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突然のわがまま
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「総治郎さんも、あのときはすごく大胆ですよね?」
直生が、顔を赤らめたまま熱っぽい瞳で総治郎を見た。
「嫌か?」
「いや、むしろ、アレがいいっていうか…ものすごくドキドキします」
直生がもじもじと身じろぎする。
気のせいだろうか、なぜかちょっと嬉しそうだ。
「うん、まあ、嫌だったり痛かったら即刻言うんだぞ?最悪、蹴っ飛ばしてくれてもいい」
「やだ、総治郎さんたら…そういう趣味もあるんですか?」
からかっているのか本気なのかわからない声色で、直生がニヤつく。
「なぜそうなるんだ…」
総治郎は苦笑いするしかなかった。
総治郎には、蹴飛ばされて喜ぶ趣味はないのだから。
ここ最近、直生の言動にはつくづく驚かされてばかりだ。
初対面のとき、どちらかというと直生には真面目で大人しい印象を抱いていた。
しかし、いまはどうか。
大胆不敵というのか、好き者というのか。
実は、見合いの席ではしっかりした風に振る舞っていただけで、元は茶目っ気のある性質なのかもしれない。
「まあ、とりあえず…今日は休んでなさい。今日はいろいろとヤッたから、疲れただろう」
「え?総治郎さん、お食事はどうするんですか?」
「外で食べるよ。そうだ。きみは何が食べたい?待って帰ってやるよ」
「わたし、一緒にごはん行きたいです!」
直生がもう一度、腕を絡めてくる。
「え?いや、疲れただろ?休んでなさい」
「大丈夫です!だから、一緒にごはん行きましょ!」
直生が腕の力を強める。
まるで、スーパーやデパートでおもちゃを買って欲しいとタダをこねる2歳児みたいだ。
直生がこんなに頑なになるのは初めてのことで、総治郎はどうしたものかと思った。
「……わかった。じゃあ、一緒に行こう。それで、何が食べたい?」
適切な対処がほかにわからないので、総治郎はすっかり諦めてしまって、直生のわがままに付き合うことにした。
「いいんですか?」
直生は腕を掴んだまま、上目遣いに総治郎を見た。
「……きみが言い出したんじゃないか」
先ほど、あれだけタダをこねておいて、いざ了承すればコレなのだから、やはり総治郎は、いまだに直生のことが理解できなかった。
「ダメだと言われるかもしれないと思ってたので…あ、それじゃあ、総治郎さんの行きつけのお店とか、お気に入りのお店ってありませんか?教えてくれます?」
「それは別にいいが…」
「じゃあ、早く行きましょう?お店が閉まっちゃう前に!!」
直生は腕を離すと、飛び跳ねるようにして、ベッドから下りて立ち上がった。
「まだ時間あるから。落ち着け」
これから遊園地に行く子どもみたいにはしゃぐ直生を、総治郎は父親みたいな口調で宥めた。
「はあい。それで、お店はどこにあるんです?」
「離れたところにあるから、車で行くことになる」
「わかりましたあ!」
総治郎も同じように立ち上がると、2人して玄関に向かった。
ここで気づいたのだけど、現在所有しているセダンに誰かを乗せるなんて、初めてだった。
──今日は人一倍気をつけて運転しないとな
そう肝に銘じながら、直生と2人で外に出て行った。
直生が、顔を赤らめたまま熱っぽい瞳で総治郎を見た。
「嫌か?」
「いや、むしろ、アレがいいっていうか…ものすごくドキドキします」
直生がもじもじと身じろぎする。
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「うん、まあ、嫌だったり痛かったら即刻言うんだぞ?最悪、蹴っ飛ばしてくれてもいい」
「やだ、総治郎さんたら…そういう趣味もあるんですか?」
からかっているのか本気なのかわからない声色で、直生がニヤつく。
「なぜそうなるんだ…」
総治郎は苦笑いするしかなかった。
総治郎には、蹴飛ばされて喜ぶ趣味はないのだから。
ここ最近、直生の言動にはつくづく驚かされてばかりだ。
初対面のとき、どちらかというと直生には真面目で大人しい印象を抱いていた。
しかし、いまはどうか。
大胆不敵というのか、好き者というのか。
実は、見合いの席ではしっかりした風に振る舞っていただけで、元は茶目っ気のある性質なのかもしれない。
「まあ、とりあえず…今日は休んでなさい。今日はいろいろとヤッたから、疲れただろう」
「え?総治郎さん、お食事はどうするんですか?」
「外で食べるよ。そうだ。きみは何が食べたい?待って帰ってやるよ」
「わたし、一緒にごはん行きたいです!」
直生がもう一度、腕を絡めてくる。
「え?いや、疲れただろ?休んでなさい」
「大丈夫です!だから、一緒にごはん行きましょ!」
直生が腕の力を強める。
まるで、スーパーやデパートでおもちゃを買って欲しいとタダをこねる2歳児みたいだ。
直生がこんなに頑なになるのは初めてのことで、総治郎はどうしたものかと思った。
「……わかった。じゃあ、一緒に行こう。それで、何が食べたい?」
適切な対処がほかにわからないので、総治郎はすっかり諦めてしまって、直生のわがままに付き合うことにした。
「いいんですか?」
直生は腕を掴んだまま、上目遣いに総治郎を見た。
「……きみが言い出したんじゃないか」
先ほど、あれだけタダをこねておいて、いざ了承すればコレなのだから、やはり総治郎は、いまだに直生のことが理解できなかった。
「ダメだと言われるかもしれないと思ってたので…あ、それじゃあ、総治郎さんの行きつけのお店とか、お気に入りのお店ってありませんか?教えてくれます?」
「それは別にいいが…」
「じゃあ、早く行きましょう?お店が閉まっちゃう前に!!」
直生は腕を離すと、飛び跳ねるようにして、ベッドから下りて立ち上がった。
「まだ時間あるから。落ち着け」
これから遊園地に行く子どもみたいにはしゃぐ直生を、総治郎は父親みたいな口調で宥めた。
「はあい。それで、お店はどこにあるんです?」
「離れたところにあるから、車で行くことになる」
「わかりましたあ!」
総治郎も同じように立ち上がると、2人して玄関に向かった。
ここで気づいたのだけど、現在所有しているセダンに誰かを乗せるなんて、初めてだった。
──今日は人一倍気をつけて運転しないとな
そう肝に銘じながら、直生と2人で外に出て行った。
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