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「じゃ、私お風呂行ってくるね」
「うん」
夕飯を終えて暫くカードゲームなどをしてみんなで遊んだ後、杏子がお風呂に入りに行き、私と楠木くんと浦部くんが一階のリビングスペースに残る。
少しして、
「悪い、バイト先から電話掛かってきた」
楠木くんも着信があると言って外へ出て行ってしまう。
残された私と浦部くんはついているテレビに視線を向けていたのだけど、
「……ねぇ、葉月ちゃん」
「は、はい?」
「ちょっと、話したい事があるんだけど、二階のテラスに行かない?」
浦部くんに声をかけられ、話したい事があると言われて私は少しだけ気まずく思いながらも頷いた。
「……話って、何でしょうか?」
二階のテラスへやって来た私たち。話があると言っていた浦部くんがなかなか話を始めないので私の方から聞いてみる。
「……あのさ葉月ちゃん、ぶっちゃけ、俺の事どう思ってる?」
「どう……というのは?」
「俺の気持ち、分かってると思うんだけど、脈あるのかなって」
「…………その、私、恋愛経験がなくて、好きになるとか正直よく分からないんです」
「俺としては、葉月ちゃんともっと仲良くなりたいと思ってるんだけど」
「その……友達としてなら、嬉しいです」
「それ以上には、なれない?」
「……ごめんなさい、決して浦部くんの事が嫌いとかそういう訳じゃないんですけど……」
「……そっか。でもさ、可能性、0って訳じゃない? 1%でも、残ってる?」
「……期待を持たせてしまうのも違うと思うし……ごめんなさい、どう答えればいいのか分からないです」
「いいって。正直に言ってくれてありがとう。でも俺、葉月ちゃんの今の答えは可能性0じゃないって思うから、もう少し頑張りたいと思ってる」
「…………」
「俺の事もう少し知って、その上で結論を出して欲しいと思うんだけど……それじゃ駄目?」
「…………」
「二人でが嫌ならこうして四人で遊ぶでもいいし、負担にならない程度でメッセージのやり取りも出来たらって思ってるんだけど……どうかな?」
「……二人が嫌という訳では無いんですけど、男の子と接する機会があまり無かったから、緊張しちゃうんです。だから、四人でなら……」
「分かった。じゃあまた今度四人で遊びに行こう」
「はい。その、メッセージも私、マメな方じゃなくて……」
「返せる時でいいから、たまに送ってくれると嬉しいな。それと……なるべくなら、敬語は無しで話して欲しい」
「……わ、分かった。慣れなくて敬語になっちゃう時もあるかもしれないけど……」
「うん、少しずつでいいから。それと、ありがとう。聞いてくれて」
「ううん」
正直、こんな風に言われるのは初めてだから戸惑ったけど、素直に嬉しいと思った。
(……苦手の一言で片付けちゃいけないよね。少しづつ、歩み寄ってみよう)
付き合うとかそういう事は抜きにして、あくまでも『友達』として、浦部くんと向き合ってみようと思えた。
初めこそ気乗りしなかった旅行だけど、友達と旅行なんて初めての経験だったし、浦部くんや楠木くんは優しかったから楽しむ事が出来た。
「ここでいいの? 家まで送るけど」
「そうだよ、どうせ通り道なんだから遠慮しないで」
「あの、買い物もしたいから本当にここで大丈夫。ありがとう」
旅行の帰り道、自宅まで送ってくれると言われたけれど、ボロアパートだと知られるのが嫌で、スーパーで買い物をしたいからと近くで降ろしてもらった。
みんなを見送った後、せっかくだから買い物をして行きたい気持ちはあったけれど、旅行鞄片手に買い物をする気にもなれず諦めて帰ろうとした、その時、
「帰って来てたんだ?」
「小谷くん!」
バイト帰りか、買い物をしに来たのか、偶然小谷くんと鉢合わせた。
「ついさっき着いたの。小谷くんは買い物?」
「ああ。つーか、何で荷物持ってここに居るんだよ?」
「送ってくれるって言われたんだけど、アパートまではね……まだ明るいし、ここでいいかなって」
「ふーん。で、買い物してくの?」
「そうしたいけど、荷物あるから……」
「荷物くらい持ってやるよ。俺もこれから買い物するし、アンタもすれば?」
「いいの?」
「ああ」
「ありがとう」
小谷くんの優しさに甘えて買い物をして帰る事になった。
彼は今日は昼間のバイトだけだったので、せっかくだから一緒にご飯を食べる事になり、食べたい物を聞きながら一緒に買い物を済ませてスーパーを後にする。
「ごめんね、荷物ほとんど持ってもらって……」
「いいって。それにお前に持たせたら歩くの遅いし」
「そんな事、無いと思うけど」
「ってか一泊にしては荷物多くない?」
「そう? 女の子の荷物は多くなるものだから、これくらい普通だよ」
「そんなモンか?」
「そうそう」
帰り道は他愛のない話をしながらだったけど、会話も途切れる事無く続いていく。
(やっぱり、小谷くんと話すのは落ち着くな)
今回の旅行で少しは浦部くんや楠木くんとも話せるようにはなったけど、小谷くんに比べれば全然話せていなかった事に改めて気付く。
(……いや、でももっと慣れれば浦部くんとも話せるようになるのかな)
話せない違いは『慣れ』なのか、それがイマイチ分からない。
「じゃあ俺、荷物置いて着替えたら行くわ」
「うん、待ってるね」
アパートに着き、持って貰っていた荷物を受け取りながら頷いた私は小谷くんが先に部屋に入るのを見送って自分の部屋の前へ辿り着く。
ドアの間に一通の封筒が挟まっていて、嫌な予感がした私は封筒を取って恐る恐る中を開けてみると二枚の写真が入っていて、一枚は小谷くんと並んで歩く姿、もう一枚は旅行当日、駅で浦部くんたちと合流した時の写真。
そして、その二枚の写真にはどちらも赤いマジックで大きなバツ印が書かれていた。
「うん」
夕飯を終えて暫くカードゲームなどをしてみんなで遊んだ後、杏子がお風呂に入りに行き、私と楠木くんと浦部くんが一階のリビングスペースに残る。
少しして、
「悪い、バイト先から電話掛かってきた」
楠木くんも着信があると言って外へ出て行ってしまう。
残された私と浦部くんはついているテレビに視線を向けていたのだけど、
「……ねぇ、葉月ちゃん」
「は、はい?」
「ちょっと、話したい事があるんだけど、二階のテラスに行かない?」
浦部くんに声をかけられ、話したい事があると言われて私は少しだけ気まずく思いながらも頷いた。
「……話って、何でしょうか?」
二階のテラスへやって来た私たち。話があると言っていた浦部くんがなかなか話を始めないので私の方から聞いてみる。
「……あのさ葉月ちゃん、ぶっちゃけ、俺の事どう思ってる?」
「どう……というのは?」
「俺の気持ち、分かってると思うんだけど、脈あるのかなって」
「…………その、私、恋愛経験がなくて、好きになるとか正直よく分からないんです」
「俺としては、葉月ちゃんともっと仲良くなりたいと思ってるんだけど」
「その……友達としてなら、嬉しいです」
「それ以上には、なれない?」
「……ごめんなさい、決して浦部くんの事が嫌いとかそういう訳じゃないんですけど……」
「……そっか。でもさ、可能性、0って訳じゃない? 1%でも、残ってる?」
「……期待を持たせてしまうのも違うと思うし……ごめんなさい、どう答えればいいのか分からないです」
「いいって。正直に言ってくれてありがとう。でも俺、葉月ちゃんの今の答えは可能性0じゃないって思うから、もう少し頑張りたいと思ってる」
「…………」
「俺の事もう少し知って、その上で結論を出して欲しいと思うんだけど……それじゃ駄目?」
「…………」
「二人でが嫌ならこうして四人で遊ぶでもいいし、負担にならない程度でメッセージのやり取りも出来たらって思ってるんだけど……どうかな?」
「……二人が嫌という訳では無いんですけど、男の子と接する機会があまり無かったから、緊張しちゃうんです。だから、四人でなら……」
「分かった。じゃあまた今度四人で遊びに行こう」
「はい。その、メッセージも私、マメな方じゃなくて……」
「返せる時でいいから、たまに送ってくれると嬉しいな。それと……なるべくなら、敬語は無しで話して欲しい」
「……わ、分かった。慣れなくて敬語になっちゃう時もあるかもしれないけど……」
「うん、少しずつでいいから。それと、ありがとう。聞いてくれて」
「ううん」
正直、こんな風に言われるのは初めてだから戸惑ったけど、素直に嬉しいと思った。
(……苦手の一言で片付けちゃいけないよね。少しづつ、歩み寄ってみよう)
付き合うとかそういう事は抜きにして、あくまでも『友達』として、浦部くんと向き合ってみようと思えた。
初めこそ気乗りしなかった旅行だけど、友達と旅行なんて初めての経験だったし、浦部くんや楠木くんは優しかったから楽しむ事が出来た。
「ここでいいの? 家まで送るけど」
「そうだよ、どうせ通り道なんだから遠慮しないで」
「あの、買い物もしたいから本当にここで大丈夫。ありがとう」
旅行の帰り道、自宅まで送ってくれると言われたけれど、ボロアパートだと知られるのが嫌で、スーパーで買い物をしたいからと近くで降ろしてもらった。
みんなを見送った後、せっかくだから買い物をして行きたい気持ちはあったけれど、旅行鞄片手に買い物をする気にもなれず諦めて帰ろうとした、その時、
「帰って来てたんだ?」
「小谷くん!」
バイト帰りか、買い物をしに来たのか、偶然小谷くんと鉢合わせた。
「ついさっき着いたの。小谷くんは買い物?」
「ああ。つーか、何で荷物持ってここに居るんだよ?」
「送ってくれるって言われたんだけど、アパートまではね……まだ明るいし、ここでいいかなって」
「ふーん。で、買い物してくの?」
「そうしたいけど、荷物あるから……」
「荷物くらい持ってやるよ。俺もこれから買い物するし、アンタもすれば?」
「いいの?」
「ああ」
「ありがとう」
小谷くんの優しさに甘えて買い物をして帰る事になった。
彼は今日は昼間のバイトだけだったので、せっかくだから一緒にご飯を食べる事になり、食べたい物を聞きながら一緒に買い物を済ませてスーパーを後にする。
「ごめんね、荷物ほとんど持ってもらって……」
「いいって。それにお前に持たせたら歩くの遅いし」
「そんな事、無いと思うけど」
「ってか一泊にしては荷物多くない?」
「そう? 女の子の荷物は多くなるものだから、これくらい普通だよ」
「そんなモンか?」
「そうそう」
帰り道は他愛のない話をしながらだったけど、会話も途切れる事無く続いていく。
(やっぱり、小谷くんと話すのは落ち着くな)
今回の旅行で少しは浦部くんや楠木くんとも話せるようにはなったけど、小谷くんに比べれば全然話せていなかった事に改めて気付く。
(……いや、でももっと慣れれば浦部くんとも話せるようになるのかな)
話せない違いは『慣れ』なのか、それがイマイチ分からない。
「じゃあ俺、荷物置いて着替えたら行くわ」
「うん、待ってるね」
アパートに着き、持って貰っていた荷物を受け取りながら頷いた私は小谷くんが先に部屋に入るのを見送って自分の部屋の前へ辿り着く。
ドアの間に一通の封筒が挟まっていて、嫌な予感がした私は封筒を取って恐る恐る中を開けてみると二枚の写真が入っていて、一枚は小谷くんと並んで歩く姿、もう一枚は旅行当日、駅で浦部くんたちと合流した時の写真。
そして、その二枚の写真にはどちらも赤いマジックで大きなバツ印が書かれていた。
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