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ついに知られた秘密

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今日は大学の講義が午前中で終わったため、甲貴はいつもより早く帰ってきていた。

マンションまでの帰り道をぶらぶら歩いていると、向こうから見覚えのある人影が近づいてくる。
今日は黒いコートではなく、ダークブラウンのジャケットだが、スキニージーンズに包まれた脚の形、白い立体マスク、何よりその華奢な体つきは、間違いなく隣人の男が可愛がっているあの子だとわかった。

同時に、きのうの母親とのやりとりを思い出した。
「お隣さんの親戚の子、国彦くんっていうんだって。」
「ふうん。」
「で、アンタ、その国彦くんに何したワケ?あの眼鏡の人から苦情来たんだけど!!」
母親が目尻を吊り上げて、甲貴に文句を言ってきた。
「どんな?」
「お宅の子がうちの子にちょっかいかけてきました、やめてくださいって怒られたわよ!!」
母が声を荒らげる。
「アンタねえ、気になった子にせまるのはいいけど、距離感とか気づかいってもんを覚えなさいよ!ホント小学生のときから何も変わらないんだから!!」

母の言うことはもっともなだけに、甲貴は何も言い返せなかった。
実際、小学生の頃、好きだった女の子にちょっかいを出し過ぎて、その子の親に「うちの子に近づくな」と怒られたことがある。

母親にこうまで怒られて、さすがに自分の行いを反省してはいたが、わずかな不満が甲貴の中でくすぶっていた。

──あのオッサン、自分はあんなのが可愛く感じるぐらい、とんでもないことしてるくせに。あの子も、どうしてあんな男とヤリたがるんだろう……

隣人の男に対する嫉妬や苛立ち、嫌悪感が膨れ上がってきて、甲貴は結局、きのうと同じことをした。
国彦は相変わらずそっけない態度だったが、相手の中に自分を印象に残すことができただけでも、甲貴は満足だった。

去っていく国彦の背中を見送ってから、甲貴はマンションから1番近いコンビニに向かった。
このコンビニで限定販売されている唐揚げ串とチョコレートドーナツは、甲貴のお気に入りなのだ。
家に帰ってそれを食べ終わったら、課題を済ませてしまおう、という心積もりでいた。
そして、夜になったらクローゼットのドアを開けて壁に耳をつけ、隣家の睦み合う声を盗み聞きながら、自慰に耽るつもりでいた。

コンビニに入る前に、何気なくガラスのドアへ視線を移すと、行方不明者の情報提供を募るビラが貼られていた。
それを見た甲貴は、あることに気づいた。

──この写真の子…あの子じゃないか!「国彦」って名前も同じだ!

ビラに印刷された写真に写っている少年は作業着を着ていて、髪型もまるで違っているが、マスクを取った隣人の子の顔と、写真の少年の顔はよく似ている気がする。
コンビニで悠長に買い物している場合ではない。
課題だって今は後回しだ。


甲貴が勘繰ったとおり、やはり隣人の男とあの子は親戚なんかではなかったのだ。
同時に、行方不明になった少年が、知らない中年男と仲睦まじく暮らしている事実に対して、さまざまな解釈を巡らせた。

──家出か?あんなイヤミっぽい中年男と暮らすために、あの子は出て行ったのか?

甲貴はスマートフォンを取り出すと、ビラに記載されているB市警察署の電話番号を確認し、電話をかけた。
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