方なく穴埋めを命じられ 副社長の秘書につくことになった 入社3年目の人事部のOL やがて互いの秘密を知り ますます相手と距離を置く 果たして秘密の真相は? 互いのピンチを救えるのか? そして行き着く二人の関係は…?

処理中です...