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6.執事とリータは互いの情報をすり合わせる【リータ】
【5】
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「よく知っているな。王妃の子は、女の子だ」
パトリシオの言葉を聞いた時、思わず小さくガッツポーズをした。
掛かった!
それを不思議そうな目で見るパトリシオ。アリスが慌てて笑顔を作る。
「噂は本当だったのね!それで、それで?」
有無を言わせぬ勢いの質問に、私は思わず唸る。聞き込みには相手を自分のペースに巻き込む能力が必要なのかもしれない。
「それで、と言われても……。俺は、それ以上は知らないんだ」
「お会いになられなかったのですか」
「あぁ。部屋を出てきた新米の使用人の話を聞いただけだ。赤子は女の子だった、そして……」
ここに来て始めて、彼は言葉を濁した。何やら、言うべきか言わないべきか勘案しているようだ。私はアリスに目配せすると、大きな声で言った。
「ま、まさか……赤ちゃんが死にそうだとか!?」
我ながら白々しい演技である。
だが、単純なパトリシオはそれに気付かなかったようで、素直にいやいやと首を振った。
「それは心配しなくて良い。大丈夫だ」
「よかったぁ。生きてさえいてくれれば、私、幸せです」
ほっと肩の力を抜いた私を見て、彼の口も緩んだらしい。そっとかがみ込むと、私たちを近くに引き寄せた。
パトリシオの言葉を聞いた時、思わず小さくガッツポーズをした。
掛かった!
それを不思議そうな目で見るパトリシオ。アリスが慌てて笑顔を作る。
「噂は本当だったのね!それで、それで?」
有無を言わせぬ勢いの質問に、私は思わず唸る。聞き込みには相手を自分のペースに巻き込む能力が必要なのかもしれない。
「それで、と言われても……。俺は、それ以上は知らないんだ」
「お会いになられなかったのですか」
「あぁ。部屋を出てきた新米の使用人の話を聞いただけだ。赤子は女の子だった、そして……」
ここに来て始めて、彼は言葉を濁した。何やら、言うべきか言わないべきか勘案しているようだ。私はアリスに目配せすると、大きな声で言った。
「ま、まさか……赤ちゃんが死にそうだとか!?」
我ながら白々しい演技である。
だが、単純なパトリシオはそれに気付かなかったようで、素直にいやいやと首を振った。
「それは心配しなくて良い。大丈夫だ」
「よかったぁ。生きてさえいてくれれば、私、幸せです」
ほっと肩の力を抜いた私を見て、彼の口も緩んだらしい。そっとかがみ込むと、私たちを近くに引き寄せた。
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