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2.少女リータは洗濯をしながら思考を巡らす【リータ】
【2】事情
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「事情って何よ」
「リータ、鈍いなあ」
あきれ顔のアリス。いやいや、知っている方がおかしいのではないか?そんなことを思うが、口に出すと教えてもらえなくなりそうなので、黙っておくことにする。
「姫君の姿が見せられないから部屋を出てこられないってことに決まってるじゃない。青い瞳の姫君が生まれたなんて知られたら、国中が大騒ぎになるでしょ。王家の血を汚したとして、犯人捜しが始まるかもしれない。それに、もしかしたら、王妃様は追放されるかもしれない。とにかく、大きな騒ぎになることは間違いないわ」
頬を紅潮させながら力説するアリス。私は慌てて辺りを見回すが、幸いこちらに意識をむけているものはいなかったので、ほっと胸をなで下ろした。皆、それぞれおしゃべりに夢中だったり、仕事を早く終わらせようと一生懸命だったりで、裏庭の隅っこの私たちの存在なんて気にもとめていない。私たちは、これ幸いと話を進める。
「……で、アリスはその噂を信じるわけ」
「うーん……」
表情を曇らせるアリス。
「そういう噂があるのは、事実。だけど、それを信じたくないのも、事実」
そして、いつになく神妙な顔をする。有名人にでもなれそうな整った顔が苦しそうに歪む。
「安心した。端っから信じてるわけじゃないのね」
「リータも?」
「うん。私も信じたくない。だって、王妃様はとっても素敵な方だから」
「そうだよね。あんなに優しい王妃様だもの」
私とアリスは、宮廷に出入りできるような身分の人間ではない。にもかかわらず今こうして宮廷で働いているのは、王妃の計らいがあってのことなのだ。
「リータ、鈍いなあ」
あきれ顔のアリス。いやいや、知っている方がおかしいのではないか?そんなことを思うが、口に出すと教えてもらえなくなりそうなので、黙っておくことにする。
「姫君の姿が見せられないから部屋を出てこられないってことに決まってるじゃない。青い瞳の姫君が生まれたなんて知られたら、国中が大騒ぎになるでしょ。王家の血を汚したとして、犯人捜しが始まるかもしれない。それに、もしかしたら、王妃様は追放されるかもしれない。とにかく、大きな騒ぎになることは間違いないわ」
頬を紅潮させながら力説するアリス。私は慌てて辺りを見回すが、幸いこちらに意識をむけているものはいなかったので、ほっと胸をなで下ろした。皆、それぞれおしゃべりに夢中だったり、仕事を早く終わらせようと一生懸命だったりで、裏庭の隅っこの私たちの存在なんて気にもとめていない。私たちは、これ幸いと話を進める。
「……で、アリスはその噂を信じるわけ」
「うーん……」
表情を曇らせるアリス。
「そういう噂があるのは、事実。だけど、それを信じたくないのも、事実」
そして、いつになく神妙な顔をする。有名人にでもなれそうな整った顔が苦しそうに歪む。
「安心した。端っから信じてるわけじゃないのね」
「リータも?」
「うん。私も信じたくない。だって、王妃様はとっても素敵な方だから」
「そうだよね。あんなに優しい王妃様だもの」
私とアリスは、宮廷に出入りできるような身分の人間ではない。にもかかわらず今こうして宮廷で働いているのは、王妃の計らいがあってのことなのだ。
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