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優しく頼れる存在

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 暫くして、エリスから規則正しい寝息が聞こえてきた事でようやくギルバートはひと息吐く。

 そして、その三十分後くらいにギルバートも眠りの世界へ誘われていたものの、遠くの方から苦しむような息づかいや声が聞こえてすぐに目を覚ます。

「……ッ、や……めて、……ころさ、ない……でッ」

 その声の出処はすぐ横に眠るエリスのもので、それに気付いたギルバートは身体を起こしてエリスに声をかける。

「おい、エリス。おい!」

 額には汗を浮かべ、苦しむエリス。

 何とかして目を覚まさせようとギルバートが何度か声をかけ続けると、

「――ッ!!」

 ようやく目を覚ましたエリスはハァ、ハァと大きく何度も息を吸っては吐いてを繰り返す。

「エリス、平気か?」
「ギルバート……さん?」
「悪い夢を見たのか?」
「……はい、すみません……」

 ようやく落ち着きを取り戻したエリスに再び声をかけたギルバート。

 そんな彼に視線を移したエリスは瞳に薄っすら涙を浮かべながら謝った。

「謝る必要は無い。お前は何も悪い事をしていないだろ?」
「いえ、私のせいでギルバートさんは目を覚ましてしまったのですよね? 本当にすみませんでした」

 ギルバートは思う。エリスがここまで自分を責めるのは、これまでの環境がそうさせているのだろうと。

 正直、彼女が自分を責める度、辛そうな表情を見せる度、無理して笑おうとする度、ギルバートの胸は密かに痛んでいた。

 もうこれからはそんな風に辛そうな表情も作り笑顔もさせたくない、自分を責めても欲しくない。

 それにはどうすればいいのか、言葉だけで彼女の心を癒せるのか、彼は柄にもなく悩んでいた。

「俺が目を覚ましたのは偶然だ。エリスのせいでは無い。いいか? ここでは何があっても自分のせいだと思わなくていいから、謝るな。悲しい時は泣いていい、辛い時は辛いと弱音を吐いても構わない。無理をする必要も無い、作り笑顔も、作らなくていい。お前の素直な感情を出してくれて良いんだ」

 そして悩んだ末、ありのままの自分を見せて欲しいと言葉を選びながらギルバートはエリスに伝えた。

「ここにはお前を憎む者は居ない。責め立てる者も居ない。命を狙われたりもしない。お前の事はこの俺が必ず守る。だから安心しろ。眠るのが怖いなら、朝まで共に起きていよう。決して、お前を独りにはしないから、俺で良ければいつでも頼ってくれ」

 瞳に大粒の涙を浮かべたエリスが真っ直ぐギルバートを見ると、二人の視線がぶつかり合う。

「ギルバートさんは、優しいですね……」
「そうか? これが普通だ。きっとお前の周りの奴らがおかしかっただけだ」
「そんな事……」
「奴らを庇う必要は無い。ほら、もう一度寝るぞ。身体は疲れているはずだから、目を瞑ればすぐに眠れるだろう」
「はい……」

 まだ夜も明けない時間なので再びベッドに横になった二人。

 エリスの心も落ち着きを取り戻したのですぐに眠れるかと思ったギルバートだったが、やはり眠るのが怖いのかエリスがなかなか眠れない気配を感じ取り、

「やはり、眠れないか?」

 彼女に背を向けたまま問いかけた。
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